広告 探査機

ニューホライズンズってどんな探査機?エイリアンにメッセージが届く?

2018年3月26日

 

「ニューホライズンズ」とは、NASA(アメリカ航空宇宙局)が打ち上げた無人探査機です。

2006年に打ち上げられたこの無人探査機、現在はどのような状況になっているのでしょうか。

また、ニューホライズンズの速度などについても紹介してみましょう。

 

関連記事:ニューホライズンズの今はどうなっているの?

 

ニュー・ホライズンズってどんな探査機?

 

ニュー・ホライズンズは、

人類初の冥王星を含めた太陽系の外縁の天体の調査をするためにNASAが

2006年に打ち上げた無人探査機です。

 

太陽系脱出軌道で土星よりも遠くへ行った探査機としては、

「パイオニア」の10号/11号、「ボイジャー」の1号/2号のみであり、

「ニューホライズンズ」はこれに続いて5機目の探査機ということになります。

 

ボイジャー1号は冥王星の観測も可能でしたが、

土星の衛星である「タイタン」を観測することを優先にしたので、

今までに冥王星を撮影したのは「ハッブル宇宙望遠鏡」等の地上の観測だけとなっています。

 

「ニューホライズンズ」は、これまで誰にも知られていない

冥王星の姿を史上初めて撮影する探査機です!

 

メリーランド州ボルチモアに本部があるジョンズ・ホプキンス大学の応用物理研究所の

チームが管制を行っているニュー・ホライズンズの打ち上げ費用は製造費や施設の利用費、

装置の開発やミッションの人件費を含めて約7億ドルとされ、

これは日本円で約800億円ということになります。

 

質量は465kgという軽量さにより、速度の向上が図られています。

フライバイ観測(後述)機であることから、周回軌道に必要な大量の燃料がいらず、

推進剤の重量も80キログラム程です。

これはグランドピアノの重さとほぼ同じとされています。

 

形は三角形で、直径2.1メートルという巨大パラボラアンテナが特徴的です。

機体は「7075アルミニウム合金」でできています。

 

冥王星は太陽から遠く離れており、目的地は非常に低温の環境となります。

そのためこの星を目指す観測機は搭載機器を守るために保温が重要となります。

 

ニューホライズンズは金色の「サーマルブランケット」という断熱材で覆われていて、

これが探査機を保温します。

各機器は必要に応じ電熱ヒーターで暖められ、作動が可能な温度に保つことができます。

 

太陽から遠くなるために太陽電池を使わず、

放射性同位体の崩壊熱を利用する原子力電池を積んでいます。

冥王星軌道から調査したデータを送信するために、64Gbit、8GB相当のフラッシュメモリを使い、

データをメモリに蓄積し、数ヶ月間で地球に送り届けます。

 

打ち上げは日本時間2006年1月12日の予定でしたが、

ロケットの点検、天気の不順等で延期されました。

 

ニュー・ホライズンズは2006年1月19日にケープカナベラル空軍基地から打ち上げられ、

その9時間後に地球から約38万kmの距離にある月軌道を通過、

1年と1ヶ月後に木星にスイングバイ(天体運動・重力を利用することで

シャトルの運動ベクトルを変える技術)しています。

 

ニュー・ホライズンズの速度は驚異的!

 

ニュー・ホライズンズはその速度も記録的でした。

打ち上げられて月軌道〜木星に到達するまでの所要期間は、史上最短となっています。

 

打ちげ用ロケットの1段目、アトラスVは補助のブースター5基取りつけられ、

これは史上最も多いブースターを使用した打上げでした。

 

打ち上げした直後の速度は地球に対して毎時3万6千マイル、

つまり約16km/s以上で、歴代探査機で最高速度でした、

これに伴って、ロケットの下段も高速となり、第2段のセントールは人工惑星となり、

第3段の「スター48ロケットモーター」は探査機から分離した後徐々に離れつつ、

同じ冥王星軌道の外側に飛んでいきます。

 

この速度は、今まで打ち上げられてきた探査機の中では太陽探査機の

「ユリシーズ」以上という最速のスピードです。

非常に速いスピードで、月や火星といった惑星のこれまでの

探査ミッション機との比較では数倍も速いという速度になります。

 

