太陽系外惑星

生命体の可能性も?!地球に一番近い太陽系外惑星「プロキシマb」の発見

2017年1月29日

(プロキシマ・ケンタウリbの想像図 wikipedia)

2016年8月頃、世の中を驚かせるニュースが新聞で大きく掲載されました。地球からおよそ4.2光年離れた太陽系外に、「プロキシマb」という地球によく似た惑星が発見された、ということです。しかもその「プロキシマb」には生命体がいる可能性があるかもしれないということで、世界中でも大変注目を浴びました。このコラムでは、「プロキシマb」とは何なのか、なぜこんなに注目されているのかについてわかりやすくまとめたいと思います。





地球から4.2光年先の「プロキシマb」…遠い?それとも近い?

(プロキシマ・ケンタウリbの地表の想像図 wikipedia)

「プロキシマb」は地球から約4.2光年先にある惑星です…と言われても、それがどのくらい地球から離れているのかについてピンと来る人は少ないのかもしれません。1光年とは“1年間かけて進む光の距離”であり、それは“約10兆キロ”です。つまり、4.2光年離れているとは、約40兆キロ離れているということです。もっとわかりやすい表現をすると、地球から太陽までの距離は約1億5千万キロですが、その約27万倍も遠く離れているという換算になります。こうなると、なんだかとてつもなく遠くの惑星のように聞こえるようですが、ちょっと視点を変えて想像してみます。私たちがいる太陽系を含む天の川銀河の最もご近所にあるアンドロメダ銀河は地球から254万光年離れています。宇宙はもっとさらに広いです。このことを鑑みれば、たった4.2光年先の「プロキシマb」は、地球から見てかなり近い位置にあると言えるのです。

 

近年、数多く発見されている太陽系外惑星

(ケプラー探査機(想像図)wikipedia)

今回発見された「プロキシマb」は、太陽系外惑星です。“惑星”と聞くと、私たちは一般的に、地球を含め太陽を回る水金地火木土天海の8つの惑星を思い浮かべることが多いと思います。「プロキシマb」は、私たちが住む太陽系を外れたところにある、別の恒星(別の太陽)を回る天体(惑星)として発見されました。太陽系の外にある惑星ということで、“太陽系外惑星”と表します。実はこの太陽系外惑星は、宇宙全体を見渡せば、近年の宇宙科学技術の発展に伴い、数多く発見されているのです。アメリカNASAが2009年に打ち上げたケプラー宇宙望遠鏡は太陽系外惑星を発見するために打ち上げられましたが、これまでに1,000個以上もの太陽系外惑星を発見してきました。その他の望遠鏡でも多数発見され、NASAの発表によると今では3,000個以上もの太陽系外惑星が見つかっているということです。さらに、地球上でも世界各国が太陽系外惑星の発見にしのぎを削り、地球からの直接観測(目視で確認できる太陽系外惑星の観測)にも力を注いでいます。私たちの日本でも、国立天文台が所有するハワイにあるすばる望遠鏡も例外ではありません。

 

太陽系外惑星「プロキシマb」にせまる前に知っておきたい“ハビタブルゾーン” について

最近の天文学用語の中に、“ハビタブルゾーン”という言葉があります。これは、“生命移住可能領域”を表すのですが、つまり、生命が住むのに適した環境のエリア内、ということです。実際のところ、これまでに地球外に生命が発見されたことはありませんので、“ハビタブルゾーン”とは、生命がいるのではないか?という可能性としての領域を表す言葉と言えると思います。“ハビタブルゾーン”であるための主な条件は、岩石でできた地球型惑星であること、そして、水が液体の状態を保つことができることです。太陽系の惑星で比較すればわかりやすいのですが、ご存知のように地球は岩石でできた天体です。水星・金星・火星も地球と同じ岩石型惑星です。これに比べて木星や土星はガス型惑星であり、あの大きな形はガスが取り巻いています。また、海王星や天王星は氷型惑星と言われ、水が存在しても太陽から離れているため凍っている状態です。また、岩石型惑星の中でも自然の状態で水(海)が存在するのは地球だけです。その他の岩石型惑星は、太陽からの距離などが影響して水がありません。現在“ハビタブルゾーン”エリア内にあると推測されている太陽系外惑星は、発見された3,000個以上もの太陽系外惑星のうちの300分の1くらいだと言われていますが、実は「プロキシマb」は、“ハビタブルゾーン”の条件をクリアしている、地球から最も近い太陽系外惑星なのです。

