太陽系 水星

水星ってどんな星?特徴や環境、神話や探査機まで紹介!

2016年12月19日

(※1.メッセンジャーが撮影をした水星)

太陽系(たいようけい)の中で太陽に一番近いところを回っているのが水星(すいせい)です。水星と聞くと、涼しげな感じがしますが、実際は太陽に近いせいで、日向(ひなた)は鉛(なまり)を溶かすくらいの灼熱地獄(しゃくねつじごく)になっています。さて、いったい水星というのはどんな星なのでしょうか。
 

水星の特徴(とくちょう)

(※2.水星の内部構造。1:核、2:マントル、3:地殻)

水星は太陽を回っている惑星(わくせい)のなかでもっとも小さい星です。その大きさは月よりちょっと大きいくらい。土星(どせい)の衛星(えいせい)にタイタンという星がありますが、それと同じくらいの大きさです。地球とおなじ岩石質(がんせきしつ)の惑星で、中心(ちゅうしん)はドロドロにとけた鉄(てつ)やニッケルなどの金属(きんぞく)が、ゆっくりと対流(たいりゅう)しています。とけた金属が動くことによって電流(でんりゅう)が発生(はっせい)し、地球や水星はそれじたいが、巨大(きょだい)な磁石(じしゃく)のようになっています。

 

(※3.メッセンジャーの2008年の観測グラフ。ピークが水星磁場の存在を示している)

磁石にはN極(きょく)とS極があるのを知っていますね。地球は、北極側(ほっきょくがわ)がN極、南極側(なんきょくがわ)がS極の磁石になっているのです。これによって、磁場(じば)がはっせいします。太陽系のなかで、いまも磁場をもっている惑星は、水星と地球だけなのです。磁場は、太陽から吹きつける高温(こうおん)のプラズマイオンである太陽風(たいようふう)をさえぎる役割(やくわり)があります。地球はこのおかげで、いきものが危険(きけん)な太陽風からまもられています。しかし、水星では太陽からの強烈(きょうれつ)な熱(ねつ)にあぶられて、いくら太陽風がさえぎられても、生き物は生きられそうにありません。

 

水星の環境(かんきょう)

(※4.メッセンジャーが撮影した水星)

水星の自転軸(じてんじく)は、まっすぐに立っていて、傾きがほとんどありません。太陽からの熱はつねに一定(いってい)の角度(かくど)であたり、地球のように四季(しき)の変化がないのです。そのため、水星の極ふきんでは、永久(えいきゅう)に日かげになったままのところがあります。そこでは、気温(きおん)はマイナス180度まで下がっていて、氷(こおり)のようなものが観測(かんそく)されています。いっぽう、常に日があたっているところでは、気温は400度以上にもなります。鉛(なまり)というつりのおもりに使う金属がありますが、それがとけるくらいの温度なのです。また、水星の自転速度(じてんそくど)は大変に遅く、59日もかかって1回転(かいてん)します。大変ゆっくりと回転するので、昼間がながく、その分じっくりと太陽にあぶられ、それも気温がたかい理由(りゆう)のひとつです。水星の公転周期(こうてんしゅうき)は88日です。1年が88日ということになります。地球が365日かかって太陽のまわりを一周(いっしゅう)するので、とても早いスピードで回っていることになりますね。太陽は強力(きょうりょく)な重力(じゅうりょく)をもつ星で、はるかとおくの冥王星(めいおうせい)まで引きつけています。太陽にもっとも近い水星は、太陽に吸い込まれないように、はやい速度(そくど)で廻っているのです。

 

水星に住めるの?

