冥王星

おなじみの「冥王星」が、実は惑星ではなかった!?

2017年9月20日

 

冥王星は、ちょっと前までは地球や火星などと同じように惑星として知られていました。みなさんも、冥王星といえば「水金地火木土天冥海」というように、冥王星は惑星のひとつと学校で習ってそのままそう思っていた人も多いのではないでしょうか?

ところが、現在では「冥王星は惑星ではない」ということになったそうです。今回は冥王星について、分類の変更の経緯や、新たにわかった冥王星の情報などについてご紹介してみます。

 

冥王星の概要について

 

冥王星は2006年までは太陽系の第9惑星とされていましたが、現在では太陽系外縁天体に属するサブグループの準惑星に分類される天体ということになっています。直径は2,370kmで月よりも小さく、冥王星の衛星「カロン」は直径がこの天体の半分以上あるので、「二重天体」と考えられることもあります。

 

冥王星の大気は濃いものではなく、太陽に近づくことによって窒素・メタン・一酸化炭素の気体がうっすらと表面を包みます。太陽から離れると大気のほとんどは固まって地表に落ち、再び太陽に近づくと温度が上昇することで気体となります。冥王星は「トリトン」と同じ海王星の衛星として生まれ、その後に衛星同士が重力相互作用することで海王星の引力から飛び出したものだという説がありましたが、冥王星の質量に基づくいた後の研究により、この成り立ちでは現在の冥王星・トリトンの軌道が説明困難なことが示されて否定されました。

 

今では冥王星・トリトンは太陽を取り囲んでいる「原始惑星系円盤」により形成されて、逆にトリトンだけが海王星の引力圏に捕獲されたという説が支持されています。冥王星は他の外縁天体である「エッジワース・カイパーベルト天体」のように、彗星と同じような特徴を持っています。太陽風により冥王星の表面物質がゆっくり宇宙空間に吹き飛ばされていて、これが彗星と同様となっています。たとえば冥王星が太陽の近くにあれば、彗星のように尾ができるとされています。

 

最近新たに判明した冥王星の事実

(写真引用元:冥王星に向かうニュー・ホライズンズ(想像図)

 

さて、2015年、冥王星の探査に成功したNASAの「ニューホライズンズ」の科学者たちは、同年の11月9日に、米国天文学会惑星科学部会年次総会のおいてその観測の結果を発表しました。その観測データが示した冥王星は、研究者達も驚くような未知の天体でした。冥王星は月よりも小さな天体ですが、氷河が流れていたり、深いくぼみをもつ領域やカラフルな色が見える景色、氷を吹き出す「氷の火山」等、たくさんの特徴があります。それらを見ていきましょう。

 

冥王星の南極付近には、2つのくぼみがあります。これはそれぞれ「ライト山」「ピカール山」という山の上にあり、この山はどちらも高さ数km、裾野直径100kmという巨大な大きさです。この山から噴き出るのはなんと、「氷」というからおどろきです。

 

また、冥王星の山は海に浮かぶ氷山のようだと言われていて、一部ではロッキー山脈と同じくらいの山脈ができています。冥王星の表面はスプートニク平原のように非常になめらかな領域がありますが、その反面他の場所ではボコボコの穴だらけのような場所、蛇革のうろこ状になっている場所もあります。スプートニク平原の西は、バージル・フォッサ等の大きな裂け目がいくつかあります。

 

このひび割れは冥王星外殻が膨らみ破裂したようで、実際にそのようなことが起きた可能性もあるとされています。アメリカのワシントン大学のビル・マッキノン氏は、外殻の下で時間をかけて凍ってゆく海が膨らんだものかもしれないと語っています。冥王星の外殻の下に海があるなら、その海が凍って膨らめば、外殻が破裂したように見える大きな裂け目ができる可能性もあるそうです。

 