 

 

太陽系から最も近い恒星「プロキシマ・ケンタウリ」の軌道を回る惑星「プロキシマb」

(ハッブル宇宙望遠鏡で撮影されたプロキシマ・ケンタウリ wikipedia)

惑星とは、ある恒星の周りを回っていることが第一の条件になります。太陽系でいうと、太陽は恒星であり、自ら光を放ちます。そして8つの惑星が恒星(太陽)の周りを回っているのです。さて、「プロキシマb」は、「プロキシマ・ケンタウリ」という恒星の周りを回っていることが発見されました。恒星「プロキシマ・ケンタウリ」は、今から約100年前の1915年に初めて観測されました。太陽の約7分の1の大きさの赤色矮星で、太陽系から最も近い約4.2光年離れたところで発見されました。実はこの恒星「プロキシマ・ケンタウリ」は、南半球から見える“ケンタウルス座”の星座のうちの1等星の1つとして確認することができます。位置としては南十字星の近くです。ただし、実はこの1等星は、三重連星と言って、3つの星が地球から見て1つの恒星のように光り輝く恒星です。ですので、残念ながら「プロキシマ・ケンタウリ」単体を地上から肉眼で見ることは不可能なのです。

 

なぜ「プロキシマb」が惑星として発見されたのか?

惑星は、恒星と違って自ら光を放ちません。つまり、暗いのです。太陽系の惑星が夜空で光って見えるのは、太陽の光の反射が影響しているためであり、自ら放つ光ではありません。ですから、はるか遠い彼方の暗い惑星を、地球から目視で“直接的に”発見することは至難の技なのです。しかし、最新の技術開発と研究者の地道な努力によって、「プロキシマ・ケンタウリの周りを回る惑星が存在する」ことを“間接的に”突き止めることに成功しました。そのキーポイントは、「プロキシマ・ケンタウリのわずかな揺れに注目したこと」でした。太陽を例に説明すると、太陽はその周りを回る惑星の重力の影響によって、実は肉眼ではわからないほど微妙に揺れ動いているのです。その揺れは、惑星の軌道の位置と関係しており、惑星と太陽が近づくと微妙に惑星に近づき、惑星が離れると太陽も離れる、という規則性を持って動いているということです。つまり、恒星のわずかな揺れに規則性があればあるほど、その恒星の周りには惑星が存在する、と導き出せるのです。「プロキシマb」は、研究者の地道な努力によって、その恒星であるプロキシマ・ケンタウリのごく小さな規則的な揺れを発見したのです。

 

世界中の研究者たちが協力したPRDプロジェクト

(チリのラ・シヤ天文台 wikipedia)

「PRD」は、「ペール・レッド・ドット(ほのかな赤い点)」を表します。PRDプロジェクトは、「プロキシマ・ケンタウリ(ほのかに見える赤い恒星)の微妙な揺れをキャッチしよう」というプロジェクトです。世紀の大発見とも言える太陽系外惑星発見につながる「プロキシマ・ケンタウリ」のわずかな揺れを、一度観測したところで、それが本当に正確な情報なのかどうかをしっかりと裏付けする必要がありました。そこで、世界中の研究者に呼びかけて、最新の望遠鏡と共に、その揺れを他方面からも突き止めるためのプロジェクトを立ち上げました。その結果、プロキシマ・ケンタウリのわずかな規則的な揺れを観測し、それを検証したところ、統計的に鑑みて間違いのない確率で、そこには惑星がある、ということが裏付けられたのです。

 

 

「プロキシマb」に生命体がいる可能性は?

