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日本版GPS「みちびき」って何?準天頂衛星システムについて解説

2018年1月2日

 

GPS(グローバル・ポジショニング・システム)というのは携帯電話やスマートフォンなどにも

搭載されているために最近身近になっている、

画期的な位置測定システムですね。普段は何気なく使っているであろうこのGPSというのは、

実はアメリカが運営しているシステムであるということは

あまり知られていなかったのではないでしょうか?

 

では、日本にはこういったシステムがあるのでしょうか。

日本版のGPSは「みちびき」という、準天頂衛星システムです。

今年2017年10月10日には4号機が打ち上げられています!

 

ここで、この日本版のGPSである「みちびき」について説明してみましょう。

 

「準天頂衛星システム」とは?

(画像引用元:みちびき wikipedia)

 

「みちびき」は、「準天頂衛星システム」という、

日本向けに利用可能な地域航法衛星システムです。

 

これは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と内閣の特別機関である宇宙開発戦略推進事務局が、

準天頂衛星を使ってシステムの構築を目指しているプロジェクトです。

 

ところで、アメリカや日本以外にも、

世界にはGPSのようなシステムがあるのかというと、これがやはりあるんです。

 

ロシア連邦には「GLONASS」、欧州連合には「ガリレオ」、

中華人民共和国には「北斗」、インドには「IRNSS」など、

大国は自前で衛星測位システム構築が進行・計画されており、

社会インフラストラクチャーとして重要なシステムとされています。

 

このように自国で衛星測定システムを持つということは、

大陸間弾道ミサイルなどの兵器を運用するといった、国家の安全保障としても重要です。

 

ただし、人工衛星による位置測定というのは多くの衛星を打ち上げなければならず、

さらに人工衛星の寿命は10年ほどであり、常に更新しなければならないので、大きな費用が必要になります。

ということで、衛星位置測定システムを構築するには政治的意思と財務的なベースが前提となります。

 

衛星位置測定システムは、正確な精度にするためには最低でも4つの人工衛星が必要で、

さらに高精度の場合は8つ以上が必要とされています。

 

日本という国はご存知のように山間部が多く、

さらに高層ビルなどが都市部に多いため、人工衛星から電波を受信することが難しいので、

GPSでは測定できない場所もあります。

 

GPS衛星の機能をアップさせれば改善できるのですが、

アメリカにとっての費用対効果が悪いので実現可能性は低いのが現実です。

 

そこで、準天頂衛星システムではより高精度な測定を実現するために

準天頂衛星3機以上で日本の真上の軌道から測位電波を送信し、

高仰角で観測する準天頂衛星を常時1機は見通せることを目指しました。

 

そして、準天頂衛星から送られてきた信号と、GPS衛星との信号を組み合わせることによって、

測位可能な場所・時間帯を、

複数の「GNSS(Global Navigation Satellite System 全球測位衛星システム)」

の統合運用と同じくらいに広げることができます。

 

さらに、利用者は従来GPS信号を捕捉するまで30秒から1分ほどかかっていた時間を、

15秒くらいに短縮できるという見込みがあります。

 

準天頂システムは、この測位信号を受信&処理できるような改修や開発された受信機が必要となります。

また、衛星が高高度軌道にあるため、

受信側でGPS・Galileoと同じくらいの電波強度の信号を受信するため、

人工衛星はより強い電波を送る必要があります。

 

このために、衛星自体が大型化され、

衛星を打ち上げるためのロケットについても、高性能なものになります。

各準天頂衛星は衛星軌道面が異なるので、GPS衛星のように複数を1つのロケットで打ち上げることが難しく、

このようなことから準天頂衛星システムは多額の費用が必要となります。

 

「みちびき」は2018年から利用可能です!

 

さて、いよいよ「みちびき」の登場です。

 

「みちびき(QZS-1)」初号機は開発費約400億円で、2010年9月11日に打ち上げられました。

「みちびき」という名前は、この年の1月に、JAXAが公募したものから選ばれました。

 

日本のGPSという衛星なので、わかりやすい名前ですよね。

 

2017年2月28日、JAXAの運用が終了して内閣府に移管されて、

QSSという準天頂衛星システムサービス株式会社が試験運用をスタートしました。

 

「みちびき」2号機・3号機・4号機は、今年2017年に打ち上げられています。

2号機は6月1日に打ち上げられました。

初号機よりも太陽電池が小型軽量化や長寿命化などがなされています。

2号機は地上からだとまるで初号機を追いかけているように見えます。

 

3号機は8月19日に打ち上げられました。

ほかの機体と違って静止軌道において運用され、

災害時の「Sバンドアンテナ」という安否確認用サービスがついています。

 

4号機は10月10日に種子島宇宙センターから打ち上げられました。

2号機と同じ機体で準天頂軌道にて運用されます。

地上から見ると、1号機や2号機、4号機が同じ間隔でお互いを追いかけているみたいに見えるのが面白いところです。

 

「みちびき」のサービス利用はいよいよ来年2018年からスタートします。

これが、日本の衛星測位サービスを劇的に進化させるとされています。

 

ニュースなどにもなったので、ワクワクしている人もいるかもしれませんね。

 

ちなみに、「みちびき」を利用するには、対応した製品を購入する必要があります。

「みちびき」が提供予定のサービスは、それぞれに信号が違うので、

利用サービスに対応している製品が必要となります。

 

みちびきに対応したスマートフォンで利用可能なのは、

現時点で「衛星測位サービス」だけで精度はGPSと同等ですが、

みちびきは天頂近くに長時間留まるので、GPSだけを利用する場合と比較して、

ビルの谷間・山間部等においては特に位置情報が安定的に得られるようになるとされています。

 

また、「みちびき」は日本だけでなく経度の近いアジアやオセアニア地域でも利用可能なため、

これらの地域にも利用拡大を進める予定です。

 

2018年に「みちびき」が4機体制になれば、

うち3機がアジア〜オセアニア地域では常に見ることが可能となります。

また、「みちびき」はGPSと併用できるので、

GPS衛星の6機+みちびき3機で合計8機以上になることで、

より安定している高精度な測位が可能になるでしょう。

 

GPSと互換性がある「みちびき」は、受信機を安価に調達できるので、

地理空間情報を活用した「位置情報ビジネス」の発展についても期待できます。

 

ただし、この「みちびき」4機体制時でも、

ビル・山の影響で見える衛星数が減ると都市部・山間部は測位が安定しない場合があります。

そのため、都市部・山間部などでも正確な位置情報が得られるために、

日本は「宇宙基本計画」において2023年度を目標に「みちびき」7機体制を目指しています。

 

 

GPS機能がますます便利になりそうですね

 

日本版GPSの「みちびき」についてでした。

いよいよ来年の2018年からスタートするということで、

どういったものになるか楽しみですね。まだスタートするばかりなので過剰な期待は禁物ですが、

これからはもっと機能が向上していきそうですね。

 

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