先日のことですが、大阪科学館に行ってきました。筆者がそこを訪れるのは2度目になりますが、毎回そこで過ごす大半の時間を宇宙コーナーで過ごしています。中でもお気に入りのブースは、“宇宙線を観測できる装置”付近です。霧箱とも呼ばれるのですが、目視で観察できるα線やβ線をひたすら眺めながら宇宙について考える時間が大好きです。(側から見たら変な人かもしれませんが…)もともと筆者は、宇宙に関することを調べることが好きなのですが、科学者でもなく有識者でもありません。言ってみればただの素人です。その素人の立場から、宇宙について興味のある記事を気づいては調べることを繰り返してきたのですが…。今回科学館で宇宙線を眺めていた時に、こう思ったのです。「一度原点にかえっておさらいをしてみたい」と。「原点ってなんだろう?それは宇宙のはじまりではないか!」ということで、今回は“宇宙のはじまり”をテーマに書きたいと思います。
この記事の目次
宇宙のはじまりは“ビッグバン”
「宇宙の始まりはビッグバンであって、それは今から約138億年前の話です。」ビッグバン、つまり、想像を超えるような大爆発が起こったことによって宇宙が誕生した、というビッグバン理論は、多くの科学者たちに指示されている宇宙のはじまりとされています。素人である著者からすると、このように言われると教科書的な内容なので「アァそうですか…」と納得しなければならない気分には一旦なるのですが、やはり腑に落ちない。ですので、ここではこれをもっと突き詰めてみたいと思います。宇宙のはじまり“ビッグバン”って、一体何なのでしょうか。
“ビッグバン”を知る前に“ハッブルの法則”を知っておきたい
早急にビッグバンとは何なのかを導き出す前に、この人の紹介をしておかなければなりません。エドウィン・ハッブル(1889−1953)です。アメリカ人の天文学者である彼は、ハッブル宇宙望遠鏡でもおなじみの名前なので聞いたことがある方は多いと思います。このお方なしでは現在の宇宙学は語れないほど、天文学や宇宙理論に功績を残した偉大な人物です。1929年、彼はある変光星(その明るさが変化する星)を観察している時に、“地球から遠く離れた銀河ほど、速い速度で地球から遠ざかっている”ということを発見しました。これは“ハッブルの法則”と呼ばれています。
ちょっとその法則わかりにくいな、という方に、具体的な例を示しましょう。例えば風船を思い浮かべてください。風船をちょっと膨らませた状態で、いくつかの印をペンで書きます。そしてその風船をさらに膨らませるとどうなるでしょうか?点Aと点Bの距離は広がります。点Aと点Aから最も離れている点Cとの距離は、さらに遠くに離れます。(わからない方は実際にやってみてくださいね)この風船を宇宙だと考えてください。遠くの星がより速く遠くに遠ざかっているということは、宇宙が風船のように膨張しているからこそ、言えることになるのです。
宇宙が膨張…ということはその始まりは…
前章で、宇宙が膨張していると書きました。ということは、過去に遡れば銀河同士はもっと近くにあった、ということも言えます。(風船で例えると、膨らんだ風船から空気を抜けば縮小していきますよね?それとともに印の点と点の距離も近づいていくはずです)そしてさらに過去に遡ると…星や銀河同士はお互いにもっともっと近づいて…最初の宇宙の始まりにたどり着く、というわけなのです。それはつまり、ただ一点から始まった、さらに前になると何もなかったと考えられるのです。ハッブルの地道な星の観測によって宇宙の膨張を発見することができ、それが、今のビックバン理論への繋がっていったのです。
ビッグバン理論とは
宇宙が膨張していることがわかりました。そのことがビッグバン理論を導き出しました。ビッグバン理論は、つまりこういうことです。ビッグバンと呼ばれる大爆発が起きたのは今から138億年前のことです。ハッブルの法則を元に、宇宙は無の状態から始まったと考えられました。そして密度も温度も無限に高い点として突然発生(大爆発)しました。ビッグバン直後には、宇宙全体が太陽の中心部よりもはるかに高温になっていました。原子はまだなく、ものすごい高温の中で原子の元になる陽子や中性子、電子がめちゃくちゃに飛び交っていたプラズマ状態だったのです。ビッグバンから40万年経った頃、次第に宇宙の温度が下がるにつれ、原子核が電子を捉え、水素をはじめとする様々な原子が誕生しました。そして星の元になるガスが生まれ、恒星ができ、銀河ができ、やがて現在の宇宙の姿が形作られていったのです。結論が早すぎたかもしれませんが、ビッグバンについて今、これだけのことが言えるには、それを証明するための証拠がデータとして存在するからなのです。