また、冥王星の衛星も奇妙であることが判明しました。冥王星には、「ステュクス」「ニクス」「ケルベロス」「ヒドラ」という小さな4つの衛星があることが明らかになりました。冥王星だけに「ニクス」や「ケルベロス」といった関連した神話がらみの名前がつけられているのも面白いですね。

 

これらの4つの衛星は、科学者たちの予想を超えた奇妙な天体でした。「ケルベロス」と「ヒドラ」は、2つの小さい天体が衝突して融合したように見えます。

アメリカのSETI研究所のマーク・ショーウォルター氏は、冥王星の衛星は以前、少なくても6つはあったのではないかと語っています。

 

また、4衛星の自転の速さも科学者たちの予想以上でした。一番速いの「ヒドラ」は、10時間に1回自転しています。上記のマーク・ショーウォルター氏も、こんな衛星系は見たことがないと語っています。ニクスには、赤みがある奇妙なクレーターがあり、現在それを説明できる科学者はいません。

 

冥王星が「準惑星」となった経緯

 

学校で学んだために、多くの人が現在でも「冥王星は惑星」と思っておられるでしょう。しかし、新発見と論争の末に、現在の冥王星は「準惑星」という分類になりました。

 

ここでその論争の経緯についてみていきましょう。

 

まず、もともと冥王星というのはほかの8惑星と違う面があり、さらに明確な惑星の定義というものもなかったため、冥王星が惑星であるかどうかの論争は1992年から続いていました。冥王星は惑星と比べると「離心率」や「軌道傾斜角」が大きいので、当初から普通の惑星とは違うと考えられていました。太陽系外縁天体という認識もあり、さらに、彗星と同じ成分の氷が表面を覆っているため、微惑星の集まりともいわれていました。

 

これらの研究から、冥王星の惑星という認識が疑問視されてきました。しかし、国際天文学連合は冥王星が惑星という考えを変えず、1999年2月にはその旨を伝える声明も発表しています。また、冥王星を最初に発見したクライド・トンボーも、1997年に亡くなるまで冥王星は惑星のままにしておくべきだと主張していました。この論争が一段と激しくなったのは、宇宙の新発見によってです。近年では望遠鏡が進歩してさらにたくさんの太陽系外縁天体が見つかるようになり、このなかに冥王星と同じ大きさのものが発見されたのです。このことにより、冥王星が惑星かどうかの議論がますます激化していきました。

 

2006年の8月、国際天文学連合の総会において、惑星の定義の議論が行われ、冥王星等が惑星であるという惑星の定義に天文学者から強い反対の声が上がり、大きな見直しがなされて、「惑星」と「準惑星」と「太陽系小天体」の3つが定義されました。

 

これによると惑星の定義とは、「太陽のまわりを公転していること」

「自己の重力により球形になるくらい十分な質量があること。自己の重力で重力平衡形状になっていること」「軌道上の他の天体を排除していること」

の3つ。

 

準惑星の定義は「太陽のまわりを公転していること」「自己の重力により球形になるくらい十分な質量があること。自己の重力で重力平衡形状になっていること」「軌道上の他の天体を排除していないこと」「衛星ではないこと」

の4つ。

 

太陽系小天体の定義とは、「太陽のまわりを公転する天体のなかで、惑星や準惑星ではない天体」という定義です。この定義に照らし合わせて、冥王星は準惑星のグループに入ることになりました。

 

昨日までの定説が崩れるのが科学の世界

 

このようにして、現在では冥王星は正しくは惑星ではないということになりました。ただ、日本学術会議はIAU総会で決まった新しい定義にはあいまいな部分もあり、混乱が出る可能性があるので学校教育等では当面は積極的使用を奨めないとしているそうです。長年冥王星が惑星だと思っていた人は「なーんだ、冥王星って惑星じゃないのか」と思うかもしれません。しかし、科学という分野では今まで常識とされていた事実が突然変更することもあるので、こういったことを受け入れていくのが基本となるのではないでしょうか。

 

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