「火葬」や「土葬」など、葬式にはいろいろな形式がありますが、みなさんは「宇宙葬」という葬式があるのをご存知でしたか?
もちろんあまり知らない人が多いでしょう。当然ながら、これは比較的最近開始されたお葬式です。
宇宙葬(うちゅうそう)とは?
宇宙葬(うちゅうそう)というのは、故人の遺骨等をカプセルに納めロケットなどに載せ、宇宙に打ち上げる散骨方法のことです。
世界で初めて宇宙葬が行われたのは、1997年4月21日に打ち上げられたペガサスロケットとされています。
このときの宇宙葬には、スタートレックのプロデューサーなどの24人の遺骨が格納されています。
宇宙葬という変わった散骨は具体的にどうやって行われるのか気になりますよね?
打ち上げのロケットは容積や質量に制約があるので、基本的にシリンダー状容器に遺骨を数グラム入れ、数十人または数百人の遺骨を打ち上げるという方法になっています。
2004年は150人の「散骨」が宇宙で行われました。
打ち上げロケットは費用を削減するために商業ロケットを転用しています。
ただし、「宇宙葬」という名称ですが実際はロケットの制約等により打ち上げられる遺骨は地球の重力圏から離脱せず地球周回軌道になる事が多く、現在大きな問題になっている「スペースデブリ」が増えることになるとして、宇宙葬に対して批判がありました。
もっと本格的な宇宙葬では月面・外宇宙に遺骨を打ち上げることもあります。
なにも知らない人が「宇宙葬」と聞いて思い浮かべるのはこちらですよね。
シューメーカー・レヴィ第9彗星を発見した一人であるユージン・シューメーカーが1997年に急逝しましたが、遺骨は2005年に探査機「ルナ・プロスペクター」によって月に送られました。これは、月面に遺骨が送られた初めての事例になります。
冥王星を発見したクライド・トンボーも1997年に亡くなり、その遺骨の一部は2006年に冥王星へ向かう探査機「ニュー・ホライズンズ」に搭載されています。
これが外宇宙へ遺骨が送られた初めての例です。
外宇宙・他の惑星に向かう衛星は重量の制限があるので、昔は上記のように宇宙に関連した著名人だけに限られていましたが、今では一般向けにも販売されています。
SF作品ではたびたび登場している宇宙散骨
宇宙葬はまだまだ知名度が低い散骨ですが、宇宙が舞台のSF作品ではたびたび登場することがあります。
日本ではアニメ「宇宙戦艦ヤマト」に代表されるような、宇宙船の乗員が死亡したときに行われることが多く、棺を宇宙船等から宇宙空間に流すという描写が多くなっています。
実はヤマト以外にもSFアニメで宇宙葬をしているシーンがあります。
あのガンダムでも初代では第4話「ルナツー脱出作戦」で、Vガンダムの第32話「ドッゴーラ激進」では、宇宙船から遺灰をそのまま宇宙に撒いています。
銀河漂流バイファムの第17話「さよならケイト めざせ新たなる目的地」や、惑星ロボダンガードAの第35話「永遠に輝け!父の星」などでも宇宙葬のシーンがありました。また、比較的最近のアニメ・プラネテスの第3話「帰還軌道」においても宇宙葬の話がありました。
今年行われた宇宙葬と費用(料金)
2018年の12月4日にも、宇宙葬がアメリカで行われました。ここでは日本人の遺灰もあり、都内で遺族が中継の映像を見守っています。
アメリカの「エリジウムスペース」が、大きさ1センチくらいの四角いカプセルに遺灰を納め、小型衛星に載せ打ち上げました。衛星は地球を数年間回った後、大気圏に入り燃え尽きます。
今後も、希望が一定数あれば宇宙葬を実施するということです。
なお、遺灰を納めたカプセルの代金は約30万円です。
宇宙葬は、民間の宇宙利用の拡大によって希望者が多くなり、宇宙空間に到達して地上に戻ってくるという宇宙葬はすでに行われていて、月面宇宙葬も予定されています。
また、「宇宙戦艦ヤマト」の作者である松本零士さんも、今回の宇宙葬で爪の一部納めたそうです。
SF漫画家としておなじみの松本さんも、爪の一部をカプセルに入れたそうで、自身の生前葬として行ったとしています。
今後の宇宙葬は増えていくかも
宇宙葬についてでした。
これは宇宙が舞台のアニメでは見かけますが、実際にはまだ知名度のないお葬式です。今後は民間人の宇宙進出も増え、一般的になっていくかもしれません。