宇宙で宇宙飛行士が食べる「宇宙食」は、地球上とは違ういろいろな制限があります。
では、宇宙船の無重力で宇宙飛行士は宇宙食をどのように食べているのでしょうか?
今回は宇宙食の食べ方について説明します。
宇宙船やISSは無重力状態
宇宙船やISS(国際宇宙ステーション)などで、宇宙飛行士たちが食べるのが「宇宙食」です。昔はチューブに入っていて、宇宙飛行士たちからまずいと不評だった宇宙食ですが、現在では格段に進歩を遂げ、1000種類以上のものがあるといわれています。
宇宙食は、狭い宇宙船のなかで単調なミッションを繰り返す宇宙飛行士のストレス発散という面があり、重要なものとなっています。食事でフルーツや自分の好きなものが食べられるとやはり違ってくるでしょうね!
しかし、ここで疑問が出てきます。宇宙船のような無重力空間で、宇宙飛行士はどのように宇宙食を食べているのでしょうか?
まず、普通は宇宙=無重力と想像しがちですが、これは間違っています。宇宙にも重力は存在しています。
このような誤解は、よくニュースで宇宙飛行士が無重力の宇宙船で漂っている映像などからきているかもしれません。つまり、宇宙が無重力ではなく、「宇宙船や宇宙ステーションが無重力状態になっている」ということです。
宇宙ステーションは地上400kmを周回していますが、この場合、宇宙ステーションは地球の88%の重力を受けています。それでも無重力になるのは、あの「遠心力」の影響があるからです。水の入っているバケツを勢いよく振り回しても、中の水がまったく落ちないと同じ原理で、宇宙ステーション内部は無重力になっています。宇宙ステーションが地球を周回するという時速28000kmというすさまじいスピードと重力が相殺することで、船内が無重力になっている
のです。
宇宙食はどうやって食べる?
昔の宇宙食といえば、チューブに入ったものが基本で、これを最近良くある「飲むゼリー」のように吸えばいいだけでした。しかし、現在ではフリーズドライされてパックに詰められた宇宙食が多くなっています。
これを、無重力でどうやって食べるのでしょうか。フリーズドライされたパックタイプのものは、付いている「アダプター」から水を入れて、手でもんでから上部をハサミで切り取り、スプーンで中身をすくって食べるという方法になります。
ただ、水の量・できあがる時間に違いがあって、それはラベルに表示されています。飲み物の場合、専用の容器に粉末の状態で宇宙に運ばれて、宇宙船内で水を入れて作ります。これを飲み物が飛び出さないようにクリップがついたストローで飲みます。補給船が新鮮な野菜・パン・フルーツ等の生鮮食品を運んでくることもあります。生鮮食品は味付けもしていない生のもので、こういった食品は宇宙飛行士にとってありがたいもののようです。
ただ、もちろん生鮮食品なので早めに食べる必要があります。また、食事のトレー(皿)ですが、宇宙食が浮かばないように固定するためマジックテープを利用しています。このトレーは「加熱用調理台機能付き」のものもあります。
宇宙での食事は貴重なリフレッシュに
国際宇宙ステーションで長期間の滞在をしたクルーは、食事をするのがが一番楽しみだったという人もいたようです。3ヶ月〜半年という長い時間、宇宙船のような閉鎖した場所で過ごすとき、クルーたちにとって、食事は貴重な時間なんですね。作業の合間に同僚と会話がしながら食べる宇宙食は大きな意味があるでしょう。
ちなみに、宇宙食が宇宙に運ばれるとき、必ずNAS・Aジョンソン宇宙センターの「フード・ラボ」の審査を受ける必要があります。ここで検査に受かれば、宇宙飛行士たちは自分の好きな食べ物を宇宙で食べることができます。
無重力で食べるのは難しい!?
宇宙食の食べ方についてでした。考えてみると、こぼれないようにしたり浮かばないようにしたりと、宇宙船の無重力で物を食べるというのはなかなか大変そうですね。現在では、それにも当然いろいろな工夫がなされているということでした。