太陽系 木星

木星ってどんな星?特徴や大赤斑、探査機、ガリレオ衛星まで紹介!

2016年12月31日

(※1.木星)

木星は、太陽から5番目の軌道を回る惑星で、太陽系でもっとも大きな惑星です。その大きさは地球の11倍もあります。木星はその巨大な引力と磁気圏により、周辺の星々に大きな影響を与えている一方、土星と合わせてその強大な引力が、太陽系全体を安定させているとも言われています。また最近、木星を回る衛星に生命の存在があるかもしれないと、関心が高まってきました。さて、いったい木星とはどんな星なのでしょうか。

 

木星の特徴

(※2.地球と木星の大きさ比較)

木星は巨大なガス惑星で、主な成分は水素とヘリウムです。中心部は超高圧に圧縮されていますが、太陽のような水素の核融合反応は起きていません。木星の大気には、水素とヘリウムのほかに、メタンとアンモニア、硫化水素が含まれています。温泉に行くと卵が腐ったようなにおいがすることがありますが、木星の大気はその匂いで満ちていると思われます。木星は主に気体のかたまりで、固い地面はありません。大気の中を下降していくと、どこまでも落ちていき、気圧と気温がどんどん高まってきます。やがて、水素は数百万気圧に圧縮されて液状になり、もっと中心部に向かうと、水素が金属のような性質を持つようになります。高熱で対流する金属水素によって、木星の中心部は地球の2万倍という、強烈な磁場を発生し、土星の軌道まで伸びる広大な磁気圏を作っています。そして木星の両極に巨大なオーロラを発生させ、木星をまわる衛星の環境にも大きな影響を与えているのです。

 

木星はどうやってできたか

(※3.木星内部構造のイラスト)

46億年前に、宇宙空間に漂っていたガスや塵が互いに引き付けあって、巨大なガスの渦巻きができ始めました。やがて、渦の中に小さなかたまりができます。かたまりは互いにぶつかりあってさらに大きいかたまりに成長していき、太陽から4番目までは、比較的重い岩石が集まった、原始の惑星ができました。その外側には、軽いガスが集まって巨大なかたまりとなり、木星や土星に成長していきましたが、火星と木星の間には小惑星帯という、岩石をばらまいたような帯がひろがって、軌道を取り囲んでいます。これは、もともと火星の外側に5番目の岩石型の惑星があったのですが、木星の巨大な重力で、粉々に破壊されたものといわれているのです。最近の探査で木星の大気には、アルゴンやネオンと呼ばれる希ガス成分があることがわかりました。希ガスは熱で拡散しやすく、現在の木星の位置では太陽に近すぎて、観測された濃度に圧縮されることはありえないとされています。このため、木星はいまよりもっと遠い太陽系の外で作られて、現在の位置まで移動してきたのかもしれないという説も生まれています。

 

木星の自転と公転

(※4.木星と地球、太陽の軌道)

木星は、太陽から8万キロはなれたところを11.86年で1周しています。また自転周期は大変に速く、9時間55分で1回転します。直径は14万kmもあり、仮に太陽を1メートルの球とすると、木星は約560m離れたところにある10cmのボールということになります。速い自転速度のためその遠心力で、木星は赤道付近が外側に膨らんだ、ややつぶれた球形をしています。自転軸の傾きは小さく、3.13度であるため、季節的な変化はほとんどありません。

 

木星のデータ

データ項目 木星
太陽からの平均距離 7億7,830万km
大きさ(赤道半径) 71,492km(極半径:66,855km)
質量(地球に対して) 317.83倍
平均密度 1.33 g/㎤
公転周期 11.8622年
自転周期 0.414日(9時間55分)
衛星の数 63個
赤道傾斜角 3.13度
表面重力 24.79 m/s2(地球の約2.5倍)
気圧と温度 木星表面:1.5 気圧, -163℃
金属水素表面: 200万気圧, 9800℃
核の表面: 3600万気圧, 19800℃
中心核: 4500万気圧, 35800℃
大気の組成 水素81%以上
ヘリウム17%以上
メタン: 0.1%
水蒸気: 0.1%
アンモニア: 0.02%
エタン: 0.0002%
ホスフィン: 0.0001%
硫化水素: 0.0001%以下

 

木星の磁気圏とオーロラ

(※5.ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した木星のオーロラ)