ただ、このような速度でも、冥王星に着くには10年ほどの歳月を必要とします。

ニューホライズンズが「フライバイ観測」をする理由もそこにあります。

 

惑星探査機が惑星の周回軌道に入るためには「減速」をしなければなりません。

周回軌道に入るためには、その星の重力につかまえてもらう必要があるからです。

 

非常に早いスピードで探査機を打ち上げると、目的地の惑星で減速する場合、

その分だけすごく減速する必要があります。

それだと燃料が余計多くなることで探査機が重くなって、

ロケットも大型になってしまうという問題があります。

 

逆に、急激な減速をしなくても惑星の周回軌道に入るようにするためには、

速度を遅くする必要があるので、こうなると目的地の惑星まで何十年もかかるということになります。

 

探査機の軌道では、目的の惑星に最も小さいエネルギーによってアプローチする

「ホーマン軌道」というタイプがありますが、

これはエネルギーが少なくできる反面、時間がかかることになります。

 

現在のほとんどの惑星探査機では「準ホーマン軌道」という軌道を取って、

エネルギーはそこそこに、ある程度の短時間で行くという軌道を取っています。

 

ニューホライズンズが目指す冥王星はとにかく遠いので、

まず凄まじいスピードで最初は飛ばし、軌道投入を考えず通りすがりに観測をする

「フライバイ観測」という方法をとったのです。

 

このようなニューホライズンズの非常に早い速度でも、

他の恒星系に行くことは夢のまた夢ということです。

残念ながら、人類の現在の技術はその程度です。

 

普通に考えればとんでもない速度である1秒間に14kmや20kmでも、

宇宙ではおなじ太陽系の星を目指しても何年がかりです。
ワープなどの方法は、まだSFの話、現在は空想の域でしかありません。

 

 

ニューホライズンズと「ロゼッタ」「はやぶさ2」で研究が深まる

 

ニューホライズンズは、現在稼働中の欧州宇宙機関ESAの彗星探査機である

「ロゼッタ」の彗星探査や、日本の小惑星探査機である

「はやぶさ2」が行う小惑星のサンプル採集といった活動と共に、

太陽系外縁天体についての貴重な情報が得られ、

小天体に関しての人類の知見が深まることが期待されています。

 

ニューホライズンズに積まれている紫外線分光計の分析装置「ALICE」と

同じような装置が「ロゼッタ」にもあります。

ニューホライズンズは「ALICE-P」、ロゼッタは「ALICE-R」というもので、

若干の違いはありますが基本的に同じものです。

 

そのため彗星を探査する「ロゼッタ」、

冥王星探査の「ニューホライズンズ」の両データは比較がしやすく、

ロゼッタが観測するチュリモフ・ゲラシメンコ彗星は

冥王星付近のエッジワース・カイパーベルトからのものなのかといったことや、

太陽に近い彗星・太陽から離れた冥王星には

どのような違いがあるのかという研究も可能となるでしょう。

 

 

ニューホライズンズは現在どうなっている?

 

2006年に打ち上げられた「ニューホライズンズ」ですが、

現在はどのような状態となっているのでしょうか。

 

2015年の1月15日に、ついに冥王星に到着して観測を開始したというニュースがありました。

この年の4月後半から、送られてくる画像が「ハッブル宇宙望遠鏡」

の最良のものと同じレベルとなりました。

 

冥王星軌道を通過したニューホライズンズに、

エッジワース・カイパーベルト内の他の太陽系外縁天体の探査が計画されました。

その天体は、日本の「すばる望遠鏡」も参加し捜索が行われて複数の候補がありましたが、

2015年8月に「2014 MU69」が観測目標として選ばれました。

 

2017年の日本時間4月3日、「ニューホライズンズ」は冥王星から7億8245万km先を通過しました。

これは、冥王星と次の目的地である太陽系外縁天体の「2014 MU69」

の中間点を過ぎたということになります。

 

