古今東西語られてきた月神を紹介!

2018年4月28日

 

月は地球の衛星であり、私たちにとって地球以外では太陽の次に身近な天体といえるでしょう。

 

天気の良い日で夜になれば、満ち欠けの違いはあるものの、たいていは月が見れますね。

ということで、月は古今東西、人間といろいろな関係がありました。

世界中で月を神様に見立てた「月神」の記録があるので、ここで紹介してみましょう。

 

月が地球に与える影響

 

月は地球からもっとも近い天体で、地球の唯一の衛星です。

「アポロ計画」によってこれまでに人間が唯一着陸したことがある天体でもあります。

 

地球からでは「太陽」の次に明るさがあり、

色は白く見えますがこれは太陽の光が反射したものです。

 

よく聞かれることですが、月の重力が地球の海の潮の満ち引きを起こしています。

太陽の重力もこの潮汐作用がありますが、月よりも遠いので月の潮汐力の半分くらいの力になります。

 

この潮汐作用で地球の自転は10万年に1秒遅くなるそうです。

重力から地形が変化することで、月と地球の距離は年間で3.8センチ離れているんだそうです。

これはちょっと初耳だった人もいるのではないでしょうか?

 

古今東西の世界における「月神」を紹介

(セレーネーとエンデュミオーン/wikipedia)

 

肉眼で誰でも観測できるために、

私たち人間にとって太陽のように身近な存在の月は、古代の時代から人間と関係があります。

 

古代ギリシアでは、人々は月の観察から地球は球体だと考えていました。

ヨーロッパの伝統文化では昔から太陽と同様に神秘的な存在とされて、

太陽が金色、月が銀色とされてることが多く、

人間を狂わせるとして「ルナティック」という言葉もあります。

 

太陽も「太陽神」などとされて神格化されていますが、

月も「月神(げっしん)」となって神格化されています。

 

太陽神は権力などと関連付けされますが、月神は性や命などと関連付けられています。

 

太陽は一日の周期がありますが、月は一ヶ月の周期ということから、

女性の「月経」と関係付けられています。

 

また、「月」といえば「女性」を連想する人も多いかもしれません。

月神でも、古今東西の神話の多くが女神として登場しています。

 

ギリシア神話において、月の女神は「セレーネー」でしたが、

「アルテミス」「ヘカテー」とも同一視されるようになり、

月の満ちて欠けと同じように3つの顔がある女神と認識されるようになりました。

 

セレーネーは黄金の冠をし、額に月をつけている絶世の美女で、

銀の馬車に乗り夜空を走り、柔らかい月光の矢を放ちます。

「月経」と月の関連で性生活や繁殖、また魔法と関係しているとされました。

 

エンデュミオーンという美青年を愛した彼女はゼウスに願い、

エンデュミオーンに永遠の眠りを与え、

その夢の中でセレーネーは彼との娘を50人生んだそうです。

 

ローマ神話では、「ルーナ」が「セレーネー」と、「ディアーナ」が「アルテミス」

と同一とみなされ、2つの顔がある月神とされました。

 

また、英語等ではセレーネーからselen-やseleno-といった月を表す接頭辞があります。

 

中国の神話では「嫦娥(じょうが)」という月神が登場します。

 

紀元前の前漢の時代、劉安という皇族が学者たちを

集めて作らせた思想書「淮南子(えなんじ)」によれば、

仙女だった嫦娥が地上に降りて不死ではなくなったので夫の不死の薬を飲んで月に逃げ、

ヒキガエルになったという話があります。

 

道教でも嫦娥を月神として、

「太陰星君」や「月宮黄華素曜元精聖後太陰元君」等と呼んで、

中秋節(日本では十五夜)に祀っています。

 

日本神話では「ツクヨミ」という月神が登場します。

古事記・日本書紀では伊弉諾尊(いざなぎ)によりツクヨミが生み出されたと言われています。

月を神格化し、夜の神と考えられています。

 

