東洋に伝わる「月のうさぎ」の伝承と月兎の形が出来た経緯

満月 f

 

みなさんは「月」というとどんなイメージを浮かべるでしょうか?

 

たいていは太陽が「陽」で月が「陰」、静かといったイメージですよね。また、月の模様がうさぎが餅をついているように見えるといった話も、マンガなどでも定番ですね。月には古今東西、文化があるようです。

 

今回は、その中から、主に東洋に伝わる「月のうさぎ」の伝承について紹介しましょう。

 

 

月からイメージするものは?

満月と皆既月食 f

 

月はわたしたちの地球で唯一の衛星で、もちろん太陽系でもっとも地球から近い天体、また「アポロ計画」によって人間が到達した唯一の宇宙の天体です。ところで、月といえばなにを連想するでしょうか?

 

月については、大昔から世界各国で文化的な伝承がありました。日本や中国で9月ごろに月を愛でる「お月見」もおなじみですね。最近では、大手のハンバーガーショップで「月見バーガー」なるものも販売されますね(笑)

 

 

 

アポロ11号の宇宙飛行士も語った

 

しかし、月といえばやはり「うさぎ」ですね!月を見ると、うさぎが餅をついているように見えるということがアジアの各地で昔から語られてきました。日本や中国では、このうさぎを玉兎(ぎょくと)や月兎(げつと)などと呼んでいます。

 

うさぎの横にある影があの餅をつく「臼(うす)」とされていて、日本では餅ですが、中国では不老不死の薬を作っているとされているのです。古代インドでは、月の別名としてうさぎに関連した言葉が使われています。

 

ミャンマーでも、絵画に月とあわせてうさぎが描かれていて、こういった絵が各地で描かれていたのではとされています。タイにおいても、月にうさぎが住んでいるという言い伝えが絵画にもなっており、タイ東部のチャンタブリーという県では県章に「月のうさぎ」デザインされています。

 

また、アメリカにもこの伝承が伝わり、人類初の月面着陸に成功したアポロ11号の宇宙飛行士が月のうさぎについて語ったという記録が残っているそうです。

 

 

インドの仏教思想にルーツがあった

 

月のうさぎについての物語は、インドのジャータカという仏教思想に書かれています。ここで、このお話を紹介しましょう。むかしむかし、うさぎ・山犬・サル・カワウソが住んでいました。

 

うさぎは、明日の精進日(しょうじんび・身を清めて困っている人を助ける日)には困っている人を助けようと提案すると、みんなが賛成しました。精進日。カワウソはコイを、山犬は肉と牛乳を人間から盗むような形でもらっていき、サルはマンゴーの実を集めて帰りました。

 

しかし、うさぎはなにも見つけられてませんでした。天上の神様は、このことを知ってお坊さんになって動物たちの家を訪ねました。山犬・サル・カワウソはそれぞれとってきた食べ物を出しましたが、うさぎはなにもなかったので、自分の身を食べてもらうため、火を起こしてもらうよう頼みました。

 

神様がそうすると、うさぎは自分から火の中に飛び込みました。しかし、うさぎは燃えません。神様は、「お前の徳を後世に語れるように記念を残そう」といって山をつぶして、その汁で月にうさぎを描いたそうです。

 

この話が日本に伝わり、「今昔物語」にも同じような話として収録されました。また、これらと直接伝来の関係があるのかは不明ですが、同じような話がメキシコの民話にもあります。

 

ケツァルコアトル神が地上で人間として旅をしていたとき、飢えで死にそうになると、うさぎがやってきて自分を食べ物としてさしだすと、ケツァルコアトル神はうさぎを月に上げてから地上に戻し、「お前の姿は月の中に残るので、いつでも誰でもお前を思い出すだろう」と語りました。

 

このような月にうさぎという伝承・説話の影響で、日本のさまざまな創作物に、月に住むうさぎが描かれてきたのはご存じの通りですね。

 

 

現実ではいつあの形ができた?

 

では最後に現実的なお話。

 

2012年10月29日、 日本の産業技術総合研究所が月周回衛星である「かぐや」の収集したデータを分析すると、あの月のうさぎの形は、39億年以上前に、巨大隕石の衝突によって「プロセラルム盆地」が誕生したことでできたということが証明されたそうです。

 

 

メキシコにも同じ話があるのが興味深い

 

 

月のうさぎの伝承についてでした。いやあ、あの月のうさぎにはこんな伝承があったんですね。インドのジャータカという仏教思想や、そこから伝わった日本の「今昔物語」などから、直接これらとつながりがあるか不明ですが、メキシコにも同じような話があるというのが興味深いですね。

 

うさぎの自己犠牲の精神というのは、なんとも感動しますね。

 

 

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