8日には冥王星への最接近時(2015年7月14日)から

MU69に到達(2019年1月1日)するまでの、「時間の中間」に到達します。

時間上の中間点が距離上の中間点の通過より5日後になるのは、

機体の速度が少しずつ遅くなっているからです。

 

ここからニューホライズンズは157日間という新しい休眠期間に入りました。

探査機は眠っている状態で時間上中間点に着くことになります。

 

2015年の7月、冥王星最接近のほぼ半年前である2014年12月からほぼ2年半、

ニューホライズンズは稼動し続けてきました。

冥王星系のデータを16か月かけて送信し続け、

12個というカイパーベルト天体を遠くから観測し、

塵・荷電粒子などのカイパーベルト環境に関してのデータも集め、

太陽圏にある水素ガスも調査ました。

 

ニューホライズンズにも休息が必要ということかもしれませんね。

 

今後の予定としては、2019年1月にエッジワース・カイパーベルト内にある

太陽系外縁天体「2014 MU69」をフライバイ観測、その後太陽系を脱出するという計画があります。

 

プロジェクトサイエンティストのHal Weaverさんは、

「2019年1月のMU69のフライバイ観測は大きなイベントですが、

これはカイパーベルトをもっと広い範囲で探査する計画です。

MU69とさらに20個以上のカイパーベルト天体、

カイパーベルト全体の塵や荷電粒子を調べるミッションです」と語ります。

 

「ニューホライズンズは2017年4月現在、地球から57億kmという距離にいて、

通信は片道で5時間20分です。

探査機のシステムはすべて正常稼動していて、

MU69のフライバイ観測に向け正しい進にいます」ということです。

 

2017年の12月にニューホライズンズが撮影した、

カイパーベルト天体の画像が2018年2月19日にNASAから公開されました。

これは、地球から最も遠い場所で行った撮影の記録を28年ぶりに更新しています。

 

地球から約61.2億kmという距離から長焦点カメラの「LORRI」を使い、

りゅうこつ座方向の散開星団である「願いの井戸星団」を撮影しました。

この画像が、地球から最も離れた場所から撮影した歴史的一枚になりました。

ただ、ニューホライズンズはそれから2時間後にもカイパーベルト天体の

「2012 HZ84」「2012 HE85」を撮影、早くもその記録を更新しました。

 

ニューホライズンズの良好な状態を維持し、現在冬眠モードにあります。

アメリカのジョンズ・ホプキンス大学、

応用物理研究所の管制官は6月4日にニューホライズンズを冬眠から目覚めさせ、

システムチェック等を開始しMU69の接近に備えるという予定です。

 

 

ニューホライズンズの豆知識

 

ニューホライズンズには、ミッション用の機器類のほかにもさまざまなものが積め込まれています。

 

史上初であった民間の宇宙船のカ−ボンナノファイバーの一部、

アメリカの星条旗、公募から集められた43万人の名前データがあるCD-ROM、

冥王星を発見したアメリカの天文学者であるクライド・トンボーの遺灰です。

 

さらに、2014年には人類からエイリアンに向けてのデジタルメッセージを公募、

これを任務が終わったニューホライズンズに送るという計画がありました。

 

2020年頃にニューホライズンズがカイパーベルトの探査を完了した後で、

米航空宇宙局NASAが最後に、ニューホライズンズへ向け、

人類からエイリアンへ向けたデジタル・メッセージを送る予定です。

 

ニュー・ホライズンズのミッションチームは、

2007年の1月に「ニュー・ホライズンズ・キッズ」、

略して「NHKs」と称したプログラムを開始しました。

これは、ニュー・ホライズンズの打ち上げ日である2006年1月19日に生まれた赤ちゃんと、

その日10歳の誕生日となった子供を各4人から6人、合計10人から12人を選び、

その子供たちの成長を10年間、2016年まで見守ろうとするものです。

 

 

エイリアンにメッセージが届く!?

 

ニューホライズンズの速度や現在についてでした。

今回も壮大な話でしたね。

観測機器だけでなくエイリアンに向けたメッセージまで送るというらしいので、

どんなメッセージがあるのか興味がわきますよね。

(画:ニューホライズンズ wikipedia)

 

-探査機
-