天照大神(あまてらす)の弟で、須佐之男(たけはやすさのお)の兄とされていますが、

スサノオと同じエピソードが重なるために、一部で同一神説もあります。

 

ツクヨミは古事記においてイザナギが黄泉国から逃げてから禊ぎをした際に右目からできたとされ、

片方の目からは天照大神が、鼻からは須佐之男と三神が生まれたとされます。

 

日本書紀では、イザナギとイザナミの間の子という話や、

「白銅鏡」から出できたたという話もあります。

 

インカ神話では「コニラヤ」という創造神で月の神がいます。

 

力が強い神で、言葉を言うだけで村や畑を創り出し、

アシの花の一種を投げて耕地に水を送る灌漑用水路を作ったとされます。

ふだんは汚い衣をまとっており、正体に気付かない人たちから軽蔑されています。

 

エジプトの知恵を司る神「トト」も月に関連しています。

 

王族民間問わずに長い間多くの地域で信仰を集めており、

知恵の神や時の管理人、創造神等として祀られ、

神殿の中にはトートの神殿も一緒に建造しているものもあります。

 

日本でも、トトはトキまたはヒヒのいずれかの姿で有名ですね。

 

天空の女神ヌトが太陽神のラーから子供を産むことを禁止されトトに相談します。

トートは月との賭けの勝負に勝って、「時の支配権」を手にします。

 

ここで、太陽神ラーの管理できない日を5日間を作り、これが太陰暦・太陽暦の差になります。

 

ヌトはこの間にオシリス・セト・大ホルス・イシス・ネフティスという5柱を生んとされています。

 

トートはこれで月の属性を得たため、太陽が沈んだ夜の時間では、

トートが太陽にかわり地を守護するとされています。

 

インドでは、様々な神が時代ごとに存在していました。

 

インドの「ヴェーダ」で月の神として登場するのは「ヴァルナ」という神で、

元は宇宙の君主でしたが、神格分離の際に、夜を守護する月の神になりました。

 

後に「インドラ」神の時代では、「ソーマ」という月神になります。

 

ソーマといえば「ソーマ酒」が有名ですが、

これはインドラに力を与える酒のようなもので、

ここから「ソーマ」は万病を治して富を与えるという「神」になりました。

 

ソーマの作り方は、搾って液とる方法のために「濾し器」が天空それ自体、

その液「ソーマ」は雨と結びつく「水の神」になって、

水と月は潮汐現象で関係があるので「月神」へと結びついたとされています。

 

「ソーマ」が月神になる以前「チャンドラ」という月神がいましたが、

これらが同一視されて「チャンドラ」と「ソーマ」は元は同じということになりました。

 

メソポタミア神話に登場する「シン」は、男神の月神です。

シュメール人が住む都市「ウル」の主神で、人名の一部として使われることも多くなっていました。

ウルと並び、メソポタミア北のハランも「シン」を祭る中心地でした。

 

メソポタミアではシンが月を司る神で、

また大地・大気の神とも信仰されていました。

 

月の規則的な満ち欠けの性質から「暦の神(将来の運命を決める)」ともされ、

月が欠けては満ちることから、「豊穣神」としての面もあったと考えられています。

 

また、シンのシンボルは三日月のために、

三日月に近い角を持った雄牛と関係が深いとされています。

 

 

天体観測から神話の世界へ

 

古今東西の世界中に伝わる「月神」についてでした。

世界各地で太陽も神格化されているように、月もまた神格化されているんですね。

 

現在でも、このような天体を神とするのは、感覚としてわからなくないですよね。

太陽や月が神格化されるのは、古今東西人間にとってはやはり、

太陽や月という目に見えて巨大な存在に畏敬の念を強く感じたからではないでしょうか。

 

こうやって月という身近な天体から、過去の神話の世界を調べていくのも面白いですね。

 

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