宇宙雑学

「スピッツァー宇宙望遠鏡」が運用終了!16年間の成果を振り返る





スピッツァー宇宙望遠鏡 wikipedia

スピッツァー宇宙望遠鏡 wikipedia

 

このたび、NASAの宇宙望遠鏡「スピッツァー宇宙望遠鏡」が、先月1月で運用を終了しました。2003年8月に打ち上げられたので、ほぼ16年という年月の間、宇宙を観測していたということになります。今回はこのスピッツァー宇宙望遠鏡について、16年の成果を振り返ってみました。




「グレートオブザバトリー計画」の4つの巨大望遠鏡の中のひとつ

 

スピッツァー宇宙望遠鏡は、アメリカ航空宇宙局・NASAの赤外線宇宙望遠鏡です。名前の由来は、1940年代に宇宙望遠鏡を考案したライマン・スピッツァー Jr.博士からつけられています。2003年の8月にデルタロケットで打ち上げられ、今年2020年の1月に運用が終了。ほぼ16年間に渡ってさまざまな宇宙を観測していました。

 

スピッツァー宇宙望遠鏡の特徴は、一般的な人工衛星と違い、地球を追いかけるようにしな軌道を取っているという点です。「ハッブル宇宙望遠鏡」「コンプトンガンマ線観測衛星」「X線観測衛星チャンドラ」と共に、「グレートオブザバトリー計画」の1機になります。グレートオブザバトリー計画というのは、NASAが誇る上記4基の大型天体宇宙望遠鏡群の総称です。

 

4つの大型天体宇宙望遠鏡は、それぞれの独自の技術を使い電磁スペクトルの特定のエネルギー領域を観測するために設計され、1990年〜2003年の間に打ち上げられました。スピッツァー宇宙望遠鏡は、グレートオブザバトリー計画の大望遠鏡群の中では唯一という、「スペースシャトルによって打ち上げられなかった望遠鏡」です。スペースシャトルによって打ち上げられる予定でしたが、「STS-51-Lのチャレンジャー号事故」の後、太陽周回軌道の投入で必要だった液体水素・液体酸素を推進剤にしたセントールロケット上段部を使うことが禁止されたので、計画を変更したのです。

 

タイタン・アトラスロケットによる打ち上げは、費用の関係で中止され、結局、再設計・軽量化によって「デルタIIロケット」によって打ち上げられました。その本体は太陽熱対策の板があり、軽量ベリリウムででき反射望遠鏡を搭載、高精度赤外線観測のために、液体ヘリウムを使って5.5ケルビンまで冷却。

 

実は地球も熱を出しているので、宇宙望遠鏡は地球付近での観測はできないそうです。このため、地球とともに太陽を回る軌道にあり、地球を追いかけているようにして移動しています。液体ヘリウムの冷却材が減るにつれ地球から離れていっています。




スピッツァー宇宙望遠鏡が挙げた功績

 

スピッツァー宇宙望遠鏡は16年という運営中に、星形成・恒星をまわる惑星・銀河等、多くの分野で貴重な発見をしてきました。それをここで紹介してみましょう。過去の眺めから126億光年先の世界までスピッツァー宇宙望遠鏡は感度が高い赤外線受信能力を持っているために、地球から120〜130億光年という遥か彼方にある銀河系を観測することができました。これにより、遠方の銀河系が誕生してから4億年未満という若い姿を観ることになります。

 

天文学者たちは、数々の若くて古代の銀河が、そのどれもが大きく成長していることに大変驚きました。若い古代の銀河というのも不思議な言い方ですが、宇宙というものそういうものと考えましょう。スピッツァー宇宙望遠鏡は、同じグレートオブザバトリー計画の大望遠鏡である「ハブル宇宙望遠鏡」等とデータを共有して、この超遠距離銀河の観測をしました。

 

このふたつの望遠鏡では異なる波長帯で観測し、これらを補完しあうことでこれまで得られなかった高精度データが得られたのです。地球から126億光年先にあるこの銀河集団は、「126億年昔の若い銀河」ということになります。宇宙は137億年昔にできたとされるているので、つまりこの銀河集団は誕生して10億年しか経っていないということになります。

 

この銀河集団はおよそ4兆という太陽くらいの大きさの星々があって、それぞれの銀河の中心部で新しい星が大量に誕生しつつあります。このような遥か彼方の距離はスピッツァー宇宙望遠鏡でしか観測できないそうです。

 

 

太陽系外惑星の数々を発見

 

運営を終了する前の数年間のスピッツァー宇宙望遠鏡は、当初は予定になかった「太陽系外惑星」の研究のために利用されていました。太陽のような高い温度の恒星を周回している惑星系ではなく、冷え切っている恒星を周回している惑星、その中間の温度を持つ恒星・惑星等の観測も行っていました。太陽系から遠くない恒星系から、銀河系中心方向へ13000光年にある恒星系惑星を発見。この恒星系は「OGLE-2014-BLG-0124L」という名前が付けられました。

 

スピッツァー宇宙望遠鏡は、系外惑星探査で最大の成果を記録した観測機です。恒星を回る7つの地球に似た大きさの惑星を見つけたのも、その一つです。

 

「トラピスト-1」という恒星系では7個の地球型惑星が周回していて、その3個が生命存続の可能性がある「ハビタブル・ゾーン」になります。これらの表面温度では水が存在できるので、宇宙は「生命が存在する」と考える証拠にもなりえます。

 

 

土星の大型リングを発見

 

スピッツァー宇宙望遠鏡が発見した土星のリングは、非常に希薄なリングですが、大きさはなんと土星直径の300倍というからおどろきです。この巨大リングは、これまで見つかっている土星のリング面より27度傾斜しています。土星〜リング内側の距離は600万kmで、リングの外縁まで1200万kmです。厚みは土星の20倍で、肉眼では見えません。地上でもしも見えるとすると、満月の2倍の大きさなんだそうです。

 

 

太陽系外恒星に、大型小惑星が衝突したという証拠を発見

 

若い恒星を観察中に、大量の「埃」が起きているのを発見しました。これは、「小惑星が衝突」したのが原因と考えられています。この恒星の周りはチリや埃があり、お互いに引寄せられるのを繰り返して合体、これが1億年ほどで小惑星になって、この小惑星が衝突することが惑星の誕生に関わっているのではないかと考えられています。

 

 

多くの発見をした宇宙望遠鏡

 

2020年1月に16年の宇宙観測を終了した、「スピッツァー宇宙望遠鏡」についてでした。スピッツァー宇宙望遠鏡によって、太陽系と数光年の距離にある恒星から数千光年も離れた銀河系の星々、それよりも遥かに遠方の銀河系まで見渡せるようになったのです。そして他の望遠鏡の観測データと組み合わせることで、我々は宇宙についてより多くの出来事を理解できるようになりました。




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