(※5.黄色い部分は氷)

水星の気温は、日かげの最低気温(さいていきおん)がマイナス163度、ひなたの最高気温(さいこうきおん)が427度もあります。凍りつくか、焼け付くかのどちらかです。また、水星のような小さな星は、重力が弱く、大気(たいき)を地表(ちひょう)にとどめておくことができないので、ほとんど真空(しんくう)に近いじょうたいなのです。とても厳しい環境ですが、極ふきんの永久に日があたらないところでは、氷のようなものがあり、それを溶かして水分(すいぶん)は得られそうです。そこで頑丈なシェルターをつくれば、人間が住めるかもしれません。

 

水星に行けるの?

(※6.太陽の周りを回る水星)

水星は地球からそう遠くないところにありますが、行くのは大変です。太陽の強力な重力に引きつけられて、どんどんスピードがあがり、水星をとおりこして、太陽に吸い込まれてしまうのです。強力(きょうりょく)なエンジンで逆噴射(ふんしゃ)をしてスピードを落とさないと、水星の周回軌道(しゅうかいきどう)にのることができないのです。そのためには、とてつもなく沢山の燃料(ねんりょう)をもっていく必要(ひつよう)があります。小さな無人(むじん)の探査機(たんさき)なら、なんとか行けますが、人間を乗せていくのは、現在の技術(ぎじゅつ)では難しそうです。

 

水星のデータ

水 星 地 球
太陽からの距離(きょり) 5791万キロメートル 1億4960万キロメートル
直径(ちょっけい) 4880キロメートル 1万2742キロメートル
1年のながさ 88日 365日
1日の時間(じかん) 58日15時間30分 23時間56分
重力(じゅうりょく) 3.7m/s² 地球の約38% 9.8m/s²
へいきん気温 179度 15度
さいてい気温 マイナス183度 マイナス71度
最高気温 427度 59度
大気(たいき)の成分(せいぶん) 酸素(さんそ):42% 窒素(ちっそ):78%
ナトリウム:29% 酸素(さんそ):21%
水素(すいそ):22% 二酸化炭素(にさんかたんそ):

0.035%

ヘリウム:6% アルゴン:0.9%
カリウム:0.5%

 

水星の観測方法(かんそくほうほう)

 

水星は太陽にちかいので、地球から観測するためには、夕暮れ直後(ちょくご)の西の空か、日の出まえの東の空をみます。空がうすあかるいときの観測になるので、もともと小さい水星を見つけるのはちょっと大変です。地平線(ちへいせん)近くの低いところにあるので、障害物(しょうがいぶつ)のないひらけたところで探してみましょう。水星が太陽からはなれているときが観測しやすいので、インターネットや天文雑誌(てんもんざっし)で、観測に適した時期を調べるのがよいでしょう。

 

水星にまつわる神話

(※7.俊足の神メルクリウス。英語Mercuryの語源となった)

水星は英語(えいご)でマーキュリーといいます。ギリシア語ではメルクリウスで、商売(しょうばい)と、泥棒の神様(かみさま)、また旅人(たびびと)のまもり神でもあります。水星は今から5000年前ごろには、人々にその存在を知られてしまいました。明け方と夕暮れのほんの短い時間に、ちょこまかと現れては消える様子が、すばしっこい商人(しょうにん)や、ずる賢い泥棒に例えられたのでしょう。

 

水星探査機(すいせいたんさき)について

 

マリナー10号

(※8.マリナー10号)

1973年にアメリカは、初めての水星探査機、マリナ―10号を打ち上げました。マリナ―10号はまず金星(きんせい)にむかいました。金星の写真(しゃしん)をとる目的(もくてき)もありましたが、金星の重力をりようして、スピードを落とすことが必要(ひつよう)だったのです。これをスイングバイ方式(ほうしき)と呼びます。スイングバイは、ほかの星の重力をりようして、探査機のスピードを加速(かそく)したり、減速(げんそく)したりする方法で、さいきん話題(わだい)になった「はやぶさ」は、この方法でスピードを加速しています。マリナ―10号は、金星のそばをとおって減速したあと、太陽のまわりを回りながら、ゆっくりと水星に向かいました。太陽の高熱(こうねつ)にさらされて、機器(きき)の故障(こしょう)がありながらも、写真撮影に成功(せいこう)し、月にあるようなクレーターがいくつもあいた写真を送ってきました。また、はじめて水星表面(ひょうめん)の温度測定(おんどそくてい)も行いました。水星に磁場があるのを発見したのも、マリナ―10号です。マリナ―10号は燃料がなくなった今でも、太陽のまわりを回りつづけています。

