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宇宙旅行の「宇宙ホテル」とはどんなもの?

2017年4月24日

 

民間宇宙旅行の実現は、秒読み段階です。費用1200万円程度の民間宇宙旅行会社のツアー募集は約20年前に始まりましたが、このツアーには色々な問題があって、実現しませんでした。でも、今では国内外の旅行会社で、色々な種類の宇宙ツアー募集が1000万円程度の価格から発売され、短時間の宇宙滞在タイプツアーは、間もなく現実になりそうです。将来的には、長期宇宙滞在型の旅行も可能になりそうです。そんな時に、旅行者はどんな場所に泊まるのでしょう?現在明らかにされている、宇宙旅行計画について、調べてみました。

 

民間宇宙旅行の種類

 

「高度何キロから宇宙空間になる」というはっきりした定義はないそうですが、国際航空連盟では、高度100キロ以上を宇宙、FAA(米航空局)には高度80キロ以上から宇宙だという規定があります。宇宙旅行としては、高度30キロまで気球に乗り、真っ暗な宇宙空間や、青く丸い地球の姿を垣間見る計画(日本円で600万円程度)もありますが、宇宙に出る一番安価な計画は、高度100キロまでロケットで上昇し、数分間の無重力状態を体験できるツアーです。高度100キロでの滞在時間は4分間というアメリカの「ヴァージンギャラクティック社」の宇宙旅行は、離陸後の時間は約2時間程度で、高度15キロ(成層圏)に達し、母船から切り離れた旅客用の宇宙船が、ロケット噴射で宇宙に向かいます。宇宙船の高度が20キロを越えると、空の色は濃紺から、藍に変わり、最後は漆黒の宇宙空間に到着する計画です。

費用は、今のところ2500万円程度で、日本からの予約客もいるそうです。2016年12月に、このツアーで利用予定の「スペースシップ2 ユニティ」という宇宙船の飛行テスト(グライダー飛行)が成功し、ロケットエンジンでの試験飛行も視野に入っている段階で、現時点で、一番実現が近い民間宇宙旅行計画でしょう。

 

(その他の主な弾道飛行宇宙旅行計画)

 

・スペースシップワン・ツー

・スペース・アドベンチャーズ

・ニューシェパード

・JTB宇宙旅行など

 

宇宙旅行の目的は?

 

宇宙旅行がしたい人の割合は、3人に2人程度と言われています。希望者の全員が、「宇宙に行ったら地球を眺めたい」と答えたそうです。

地球鑑賞が最大の目的の場合、高度100キロの弾道飛行には問題があります。夜景と昼の景色の違いです。宇宙から見た夜景は見事ですが、地形や雲の流れ、美しい水惑星の全容は太陽光が射している昼間にしか見えません。一方、夜でなければ息をのむ夜景の美しさも、雲海に光る不思議な雷光も観察できず、宇宙旅行士の多くが絶賛する「夜明けの光景」も見えないのです。このため、例えば国際宇宙ステーション(ISS)の高度(約400キロ)で、少なくとも地球半周の時間45分以上は宇宙滞在しないと、昼夜の絶景の一方しか見られず、日の出・日没の双方は味わえません。ISS滞在の宇宙飛行士のSNS等での発言や、撮影画像から、漆黒の宇宙空間に緩やかな曲線で地球の弧が青くほのかに光る中に、太陽のきらめく輝きが現れる様は、ネット動画で見ても息を呑む美しさです。

 

(Karen L. Nyberg@AstroKarenN :2013.11.9

 

この光景を肉眼で見られたら、どんな感動を覚えるでしょう。ISSの位置・速度では、日の出から20分あまりで日没となります。日の出とは反対のプロセスで、黄金色に輝く地球の弧に太陽が吸い込まれ、やがて宇宙の闇に沈むまでの光景は、宇宙滞在で是非見たいものです。

 

宇宙ホテル計画

(画像引用元:(株)清水建設「清水ドリーム」)

 

そこで、宇宙ホテル滞在型の宇宙旅行が登場します。宇宙ホテルには、地上のホテルにはない特徴がありそうです。例えば、大手ゼネコンの清水建設が発表している宇宙ホテルの構想は、450キロ上空の全長240メートル、直径140メートルの円錐リング状構造で、太陽電池パネルと、ホテルフロント等のパブリックゾーンやレストラン・娯楽施設、客室等を配置し、放射線等を防護する外壁を含む複層構造になっています。

 

