宇宙雑学

天体観測に革命を起こしたハッブル宇宙望遠鏡!

2017年9月30日

 

みなさんはハッブル宇宙望遠鏡という望遠鏡が、地球の上空を周回していることをご存知でしょうか?この望遠鏡は、宇宙の観測に革命をもたらしたとも言われている、科学者や天文学者にとって非常に重要な望遠鏡です。今回はハッブル宇宙望遠鏡について紹介してみます。

 

ハッブル宇宙望遠鏡が革命的なワケ

 

ハッブル宇宙望遠鏡は、地球の約600km上空を周回している「宇宙望遠鏡」です。

 

名前は、現代宇宙論の基礎を築いた天文学者のエドウィン・ハッブルからつけれらています。バスくらいの大きさを持ち、羽のようにしてソーラーパネルが取り付けられています。ハッブル宇宙望遠鏡の画像を見ると、トンボかなにかの生物のように見えないでしょうか?

 

ハッブル宇宙望遠鏡がなぜ革命的なのかというと、それは「地上ではできない高度な天体観測ができる」からです。地球にどのような高性能な望遠鏡を置いて宇宙を観測しても、「シーイング」という歪みを受けることになります。

 

これは、地球のような大気のある場所で宇宙の天体を観測すると、星像の位置に揺らぎが生じてしまうからです。地球からの天体観測では、観測記録で5段階か10段階の評価でシーイングを記入しています。シーイングの原因としては、大気が揺らぐことによって生まれる空気の屈折率の、わずかな変化が主なものとなっています。

 

この大気の揺れから起こる空気の屈折率変化というものは、望遠鏡の内部にあるや人の体温の対流、ジェット気流によるものまで、あらゆるところに原因があるので、地上から宇宙を高精度に観測する限界の理由になっているのです。ハッブル宇宙望遠鏡はこのシーイングの影響を受けずに観測が可能な上、観測対象の天体を細かい部分まで明らかにできたり、光を狭い範囲に集中して暗い天体も観測できることも強みです。

 

ブラックホールの存在を初めて確認したのもこの望遠鏡です

 

ハッブル宇宙望遠鏡は、「ブラックホール」の存在の確認も重要な任務でした。ブラックホールは、すこし前まで天文学的に認められていない理論的な存在でしたが、この望遠鏡によって初めてその存在が証明されました。

 

また、近頃ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「かみのけ座銀河団」で、ひときわ明るい天体が楕円銀河NGC 4889ですが、その中心には宇宙で最大の超巨大ブラックホールが眠っているとされています。NASAによれば、NGC 4889に眠る超特大ブラックホールの事象地平線の直径は、なんと約1300億kmほどで、これは海王星の公転軌道直径の15倍です。

 

われわれの銀河系の中心にも、大きなブラックホールがありますが、質量は太陽の約400万倍で、事象地平線の大きさでは水星の公転軌道直径の5分の1であり、これに比べればだいぶ小さいということになります。

 

COSMOS(コスモス)プロジェクトについて

 

ブラックホールと同じように、宇宙にあると理論上で考えられていた存在が「ダークマター」です。このダークマターの存在を確かめる「COSMOS(コスモス)プロジェクト」という計画があります。COSMOSプロジェクトはハッブル宇宙望遠鏡の基幹プログラムで、 最大の観測プロジェクトとなります。

 

宇宙では、銀河の個数密度に大きな差があり、銀河の分布が巨大な泡のように見えるという「宇宙の大規模構造」があります。銀河はなぜこの大規模構造を真似するように生まれ進化してきたのかが、大きな謎となっていました。1980年代、宇宙の大規模構造は暗黒物質「ダークマター」という物質が重力的に集って出来たのではとの説が登場してきます。つまり、ダークマターが宇宙の大規模構造を作って、その中心で銀河が生まれて進化してきたという「ダークマター・シナリオ」説です。

COSMOSのテーマは、このような銀河・ダークマターが、宇宙の大規模構造にどのように関与してきたかを確認することです。2平方度の天域を、ハッブル宇宙望遠鏡の高性能なサーベイカメラACSと、すばる望遠鏡が持つ主焦点広視野カメラ「シュプリーム・カム」を使って、可視光帯の全域に及ぶ観測を行いました。

 

また、X線・紫外線・赤外線・電波の全波長帯にも観測を行っており、ハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡のデータと共に調べることにより、 120万個の銀河の星生成の歴史、銀河の中心の巨大ブラックホールについてや、ダークマターの進化をも調べることが可能です。

 

COSMOSプロジェクトは、銀河の進化だけでなく、 宇宙進化の全てを調べる一大プロジェクトです。同プロジェクトの正式メンバーは、世界から集められた39人の研究者です。共同研究者も含めれば、約70名の研究者がCOSMOSプロジェクトに携わっていて、日本からは愛媛大学の谷口義明が正式な研究者として参加しています。

 

宇宙の果てを観測するプロジェクト!

 

さらに、重力レンズ効果を使ったハッブル宇宙望遠鏡の大計画に、「ハッブル・フロンティア・フィールド(HFF)プロジェクト」というものがあります。ハッブル・フロンティア・フィールドでは、宇宙で最も重い天体の銀河団に対し、同望遠鏡を向けて高精度の観測を行うプロジェクトです。

 

重力レンズ効果の力も使い、銀河団の背後にあるという彼方の暗い天体も検出するという、天然最高の重力レンズ望遠鏡と人工最高のハッブル宇宙望遠鏡を組み合わせ、宇宙の果てにあるという未知の天体を観測するという、人類の叡智を集合したプロジェクトと言えます。

 

2018年には、さらに高性能な「次のハッブル望遠鏡」が打ち上げられます。NASA二代目長官であるジェイムズ・E・ウェッブ にちなんで命名された「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST)」は、ハッブル望遠鏡よりも高性能化されており、主鏡の直径も約6.5m、太陽と地球のラグランジュ点に置かれることで塵の影響を抑え、より高精度の観測ができると期待されています。

 

ハッブル宇宙望遠鏡は2021年まで稼働予定

 

ハッブル宇宙望遠鏡は、これまでSF映画やSF小説でしか見れなかったことを、現実の宇宙にある存在として示してくれました。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が打ち上げられても、宇宙の観測に最初の革命を起こしたのはハッブル宇宙望遠鏡です。また、NASAによると、ハッブル宇宙望遠鏡の活動期間はさらに数年間延長され、2021年まで稼働させるプランが発表されています。ハッブル宇宙望遠鏡は2021年に活動を終えるまで、、これからもさまざまな未知の宇宙の姿を我々に見せてくれるでしょう。

 

写真引用元:ハッブル宇宙望遠鏡 wikipedia

 

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