今回の「プロキシマb」発見は、私たち地球に住む人々にとって、大変重大な興味を惹かれるものでもありました。なぜならそれは、“「プロキシマb」には生命体が存在するかもしれない”ということが言われていたからです。「プロキシマb」は、前述の“ハビタブルゾーン”内に存在することがデータから観測されています。つまり、恒星「プロキシマ・ケンタウリ」の質量や温度、「プロキシマb」との距離関係を鑑みると、「プロキシマb」は岩石惑星であることは確実だということで、且つ、水の存在も否定できないということです。ただし、恒星「プロキシマ・ケンタウリ」と「プロキシマb」との距離関係が、太陽と地球の12分の1くらいしかないということで、太陽系で考えると水星よりも太陽に近い位置に「プロキシマb」の軌道があることになります。そうなると、位置的に恒星に近づきすぎで、生命の存在は厳しいのではないかとも見方もあるのです。また、恒星に近い分だけX線が降りかかる量も多いということです。X線は一定量を超えて浴びると生命維持に影響を及ぼします。さらに、可視光線(人が目で確認できる光)の量も極めて少なく、生命に溢れる地球との違いはまだまだ数多くあるようです。しかしながら、私たちが期待する地球外生物の存在は立証されるのかどうか、研究者や宇宙ファンだけでなく、世界中の人たちの興味や期待は尽きないと思います。何より地球からたったの4.2光年先の生命体存在の可能性が少なくとも考察されるのですから、今回の「プロキシマb」大発見は、私たちの好奇心をこれからも大きく揺さぶることになるでしょう。

 

 探査プロジェクトは早くも進行中!

(スティーヴン・ホーキング wikipedia)

地球からの距離が近い恒星「プロキシマ・ケンタウリ」ですが、その近さもあって、その恒星圏への探査機計画が早くも進行しています。イギリスの物理学者・スティーブン・ホーキング博士を中心としたメンバーは、高速の5分の1の速度の超小型探査機を開発し、生命体を探す「スターショット計画」をすでに発表しています。目的地はたったの約4光年先と言えども、今までに人類がチャレンジしたことのない遠さに値します。ボイジャー1号でさえ今も成し遂げていないはるか遠くを超短期間で目指すのです。動力源にはレーザー光を使用するということですが、それも今の時点では40兆キロ先まで探査機を飛ばすにはまだ開発途中のようです。しかし、実は日本では、JAXAが実験的に宇宙ヨットを打ち上げ、レーザー光照射がその動力源として使われました。なんとこれはレーザー光を動力源とする世界で初めて成功例になるのです。もうしばらく開発に時間がかかりそうな「スターショット計画」ですが、今の技術力と人間の好奇心を持って取り組めば、近い将来明るいニュースを聞くことができるものと期待しています。

 

太陽系外惑星「プロキシマb」発見は、宇宙探査の嚆矢にすぎない

今、世界中では、より短期間に、より低価格で、より正確に宇宙探査をするための研究開発が、まさに日進月歩で発展しています。それは、前項の探査機だけでなく、地上の望遠鏡や宇宙望遠鏡の技術の発展、さらには重力や光の研究、まだ解き明かせていない宇宙でのあらゆる事象の解明など、各国の垣根を超えて飛躍的に技術発展しています。太陽系外惑星「プロキシマb」の発見は、太陽系という私たちに身近な宇宙の垣根を超えました。また、遠い未来に起こる太陽の寿命に備え、私たち人類は子孫のためにできることを模索する第一歩に立ったとも言えるのかもしれません。そういう意味で、「プロキシマb」の発見は、歴史的にも非常に大きな意味を持つものでした。この先、さらに新たなハビタブルゾーンにある太陽系外惑星の発見や生命体の確認にまで発展して行くことを期待し、また、「プロキシマb」について新たな新発見が発表されるであろうことを、今後も注目していきたいと思います。

 

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