太陽系はもちろんわれわれが住む地球や火星などの天体が存在している領域ですが、
では太陽系の果てにはなにがあるのでしょうか?
太陽系の境界に「エッジワース・カイパーベルト」という領域があるとされています。
現在、このエッジワース・カイパーベルトにある天体の探査が注目を集めています。
ということで、今回はこの「エッジワース・カイパーベルト」について紹介してみます。
彗星の故郷である領域
(画:エッジワース・カイパーベルト天体 wikipedia)
太陽系のなかでもっとも遠い惑星の海王星の軌道の外側付近にあって、
太陽の周りをドーナツのようにぐるりと囲んでいるのが「エッジワース・カイパーベルト」です。
この領域はアイルランド出身の天文学者ケネス・エッジワースが
1943年・1949年に短い周期の彗星の故郷として発案しました。
1950年にはあらゆる彗星の故郷という「オールトの雲」が発案されると、
1951年にオランダ/アメリカの天文学者ジェラルド・カイパーが
この領域をオールトの雲の故郷であると提唱しました。
つまりこの領域は、このふたりの天文学者の名前からつけられています。
以前はあらゆる彗星の起源はオールトの雲とされてきましたが、
ほとんどの短い周期の彗星の軌道角度が0に近いので、
1980年にジュリオ・フェルナンデスがこのような彗星の起源は球型ではない
ドーナツ型のエッジワース・カイパーベルトだと主張しました。
1988年にシミュレーションによってオールトの雲より不規則な方向でくる彗星が、
リアルの短周期彗星のような平らの分布になることはありえないと判明し、
エッジワース・カイパーベルトが広く科学者たちから信じられるようになりました。
1980年代〜1990年代にいくつかのチームが、
当時はまだ仮説でしかないエッジワース・カイパーベルトの研究を行いました。
ハワイはマウナケア山にある大望遠鏡に電荷結合素子の「CCD」を取り付けて、
連続撮影された画像をコンピューターでチェックしながら、
移動している暗い星を見つけるという手法がとられました。
1992年の8月の終わり、ついに太陽から非常に遠い距離にある
小惑星1992 QB1(冥王星以後発見された初の太陽系外縁天体)が見つかり、
これが[EKBO]、エッジワース・カイパーベルト天体ということが判明しました。
正式名はなく、仮符号を省略した「QB1」という名前です。
エッジワース・カイパーベルト天体の「キュビワノ族」はここから取られています。
1993年に5個、それから後になると毎年に10個以上という
エッジワース・カイパーベルト天体が見つかり、現在では1000個以上もの天体が確認されています。
このように、この領域には天体がたくさん存在することが明らかになっています。
エッジワース・カイパーベルトにある天体の正体は?
その名の通り、この領域にある天体のすべてがエッジワース・カイパーベルト天体です。
狭い意味では軌道長半径約30AU(天文単位)?約48AUの天体のことで、
仮説ではオールトの雲?内オールトの雲より内側にある天体のことです。
エッジワース・カイパーベルト天体は、あの冥王星も含まれます。
また冥王星の衛星「カロン」、太陽系外縁天体の「クワオアー」もEKBOに含まれます。
散乱円盤天体の「SDO」とは、海王星の重力でこの領域から散らばった天体です。
太陽からかなり遠いので暗く、まだまだ未知のものが多くあると予想されています。
このため、この場所は太陽系外縁部の概念を変える可能性を持っていると考えられています。
最近では「2015RR245」という、約700キロの大きさがある準惑星が見つかっています。
「2015RR245」は公転周期が非常に長く、なんと732年もかけて太陽を1周します。
これは当然太陽から非常に遠い場所にある天体ということであり、
ちなみに冥王星の公転周期はこの半分以下の248年です。
なお、EKBOを含めてTNO(海王星以遠天体)は、世界の創世神話から命名されるています。
上記の「クワオワー」はアメリカ先住民のトングヴァ族、
「セドナ」はイヌイットにおける創世神話からつけられています。
「ニュー・ホライズンズ」が探索予定です
(画:ニュー・ホライズンズ wikipedia)
太陽系のはずれにあるエッジワース・カイパーベルトですが、
これまでは当然人類にとっては未知の領域でした。
しかし、NASAの無人探査機である「ニュー・ホライズンズ」によって2015年、
ついにこの領域の探査が可能となりました。
「ニュー・ホライズンズ」は冥王星の調査を行いましたが、
それだけではなくさらに遠い太陽系外縁天体、
エッジワース・カイパーベルトにある天体を調べるということも予定されています。
冥王星を探査したニュー・ホライズンズは今後、
2019年の1月には太陽系外縁天体の「2014 MU69」をフライバイ観測した後、
太陽系を脱出する予定が計画されています。
この領域やそこにある天体を調査する理由は、
太陽の光がほとんどない暗くて非常に寒い領域であるため、
地球のような生命が存在するとは考えられないのですが、
それでも太陽系の歴史を明らかにするための証拠があるのではとされていて、
水や有機物質についての起源を調べることができるのではと期待されています。
2016年には、太陽系の第9惑星が発見されたかもしれないというニュースが話題になりました。
この領域の天体を調べていた科学者は、
その内6つの天体が大きな重力の影響で傾いた軌道を描いているという奇妙な現象を発見しました。
科学者は、今まで知られていない天体の重力がこのような軌道に影響を与えたと考え、
それは太陽系の第9惑星ではないかとして世界に公表しました。
しかし、もしも第9惑星が存在していてもその場所は非常に遠い場所にあるということになり、
なんと海王星の軌道より約20倍以上もの距離で、
1万年から2万年というとんでもなく長い公転軌道がある惑星とされています。
この惑星もエッジワース・カイパーベルトにあるので、
つまりこの領域は非常に遠い太陽系最深部まであるのではとされています。
太陽系の果てにはなにがあるのでしょうか
太陽系のはずれにあるという「エッジワース・カイパーベルト」についてでした。
NASAの「ニュー・ホライズンズ」がこの領域の天体を調査することで、
人類を含めた生物のルーツの鍵を見つけることができるかもしれないと言われています。
「ニュー・ホライズンズ」の続報を待ちましょう。