木星の核では、超高圧のため水素が液状になって対流し、強大な磁場を発生しています。それは、地球の2万倍のパワーがあります。木星の磁場は広大で、太陽系を横切って土星の軌道まで達しています。もし磁場というものを地球から肉眼で見ることができたなら、木星の周りに月より大きな円盤がみえるでしょう。地球のオーロラは、太陽から放出される高温のプラズマである太陽風が、磁場と反応してできますが、木星のオーロラはそれとは別の理由で作られます。それは、木星に最も近い衛星「イオ」の火山活動と関係があります。衛星「イオ」は太陽系でもっとも火山活動が活発な星で、現在でも大量の硫黄を吐き出しています。この硫黄の粒子が木星の磁場にとらえられて、木星の極に集められ、木星大気に衝突してオーロラができると考えられています。

(※6.ガリレオ衛星(イオ・エウロパ・ガニメデ)の磁場による木星のオーロラ)

また、エウロパやガニメデから発せられた磁場も、木星の極に小さなオーロラを作っています。

 

縞模様と大赤斑(たいせきはん)

(※7.ボイジャー1号が撮影した木星の大赤斑)

木星の表面には、赤っぽく暗い帯と白く明るい帯が、赤道方向に縞模様を作っています。これは、木星の速い自転速度が関係しています。木星の赤道付近では、秒速約100mの西向きのジェット気流が吹いていますが、緯度が高くなるにつれて、西向きの気流と東向きの気流が互い違いに流れています。色の違いは雲の最上部に現れる物質によって異なり、アンモニアや硫化水素などが考えられますが、詳しいことはまだわかっていません。大赤斑(だいせきはん)は、木星の南半球にある目玉のような赤い渦巻きで、地球からの望遠鏡の観測でも見ることができます。発見は古く、1665年にカッシーニが望遠鏡で観測しています。これは木星の上空で、時速400kmの速度で渦巻く、高気圧性の嵐といわれており、大きさは地球3個分もあります。発見から少なくとも350年は、形を保ち続けているとみられますが、最近になって少しずつ縮小していく傾向にあることが確認されています。この渦を発生させる巨大なエネルギーがどうやって作られるのかなど、詳しいことは分かっていません。

 

木星の衛星

(※8.イタリアの物理学者 ガリレオ・ガリレイ)

木星は63個の衛星を持っており太陽系で最大の数です。そのうち、1610年にガリレオ・ガリレイが発見した4つの衛星は、特に大きく「ガリレオ衛星」と呼ばれています。ガリレオ衛星が木星をまわる公転周期は、イオを1とすると、エウロパが2、ガニメデが4という比率になります。これは偶然ではなく、互いの引力が影響を及ぼしあって、周期が整数比になる「軌道共鳴(きどうきょうめい)」という現象です。これによって、ガリレオ衛星は木星からだけでなく、お互いの衛星からも強い潮汐力(ちょうせきりょく:引力によって引き付けられたり、圧迫されたりする力)を受けています。4つのガリレオ衛星は、それぞれ非常に特徴があり、探査機による積極的な観測が進められています。

 

名 前 直 径 質 量 平均軌道半径 公転周期
イオ 3,632 km 8.92×1022 kg 421,600 km 1.76 日
エウロパ 3,138 km 4.8×1022 kg 670,900 km 3.55 日
ガニメデ 5,262 km 1.49×1023 kg 1,070,000 km 7.16 日
カリスト 4,820 km 1.08×1023 kg 1,883,000 km 16.69 日

表-1:ガリレオ衛星のデータ(出典:Wikipedia)

 

(1)イオ

(※9.イオ「ガリレオ探査機撮影」)

イオは木星にいちばん近いところを回る衛星で、大きさは月より少し大きいくらいです。太陽系でもっとも火山活動が活発な星で、火山が400か所以上あり、大きい火山は直径が200kmもあります。

 

(※10.イオの火山活動)

あちこちで二酸化硫黄が間欠泉のように吹き出し、噴出物はマイナス200度の気温でたちまち結晶となって、高さ100km以上の高さに巻き上げられ、地上に降り注ぎます。隕石の衝突でできたクレーターも噴出物ですぐに埋まって見えなくなってしまいます。

 

(※11.イオの地形図)

