今年の8月には、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が開発した宇宙実験棟である「きぼう」が観測できる日がありました。今年の8月は曇りや雨が多かったのですが、無事に「きぼう」を見られた人はいるでしょうか?今回はこの「きぼう」について説明してみましょう。
宇宙実験棟「きぼう」の概要
「きぼう」とは、日本のJAXA、宇宙航空研究開発機構が開発した宇宙実験棟です。国際宇宙ステーション(ISS)というのは、アメリカ・ロシア・日本・カナダ・ヨーロッパ宇宙機関がそろって運用している宇宙ステーションですが、そのISSのなかでも「きぼう」は最大規模の宇宙実験棟になっています。
「きぼう」ができた背景についてですが、日本は1980年代にアメリカが宇宙ステーション建設を計画した当初から参加を表明していて、費用面だけでなくモジュール建設なども製造と保有、運用を宇宙開発事業団が担当していました。「きぼう」は、そのすべての管制を日本が行いますが、基本的なインフラはアメリカ側のモジュールが提供されているので、施設使用権でいうとほぼ半分弱をアメリカが保有しているという事情もあります。
1985年の5月、NASAと日本の科学技術庁が「宇宙ステーション計画予備設計了解覚書」に署名して、ここから日本が宇宙ステーションの設計作業に着手していきます。日本が設計したのは実験モジュールですが、当時のそれと現在の「きぼう」には大きな違いがなく、このような変更がないものはなにかと計画などの変更が多い宇宙ステーションのなかで珍しいといわれています。
「きぼう」はどのようにして宇宙に打ち上げられたか
「きぼう」はどのようにして打ち上げられて、組み立てられたのでしょうか。最初の計画では「きぼう」は2006年〜2008年の間に宇宙に打ち上げられる予定でしたが、2003年のスペースシャトル「コロンビア」の痛ましい事故によってISS自体の建設が遅れました。「きぼう」が初めて打ち上げられたのは船内保管室で、2008年3月のスペースイシャトル「エンデバー」によって宇宙へと運ばれました。その後も2009年までにエンデバーによって各部が宇宙へと運ばれていき、2010年2月に衛星間通信システムが格稼働し、翌3月の子アームの設置により、「きぼう」の基本要素の設置が完成しました。
「きぼう」の主要な6つのエリアについて
では、「きぼう」の船体についてはどのようになっているのでしょうか。
「きぼう」は、
・船内実験室
・船内保管室
・船外実験プラットホーム
・船外パレット
・マニュピレーターロボットアーム
・衛生間通信システム
という、主要な6つの部分からできています。
このなかで中心的な部分となるのが「船内実験室」です。ここは4人まで同時に搭乗できて、微小重力環境下での実験をしています。きぼう全体を管理制御する装置があります。
「船内保管室」
は保管庫として使われている、日本発の宇宙有人施設です。
「船外実験プラットフォーム」
は微小重力や高真空の宇宙曝露環境で、科学観測・天体観測・地球観測・通信・理工学実験等を行っている実験スペースです。
12箇所の結合部に各実験装置を取り付ければ、様々な実験が可能となります。
「船外パレット 」
は、上記の船外実験プラットフォームに取り付けられる船外機器が3基あり、スペースシャトル輸送するパレットです。
「ロボットアーム」
は実験やきぼうの保全作業サポートのために使われるマニュピレーター
です。アームは各自で6つの関節があり、まるで人間の腕のような動作ができるのが特徴的です。
「衛星間通信システム 」
は効率的な運用のために船外実験プラットフォームにある直径約80cmほどのアンテナです。
JAXAのデータ中継衛星「こだま」を使い、筑波宇宙センターとデータや画像、音声等の通信が行われています。
「きぼう」から地上に行うハイビジョン映像の際の送信にも使われています。
なお、「きぼう」の運用は、築波宇宙センターの宇宙ステーション総合推進センター宇宙ステーション運用棟において管制が行われています。
「きぼう」についてもっと知りたい人は
「きぼう」は、日本で宇宙空間の実験設備に必要な高い機能性と安全性、操作性を実現したとして、2010年度のグッドデザイン賞の金賞を受賞しています。ここまで読んで「きぼう」についてもっと知りたくなってきた人は、JAXA筑波宇宙センター展示館「スペースドーム」に、内部に入れる実物の大模型が展示されていたり、名古屋市科学館屋外展示のスペースに、実際の開発で使われた船内実験室のモデルも展示されているので、そちらのほうも見てみるといいかもしれません。
写真引用元:きぼう wikipedia