宇宙の晴れ上がりとそのデータ
ビッグバンについては、データでその証拠が見つかっています。前項で書いたように、ビッグバン直後は宇宙全体がプラズマ状態だったため、光などの電磁波は飛び交う電子などに阻まれ、遠くに飛ぶことができませんでした。イメージからすると、宇宙はその時曇った状態だったともいえるでしょう。ところが、宇宙誕生から40万年ほど経った頃、宇宙の温度が下がり始め、原子が誕生する頃になると、それまで電磁波の行く手を遮っていた電子がなくなり、電磁波が遠くに届くようになりました。晴れのイメージです。これがビッグバン理論を元に考えられた“宇宙の晴れ上がり”なのです。そして、それが本当に実際にあったのだという証拠が残されています。WMAP探査機という衛星による観測で、今でも当時の“宇宙の晴れ上がり”の現象を電磁波で観測することができるのです。
宇宙背景放射(宇宙マイクロ波背景放射)とは
WMAP探査機で観測された電磁波は、“宇宙背景放射”と呼ばれています。これは、地球から観測できる、最も遠くの電波のデータでもあります。“宇宙の晴れ上がり”によって初めて電磁波が遠くに発せられました。その名残がなんと今でもデータとして観測できるのです。これがビッグバン理論を証明しうるデータとなり、ビッグバン理論は多くの科学者に支持されることになりました。つまり、私たち人類は今のところ、この光より以前の(つまりビッグバン直後から40万年経つまでの)光のデータを捉えることは不可能だ、ということも同時に言えることになります。このことにより、理論上、ビッグバンが宇宙のはじまりだった、ということが裏づけられるのです。言い変えれば、ビッグバン理論でないと今の状態や宇宙で観測できるデータの説明がし得ない、ということにもなるのです。
ちょっと待って。“電磁波”って何だ?
ちょっと戻るようですが、言葉の整理をしたいと思います。先ほどから何度も電磁波と書きました。電磁波って何でしょう?それは、“光”と表現しても良いのではないかと思うのですが、人間の目に見える可視光だけをいうのではありません。電磁波には波長の違いによって呼び方が異なり、波長の多い方から“ガンマ線、X線、紫外線、可視光、赤外線、電波…”などと呼ばれます。前項で書いた、ビッグバン直後に発せられたという電磁波の証拠というのは、マイクロ波(電波の仲間)のことです。
こうなると知りたくなるのが、宇宙の果て・・
ここまで色々書いてきましたが、宇宙がビックバンではじまり、今もなお膨張し続けているとすれば、ついついその膨張の外側はどうなっているのだろう?と想像してしまいます。何度も登場した例の風船ですが、膨らむ“風船”という物質は、その中身も“空気”という物質で満たされており、その外側も“空気”という物質です。では、広がり続ける宇宙にも、その外側には何かしらの空間ならぬ宇宙間があるだろうとついつい思ってしまうのですが…。実は、宇宙とは、宇宙が誕生して光が到達する範囲のことを言います。地球に住む私たちは日常、空間と仕切りがあるのがあたり前の世界で生活しているので、その感覚では宇宙空間は同じようには語れない、ということらしいです。難しいですね。人類はその宇宙の果てを観測したことはないですし、観測することもできないと言われています。ただ言えるのは、宇宙は今でも膨張し続けており、地球に住む我々の感覚では計り知れない、はるかに超える巨大な世界が広がり続けている、ということなのです。
ビッグバンのまとめ
今もなお、世界中の科学者たちが、宇宙の始まりやその果てについての謎を解き明かそうとしています。物質と反物質の謎も話題になっていますし、新たな素粒子発見かも?と新聞を賑わせたのはつい先日の話です。物理学は今までの定説が次々と塗り替えられ、教科書を書きかえるほどの新しい情報が続々と発表されつつあります。素人の著者からすると、宇宙について知ろうとすればするほど、その日進月歩な世界の複雑さゆえに一度原点に帰って頭を整理したほうがいい、と立ち止まることも多いのです。今回の内容はその第一弾とも言えるかもしれません。これからも少しずつ、そしてわかりやすく、宇宙についての情報や現状、歴史などについて書いていきたいと思います。最後になりましたが、いつものことながら、世界中の科学者、研究者の皆さんの努力に敬意を表したいと思います。
写真引用元:wikipedia