探査機が撮影したイオの写真を見ると、黄色や緑の色合いでまるでピザのようですが、これは降り積もった硫黄の化合物によるものです。太陽から8億キロもはなれたこの星がなぜ冷えず、このような活発な火山活動が行われているのでしょうか。それには、木星系の強大な潮汐力が関係しています。

 

(※12.イオ、エウロパ、ガニメデの軌道共鳴)

イオは木星の周りを回る間に、木星の引力を受けて、引っ張られたり圧迫されたりして、柔らかいキャラメルのように形がゆがみます。それは月の引力の影響を受けて、地球に潮の満ち引きが起きるのと同じ原理です。イオが木星に最も接近するときと離れるときでは、イオ地表の標高が90m以上も上下するのです。それによってイオの内部で摩擦が起き、熱エネルギーが発生します。それによって地殻の下では溶解した岩石が、マグマの海を作っていると考えられます。

 

(※13.イオの内部構造鳴)

また、イオの火山からの噴出物は、木星の磁力線にとらえられ、強力な放射線となってイオの地表に降り注いでいます。イオに有人探査機を送り込むことは大変に危険です。現在の宇宙服でイオの地表に出れば、5分で致死量の放射線を浴びてしまうでしょう。

 

 

(2)エウロパ

(※14.エウロパ(ガリレオ探査機撮影)

エウロパの表面は全体が氷に覆われているため、白く光ってとても明るく見えます。そして、擦り傷のような赤い線が無数に走っているのが見えます。これは、厚さ3kmにもなるエウロパ表面の氷にできた亀裂で、木星と他の2つの衛星から受ける強い潮汐力で、引っ張られたり、圧迫されたりして、表面の氷がひび割れた痕なのです。

 

(※15.エウロパの内部構造の想像図)

エウロパの磁場を調査した結果から、氷の下にエウロパ全体をおおう広大な海があることがわかりました。この海は地球と同じ液体の水ですが、深さが160kmもあって、太陽系最大の海洋かもしれません。地球の海が最も深いところでも約10kmなので、とてつもなく深い海です。

 

(※16.エウロパの氷地殻内部の想像図)

エウロパ表面の赤い傷は、氷の亀裂から塩分を含んだ海水が浸みだして、強い紫外線で化学変化したものと思われます。エウロパの表面の気温はマイナス90度です。なぜ、氷の下の海は凍結しないのでしょうか。それはイオと同じように、木星と他の衛星からの強い潮汐力を受けて、エウロパの形がゆがめられていることによります。引き伸ばされたり圧迫されたりするときの摩擦力で、エウロパの内部にある岩石質の核は、熱く溶解しているものと考えられます。その熱の影響でエウロパの海は、シャーベット状か液体の状態になっているのです。

 

(※17.ジャイアントチューブワームなどの多細胞生物が、地球深海の熱水噴出孔の付近で発見された)

深海には、地球にもあるような、熱水噴出孔(ねっすいふんしゅつこう)もあると思われます。深海の熱水噴出孔は、地球では「生命のゆりかご」とされています。太陽の光が届かないエウロパの深海でも、生命が生まれる可能性があるのです。地球外生命の存在を調査する目的で、2020年以降にエウロパの海に探査機を送る計画が、各国で進められています。

 

 

(3)ガニメデ

(※17.ガニメデ(ガリレオ探査機撮影)

ガニメデは、ガリレオ衛星の中で木星から3番目の衛星です。太陽系にある衛星の中では最大のサイズで、惑星である水星よりも大きく、地球からも明るく光って見えます。

 

 

(※18.ガニメデの内部構造の想像図)

ガリレオ探査機による調査の結果、ガニメデの内部には、地球のような溶けた金属質の核があることがわかりました。そのため、ガニメデには磁場が存在します。木星の衛星を人類が訪れるなら、ガニメデが安全です。磁場のおかげで、有害な太陽風や放射線が遮られているからです。さらにハッブル宇宙望遠鏡によるガニメデのオーロラ観測の結果、本来の磁場に加えて、二次的な別の磁場があることがわかりました。この磁場は変動していて、内部に液体の水、海があることを意味しています。おそらく、ガニメデの岩でおおわれた地殻の下に、深さ100kmの海があると推測されます。また、酸素原子を持つ大気の存在も確認されていて、エウロパに次いで、生命の存在が期待される星となっています。

 

 

