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火星の夕焼けはなぜ青いの?火星の豆知識

2018年8月9日

夕焼け

 

あなたは「夕焼け」と聞いてどのような風景を思い浮かべるでしょうか。

沈む赤い夕陽。あかね色に染まる雲。オレンジ色から青のグラデーションに彩られた世界。

といったところでしょうか。

しかしながらこれはどの惑星でも同じというわけではありません。

実は火星では夕焼けの色は青色なのです。

この記事ではその理由を夕焼けのメカニズムを紐解きながら見ていきましょう。

 

 

火星で夕焼けが起こる理由

 

まず、地球上での夕焼けがなぜ赤いのか、夕焼けが起こる仕組みを確認しましょう。

光は波長によって色が違います。太陽の光は元々白色です。

太陽の光をプリズムに通すと赤から紫の七色に分かれますが、

様々な色の光が均等に混ざって白色になっているのです。

しかし、実際に私達が感じる太陽の光は、

昼間は黄色っぽくて夕方になるとオレンジから赤色になります。

この太陽の色が変わる原因は、光は空気の分子などによって散乱されるからです。

散乱とは小さな粒子によって光の進む道が変わる(屈折する)ことです。

雨の後に7色の虹が見えますが、これは雨粒がプリズムの働きをして、

混ざっていた光が屈折し、それぞれの色に分かれるからなのです。

光の七色の中では、赤が最も波長が長く、青や紫は波長が短くなっています。

地球大気中では、波長の短い光ほど屈折しやすい性質をもっています。

したがって、赤い光は屈折しにくく、青や紫の光は屈折しやすくなっています。

では、なぜ、夕方の方が青や紫の光が屈折しやすいのでしょうか?

地球は球形をしているため、地球を取り巻く大気の層も球殻状になっています。

大気圏には空気があるため、空気の分子にぶつかった光は屈折します。

夕方は太陽からの光がほぼ水平方向から入ってくるので長く大気圏を通過します。

その分、青や紫よりの光は多く屈折して、地表に届かず違う方向へ散乱してしまいます。

その結果、赤よりの光だけが地表に到達します。

これが地球上の夕焼けの色が赤い理由です。

 

 

火星の大気と青い夕焼け

 

翻って、火星の大気はどのようになっているのでしょうか。

火星の大気は二酸化炭素が主成分ですが、地球と比べてとても薄く、

地表の大気圧は約750Paで、これは地球の1%程度の数値です。

これは火星の質量が地球の10分の1で大気を引き付けておくための十分な重力を持たないためです。

また、火星の地表は酸化鉄を多く含む塵や砂に覆われています。

この酸化鉄のために火星が赤く見えています。

火星では大気中にも酸化鉄の塵が多く含まれています。

この塵の粒子は地球大気中の塵よりも少し大きめです。

地球大気中で「波長の短い光ほど屈折しやすい性質をもつ」のは、

光の波長より粒子の大きさがずっと小さいためです。

火星の場合は大気が薄いため、大気中の分子による散乱の効果はほとんどありません。

その代りに大きな塵の粒子による散乱の影響の方が大きくなっていて、

これは粒子のサイズに近い波長の光をよく散乱する効果があります。

これが赤い光の波長に対応しているため、火星大気中では赤い光が散乱されやすくなります。

このような理由から火星の大気中では赤い光の方がより散乱されやすくなっています。

火星の日没時には、

地球と同じように太陽光は昼間よりも厚い大気と塵の中を通らなくてはならないため、

赤い光がさらに散乱され、散乱されなかった青っぽい光が観測者に届くことになります。

 

火星の夕焼けはなぜ青いの?のまとめ

 

いかがでしたでしょうか。

「火星の夕焼けが青い」という事実が発見されたのは2010年のことですが、

当時、地球のように日没は赤いと予想していた研究者たちを驚嘆させました。

将来、火星旅行のツアーが組まれるようになった時には、

神秘的な夕暮れの景色はその魅力の一つになっているのでしょう。

 

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