旅行客用のスペースは、リングの回転により地上の7割(0・7G)の疑似重力を発生させ、快適に過ごせる計画です。この他にも、アメリカの宇宙ヴェンチャー企業エアロスペース社の居住可能な膨張式の宇宙ステーション開発計画(2020年開始予定)は、宇宙ホテル「BA330」と名付けられています。発射時には折りたたんで収納ホテルユニットを、宇宙空間で復元する膨張式で、壁等の素材は繊維製なので軽く、打ち上げコストが大幅に安くできます。大きさは約330平米の3寝室サイズで、6名宿泊出来る現実的な計画です。

 

(「ISSからの眺め」Karen L. Nyberg@AstroKarenN :2016.4.9

 

さらに、ウィンバリー社のリング状宇宙リゾートホテルや、ドイツではアストリウム社の宇宙ホテル構想なども発表されています。いずれの計画でも、滞在者が十分宇宙を眺められるように、窓を大きくとった構造で、ISSのような支柱や壁にはさまれた窓に比べると、ゆったりと絶景が楽しめそうです。

 

宇宙で生活するのにはどんな問題があるか

 

地球の静止軌道まででも、ほぼ完全な真空に加え、高エネルギーの放射線が銀河や太陽からやってくるので、遮蔽が必要です。また、スペースデブリによる隔壁損傷の可能性も無視できません。また、疑似重力生成用のリング状ステーションは、技術的にもコスト的にも実現はかなり先になりそうで、当面、軌道上の滞在は、現在のISSタイプの無重力ユニット内で過ごすことになりそうです。無重力状態の居室では、お風呂の代わりに濡れタオルと乾いた布を使う「スポンジ風呂」で代用し、トイレも原則として吸引式です。食事は、チューブ内の流動食を吸う方式が主流でしたが、最近は以前よりは保存法や調理法がずいぶん改善され、かぼちゃパイやポークチョップなど数百種類のメニューに加え、フルーツや野菜が食べられるようになりました。この他にも、レトルト食品やナッツなどの自然食品も加わり、調味料の使用制限(粉末不可など)や密封したトレーからの食べ方などに注意は必要ですが、従来の宇宙食からは、かなり改善されています。ISSでの長期滞在を経験する宇宙飛行士も増えているので、宇宙食にも色々工夫がされているのですが、食生活の変化が少なくてストレスになるという課題は、今のところ解決されていません。また、無重力状態での長期滞在では、筋肉の衰えや骨の劣化(カルシウム流失)等のかなり深刻な健康問題も発生しますので、その場合には色々な対策が必要です。ただし、数日間の滞在では、影響が長期間残ることはありません。さらに、無重力状態は、いわゆる「宇宙酔い」を引き起こすことが多く、軌道上の宇宙ホテル滞在は、地上のような快適さは難しいかも知れませんが、その不自由を上回る素晴らしい体験ができる筈です。

 

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軌道上での滞在の魅力

 

地球周回軌道上での滞在は、夜明けや日没以外にも、夜の地平線に幻想的に輝く緑のオーロラや、雷雲にきらめく稲妻、大型台風のとてつもない広がりなど、地上には無い、特別な景観は尽きません。もちろん、よく晴れた地表が見えれば、青い海原に浮かぶ大陸の姿や、夜間の都市光の輝き、日本海の漁火なども時間があればゆっくり楽しめるのが、宇宙ホテル滞在の魅力です。また、無重力体験も地上では味わえないもので、無重力睡眠には、個人差がありますが、ISSの狭いスペースで体を固定していても、地上よりかなり快適だと宇宙飛行士は報告しています。それに加え、ひょっとすると、未来の宇宙ツアーでは船外での宇宙遊泳が楽しめるかもしれません。

 

宇宙旅行の可能性

 

現在のところ、宇宙旅行は、民間人が行ける機会も少なく、計画されている予約ツアーの価格も高く、一般人が気軽に楽しめるわけではありませんが、近いうちには(少なくとも弾道飛行レベルなら)手の届く時代になりそうです。打ち上げ方式の技術革新は続いていますし、将来的には海外旅行並みの費用で宇宙に行ける「宇宙エレベーター」計画が実現されるかもしれません。人々が、気軽に宇宙に行くようになると、その先の宇宙、月面や火星、外惑星への旅にも期待が高まるでしょう。50年前に人類が初めて宇宙に進出したころには、宇宙から眺めた地球の姿が、ここまで魅力的だとは知られていませんでした。人々が軌道上から地球を眺められる時代になったら、軌道上から眺めた宇宙の広がりを感じとり、我々の夢も新たな宇宙に向かって、一段と広がるのかも知れません。民間宇宙旅行の実現が待ち遠しいですね。

 

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