(4)カリスト

(※19.カリスト(ガリレオ探査機撮影)

カリストは、ガリレオ衛星の中では木星から4番目のところにある衛星です。表面を氷でおおわれていますが、他のガリレオ衛星とは異なり暗く、表面には月のようなクレーターがたくさんあります。探査機「ガリレオ」の観測では、カリストの表面温度はマイナス170度と冷えていましたが、非常に弱い磁場が確認されました。

 

(※20.カリストの内部構造の想像)

磁場があるということは、内部に冷えて固まっていない核があることを意味しています。しかし、ガリレオに搭載されたほかの観測機器は、カリストは地表から岩と氷と金属の混ざったものが地下深くまで続いていて、地殻、マントル、核といった分離した構造がなく、溶融した金属の核が存在しないことを示していました。流動する金属の核がない星が磁場を発生させる理由としては、海水の存在が考えられます。内部に高温の核がない星で、どのように水が凍結せずに液体を保っているのかわかりませんが、現在のところカリストの地下には、深さ10kmの海があると考えられています。

 

 

ガリレオ・ガリレイの観測

(※21.木星の衛星の初の発見を記した1610年の草稿)

イタリアの物理学者「ガリレオ・ガリレイ」は、1610年1月7日、オランダ人が発明したものを改良した30倍の望遠鏡を使って、木星を視野にとらえました。そして、木星の両側に小さくて明るい3つの星を見つけました。その時の観測記録では、木星の東側に星が2つ、西に1つ並んでいたとあります。ところが、翌日も木星に望遠鏡を向けると、3つの星の配列は変わっていて、すべて木星の西側に移動していたのです。以前から、地球が太陽の周りをまわっているという「地動説」を信じていたガリレオは、これら3つの星は、木星の周りを回っている星であると確信しました。(のちに4つ目の衛星を確認しています)

 

(※22.地動説の図)

ガリレオは地動説の正しさを説く本を書きましたが、そのせいでローマ教会から宗教裁判にかけられてしまいます。「地球と天体のすべては、神が人間のためにつくったもの」というキリストの教えに反することは、決して許されなかったのです。

 

木星探査機

地球の外側を回る惑星への探査機は、木星をフライバイすることによって加速することが多いため、木星は訪れる探査機が多い惑星です。しかし、木星は遠く、到達するためには多くの燃料と時間を必要とします。また、木星の強い磁気に導かれた放射線にも長い期間耐えなければならず、厳しい航海が求められます。これまでの木星探査は、すべてアメリカ航空宇宙局によって行われてきましたが、現在は、日本やヨーロッパ、ロシアの探査機が計画されており、2020年台には、多くの探査機が生命の存在を求めて、木星とその衛星たちを訪れるでしょう。

 

(1)パイオニア10号/11号

(※23.パイオニア10 号(想像図)

パイオニア10号は、初めて木星探査を行ったアメリカの探査機です。1973年12月4日に木星から20万キロまで接近し、木星の強大な磁気圏と放射線帯を観測しました。

 

(※24.土星の環を探査するパイオニア11号(想像図)

続くパイオニア11号は、1年後の1974年12月4日に、木星から3万4千キロまで最接近し、木星の重力によるフライバイ加速を行って、土星に向かいました。パイオニア11号から得られたデータは、その後のボイジャー計画に生かされることになります。

 

(2)ボイジャー1号/2号

(※25.ボイジャー1号)

ボイジャー1号は、1977年9月5日に、2号はそれに先立って、1977年8月20日に打ち上げられました。この時期は、木製、土星、天王星、海王星、冥王星が同じ方向に並び、スイングバイ航法を用いることによって、冥王星まで達することができる絶好の機会だったのです。スイングバイ航法を使わない場合、探査機は木星までしかいくことができず、次に外惑星が並ぶのは175年後という、まさに「絶好の」ポイントだったわけです。

 

(※26.ボイジャー1号が撮影した木星の大気)