 

メッセンジャー

(※9.デルタIIロケットによるメッセンジャーの打ち上げ)

それから30年間は、人々の関心(かんしん)は、火星(かせい)や土星(どせい)などの他の惑星にむけられ、水星の調査(ちょうさ)はもっとも遅れていました。しかし、2004年になってアメリカは、次の水星探査機メッセンジャーを打ち上げました。メッセンジャーは、水星の周回軌道に投入(とうにゅう)されたはじめての探査機です。30年前のマリナ―10号は、太陽のまわりを回りながら、水星の近くをかすめるときに観測を行うものでした。そのため、観測できる範囲が限定(げんてい)されましたが、メッセンジャーは水星のまわりをぐるぐると回るので、時間をかけて詳しい調査(ちょうさ)ができるようになりました。とはいえ、水星の周回軌道にはいるのはかなり大変です。そのまま行ったのでは、太陽の強力な重力井戸(じゅうりょくいど)に吸込まれてしまいます。メッセンジャーは、その問題を解決するため、水星に辿りつくまでに、マリナー10号で使ったスイングバイ方式を、6回もおこなったのです。

 

(※10.水星周回軌道に乗ったメッセンジャーの想像図)

地球を出たメッセンジャーは、地球で1回、金星で2回、水星で3回のスイングバイをおこないます。その軌道(きどう)は非常に複雑で、なんと6年も飛び続けて、水星の周回軌道にはいるのです。コンピュータ技術(ぎじゅつ)の発達によって、マリナ―10号の時には出来なかった難しい軌道計算(きどうけいさん)が可能になったから、実現できたのです。2011年にメッセンジャーは、無事(ぶじ)水星をまわる軌道にはいり、詳細な観測をはじめました。その結果、水星の地殻(ちかく)は非常に薄く、内部のほとんどは、鉄やニッケルなどの金属がとけた大きな核(かく)であることがわかりました。水星の磁場は、それがゆっくりと対流(たいりゅう)することによりはっせいし、地球の磁場の1/100くらいであることもつきとめられました。また、水星の両極(りょうきょく)にあるクレーターの中に、永久に日があたらないところがあり、そこに大量(たいりょう)の水が、氷となって蓄えられていることも分かりました。灼熱(しゃくねつ)の星に氷があったなんて、驚きですね。

 

(※11.水星のカロリス盆地)

たくさんのクレーターが写真におさめられ、有名な芸術家(げいじゅつか)の名前がつけられたのも、水星の特徴です。アクタガワ(あくたがわ りゅうのすけ)や、バショー (まつお ばしょう)と日本人の名前がつけられたものがたくさんあります。ヒロシゲとかソーセキというのもあるのですよ、おもしろいですね。メッセンジャーは、2015年まで観測をつづけ、最後は地球から信号(しんごう)を送って、水星に衝突させてその役割を終えました。

 

日本の探査機 ベピ・コロンボ

現在も計画(けいかく)されている水星探索機があります。日本とヨーロッパが共同でおこなっている、ベピ・コロンボという計画です。当初は水星に着陸(ちゃくりく)させる計画でしたが、残念ながら費用(ひよう)がかかりすぎる、という理由でそれは取り辞めになり、水星の周回軌道から、さまざまな観測を行うことになっています。日本の探査機が水星に向かうのは2018年ごろです。今から楽しみですね。

 

※1〜11:写真の引用元はwikipedia/他写真についてはフリー素材(photo ACより)

 

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