銀河系には多くの恒星が発見されています。
それと同時に、その恒星を回っている惑星も多く発見されています。
今までの理論では、惑星の大きさは周回している主星の大きさに比例するというものがありましたが、
このたびこの理論が覆されるかもしれない惑星が発見されました。
今回はこの、想像を超えた惑星の発見についてのお話です。
(画像引用元:原始惑星系円盤の想像図 wikipedia)
1年がわずか2.6日の巨大惑星
今回発見されたのは、「NGTS-1b」という太陽系外惑星です。
これはなんと、「小さな恒星の周りを回っている巨大な惑星」です。
NGTS-1bは、地球から見たはと座の方向から約730光年ほど離れたところに
ある赤色矮星の「NGTS-1」を公転しています。
このNGTS-1bは質量が木星以上というほどの巨大さがありますが、
それに対して主星の恒星「NGTS-1」は、なんと太陽の半分くらいの直径ほどの、
薄暗い「赤色矮星」です。
これは、赤色矮星を公転している惑星としては史上初の発見である
「木星より大きな巨大ガス惑星」となります。
宇宙にさほど詳しくない人にとってはそれほど驚くものではないかもしれませんが、
これは科学者たちにとっては、予想をはるかに超えた組み合わせでした。
これまでの惑星形成理論は、恒星が小さければ小さい惑星が、
恒星が大きければ大きな惑星となると考えられていたからです。
イギリスのウォーリック大学、ダニエル・ベーリス氏は
「これほど大きな惑星が、こんな小さな恒星を周回しているという惑星系は、
いままで想定されていなかったことです」と語っています。
主星から惑星までの距離もとても短く、
NGTS-1bは2.6日で恒星の周りを1周してしまいます。
つまり、なんとNGTS-1bの1年間はわずか2.6日ということになります!
非常にまれなM型矮星周囲の「ホット・ジュピター」
(ホット・ジュピターの想像図 wikipedia)
この驚くべき発見をしたのは、チリのヨーロッパ南天天文台で太陽系外惑星を探している
「次世代トランジットサーベイ」というプロジェクトで、
惑星が主星を通過するときに、恒星が短い間減光したように見える
「トランジット現象」を観測したことよって発見されました。
学術誌の「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」という王立天文学会月報に
掲載予定の論文では、この惑星系は私たちの太陽系から約600光年も離れたところに位置していて、
非常に古い可能性があるとされています。
論文を書いた一人であるピーター・ホイートリー氏は、
「このNGTS-1bはモンスター級の惑星ですが、
それにくらべて主星のNGTS-1がかなり小さく薄暗かったために、
発見することが困難でした。
小さい恒星はありふれた天体なため、
まだ宇宙にはたくさんの巨大惑星が存在しているのかもしれません」と語っています。
小さな主星「M型矮星」が巨大な惑星を持っている例というのはまだ2つしかなく、
どちらの惑星でも「NGTS-1b」ほど大きくはないそうです。
主星から距離がとても近く、表面の温度が高温な巨大ガス惑星は
「ホット・ジュピター」といいますが、
このようなM型矮星の周囲にある「ホット・ジュピター」は非常にまれとされています。
これまでの惑星理論が覆されるかもしれない!?
これまでの惑星形成理論では基本的に、
大きい恒星になるほど大きな惑星を持つということで、簡単に言えば、
これは惑星系のもとである「ガス」や「塵」の塊が大きいほど、
大きな恒星・惑星ができるからで、
逆に赤色矮星のように小さい恒星では材料が少量からできるため、
周りにも小さい惑星ができるということです。
今回のこの惑星系は従来の理論に従わないものですが、
惑星形成理論を再考するときが来たのか、
またはすこしの注釈を書き足すだけで済むかはまだ不明です。
この怪物級の惑星は、次世代のハッブル宇宙望遠鏡として打ち上げ予定の
「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」からは大気を調べられるくらいの近い場所にあります、
大気の観測結果がわかれば、
この巨大惑星が主星からどれほど離れた場所で誕生したかも明らかになるでしょう。
科学者が驚くほどの惑星が発見されました
小さな恒星を周回している木星より大きい巨大なガス惑星「NGTS-1b」についてでした。
これまでの理論を覆すことになるかもしれない発見ということで、科学者達も注目しているでしょう。
「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」による大気の観測結果も注目ですね。