ボイジャー1号は、1979年3月5日に木星から34万9000kmまで接近し、木星と衛星の写真撮影を行ったほか、磁場や放射線の状態を観測しました。2号も、木星と衛星の詳細な写真を撮影しましたが、最大の発見は、イオの活発な火山活動でした。木星を通過したボイジャー1号は、次に土星の衛星「タイタン」を観測した後、太陽系外に向かう軌道に乗りました。2号はさらに天王星と海王星の観測を行うための軌道に移りました。ボイジャーに搭載された原子力電池はまだ使用可能で、現在1号が太陽から約140億km、2号が約110億kmのところを飛行中です。そこは、太陽風が恒星間ガスにぶつかって急速に減速しており、「太陽系圏の果て」といわれるところです。いよいよ太陽家の玄関を出ようとしているわけです。

 

(※27.ボイジャーのゴールデンレコードのジャケット)

ボイジャーには「ゴールドディスク」が積まれています。これは、人類や地球の写真、言語、音声などを記録したもので、太陽系外の知的生命体に、我々地球人の存在を示すことを目的としています。もしかしたら遠い将来、ボイジャーのゴールドディスクを見た宇宙人が、地球を訪れるかもしれません。

 

(3)ガリレオ

(※28.ガリレオ 探査機)

1989年10月18日、ガリレオはスペースシャトル「アトランティス」に搭載されて打ち上げられました。アトランティスは、荷物室からガリレオを乗せた軌道ロケットを放出、ガリレオはいったん金星に向かいました。金星でスイングバイにより加速、さらに地球でも2回のスイングバイを行い、木星を目指しました。メインのアンテナが予定通り開かないトラブルがあり、地球との交信は低速モードのみになりましたが、遠隔操作でプログラムを変更し、データを圧縮して送信させるようにしました。

 

(※29.木星を目指すガリレオ探査機)

6年という長い時間をかけ1995年12月7日、ガリレオは木星の周回軌道に到着、プローブ(木星突入カプセル)を放出しました。プローブは減速用パラシュートを開いて、木星の大気圏を降下しながら、大気のデータを地球に送りはじめます。予想に反して、アルゴン、クリプトン、炭素、窒素といった重い元素が大気から多く検出されたため、科学者たちは驚きました。太陽と同じ水素とヘリウムが主な組成だと、予想していたのです。もしかしたら、彗星や小惑星が木星に衝突したことによって、これらの元素が運ばれてきたのかもしれません。また、木星は太陽系の外でつくられ、ここまで移動してきたのかもしれないという説も生まれました。プローブは、木星の大気圏の中を降下し続け、突入から58分後、高い気圧と熱で燃え尽きました。プローブを切り離した後も、ガリレオは木星の周回軌道を7年間回り続け、木星とその衛星の観測を行いました。2003年9月21日、燃料が尽きたガリレオは、地球からの操作で木星の大気圏に突入し、燃え尽きました。エウロパに生命が存在する可能性が高まっていて、姿勢制御ができなくなったガリレオがエウロパに衝突した場合、ガリレオに付着していた地球の微生物が、エウロパの環境を汚染してしまう恐れがあったのです。

 

(4)ジュノー

(※30.ジュノーの打ち上げ)

2011年8月9日に打ち上げられました。地球でスイングバイの後、5年間の航行を経て、2016年7月5日に木星の軌道に投入されました。ジュノーの目的は、木星の内部の構造や、核はあるのか、大気の組成はどうなっているのかについて調査することです。可視光カメラ、紫外線カメラ、マイクロ波放射計、赤外線カメラなど全部で9種類の観測機器にスイッチが入りました。これらの観測機器は、木星にたどり着くまでの間、強い放射線の影響から守るために、電源が切られ眠っていたのです。

 

(※31.ジュノーの飛行経路)

これまで木星には8機の探査機が送り込まれてきました。ジュノーはそれらと明らかに違う点があります。それは軌道です。突入したものを除いて、これまでの探査機でもっとも木星に接近した距離は、4万3000kmでした。ジュノーが接近する距離は、4100kmという近さです。また、ジュノーは木星の北極と南極を通る縦の軌道に投入されました。1年をかけて、角度を少しずつ変えながら木星を30周以上まわり、木星表面の全体を観測します。2016年10月19日、アメリカは、ジュノーが木星のオーロラを至近距離で撮影することに成功したと、発表しました。北極にできた地球3個分もある巨大なオーロラには、木星の自転だけでは説明がつかないオーロラもできていました。巨大なオーロラとは別に、小さなオーロラがいくつもできていたのです。それは木星と3つの衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ)を結ぶ磁力線を伝って、衛星から放出された火山の粒子が、木星の極に流れ込んでできたものと考えられています。

 

(※32.木星に到着したジュノーの想像図)

また南極付近では、木星のほかの場所ではあまり見かけない、小型の嵐がたくさん集まっていました。ここからどんなことがわかるのでしょうか。これからジュノーは、木星がどのような材料で、どのようにできたかを探っていきます。太陽系の起源を解明する手がかりを得ることに、期待が持たれています。

 

 

計画中の探査機

 

これまでの観測結果により、エウロパとガニメデの海に生命が存在する可能性が高まっており、アメリカとヨーロッパ、ロシアはそれぞれ、これらの衛星に探査機を送る計画を進めています。もしエウロパやガニメデの海に生命が確認できれば、「条件がそろえば宇宙のどこでも、生命が存在する可能性がある」ことになります。別の星に生命がいてもおかしくない、ということは人類にとって最大の発見になるでしょう。

 

(1)ロシアのガニメデ探査

 

ロシアは欧州宇宙機関(ESA)と共同で、木星の衛星ガニメデに探査機を送ることを計画しています。当初は生命存在の可能性が高いエウロパを目指していましたが、エウロパの強い放射線環境でも故障しない、電子部品の開発がむつかしく、エウロパよりは放射線の弱いガニメデに、目的地を変更することになりました。打ち上げは2022年で、2033年にガニメデに到着する予定となっています。

 

(2)アメリカのエウロパ掘削研究

 

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、エウロパの海に潜って生命を探索するための、技術を開発しています。氷を溶かしながら穴をあけて進むことができる、掘削ロボットの試験機を開発中です。ノルウエーの凍った湖でテストを行い、23m下に潜ることに成功しました。掘削ロボットはみずから考えて行動し、水の層にたどり着くと、潜水ロボットを水中に放出します。潜水ロボットは、生命体をさがして海中を進み、地球に動画を送信することができます。エウロパの強い放射線に耐えるカメラの開発も進行中で、潜水ロボットの試作機「エンデュランス」は、エウロパの海と似ていると言われる、南極のボニー湖でテストを行っています。

 

(3)日本のソーラーセイル探査機

 

日本でも木星への探査が計画されています。太陽風を帆に受けて航行する宇宙ヨット、ソーラーセイル実証機「イカロス」は、宇宙での航行に世界で初めて成功しました。このソーラーセイルをさらに大きくして、木星探査用ソーラーセイルを開発しようという計画です。木星系に行くのは非常に遠く、大出力のロケットと、スイングバイによる長期間の航行が必要になります。その点、ソーラーセイルは燃料を使わないので、遠くに行くのには非常に有利になるのです。日本の探査機は、2020年台の木星到達を目指しています。

 

シューメーカー・レビー第9彗星の衝突

(※33.ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したシューメーカー・レヴィ第9彗星)

1994年7月16日から22日にかけて、シューメーカー・レビー第9彗星(SL9と呼ばれる)が相次いで木星に衝突しました。これは、地球から見て木星の裏側で起きたため、直接の観測はできませんでしたが、わき上がるキノコ雲が観測されました。また、地球ほどの大きさがある衝突痕(しょうとつこん)は、小口径の望遠鏡でも観測されました。

 

(※34.木星に残った衝突痕)

このような大きな彗星が木星に衝突するのは、稀なことではありません。1690年にカッシーニがSL9の衝突痕と似ている斑点を記録しています。また、2009年にもこれよりは小さいですが、天体の衝突が確認され、2010年には2回、2012年にも天体が衝突したとみられる発光現象が、記録されています。

 

 

木星の重要な役割

 

木星はその強大な引力で、隕石や小惑星が、太陽系の内側に入り込み、地球に衝突することを防ぐという重要な役割を担っています。それは、SL9が木星に衝突したことで十分に立証されています。もし木星が無かったら、地球に衝突していたかもしれません。また、太陽系ができたばかりのころは、木星は多くの小惑星の軌道を乱し、それによって原始の地球は、重爆撃のような隕石の衝突にさらされました。しかしそのおかげで、水を含む様々な物質が地球にもたらされ、生命が発生するもとがつくられたのです。まさに、木星は地球の生命にとって生みの母であり、また頼もしい父でもあるといえるでしょう。

 

※1〜34:写真の引用元はwikipedia/他写真についてはフリー素材(photo ACより)

 

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