木星

天体同士の衝突は人類初目撃!シューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に衝突

2020年4月20日

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したシューメーカー・レヴィ第9彗星 wiki

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したシューメーカー・レヴィ第9彗星 wiki

 

1994年の7月、木星のシューメーカー・レヴィ第9彗星が衝突していたというニュースがありました。普通の人の多くが「それで?」と思うかもしれませんが、太陽系の天体がほかの天体と衝突した事実を人類が確認したというのはこれが史上初だったんだそうです。

 

しかも、これを世界で最初に予報したのが日本人だったということも興味深いところです。今回はこのお話についてみていきましょう。
 

シューメーカー・レヴィ第9彗星の発見

 

シューメーカー・レヴィ第9彗星は、衝突が確認される前の年の1993年3月24日、パロマー天文台によって発見されました。この名前は、発見者のユージン・シューメーカーとキャロライン・シューメーカーという夫妻と、デイヴィッド・レヴィからつけられています。普通の彗星と違い、彗星核が長さ1分くらいの棒状として、その中には複数の光る点が見えました。発見してからすぐ、観測データによって軌道計算されると、興味深い事実がいくつか判明しました。

 

この彗星は木星の周回軌道を通っていて、このような彗星が惑星に捕まる現象が観測されのたはこれが史上初でした。軌道を計算したところ、1917年には土星に近づき、太陽系の内側に軌道が変化、1960年には木星に捕獲されて、後の1992年7月ごろには、木星にさらに接近していたようです。

 

この接近時に「ロッシュ限界(惑星/衛星が壊されずにその星に近づける限界距離)」を突破し、潮汐力で核が砕けることで、21個以上の破片が連り、棒状に見えた原因となりました。

 

木星に衝突することを予測した日本人 中野主一氏

木星に残った衝突痕 wiki

木星に残った衝突痕 wiki

 

実は、シューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に衝突することを最初に予測したのは日本人だったということをご存知でしょうか?予測したのは、日本の天文計算家である中野主一さん。同氏は、1994年7月頃にシューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に衝突すると予測し、そのとおりに1994年の7月16日にA核の衝突、7月22日までには分裂した核が高速で次々に木星に衝突しました。

 

これを地球から直接観測することできませんでしたが、衝突する時の閃光、木星の衝突の痕は観測ができました。この木星にできた最大の衝突痕は、個人用の天体望遠鏡で見てもはっきりとわかるくらい大規模なものでした。

 

7月18日に衝突したG核は最も大きな衝突痕を作り、この最も大きな衝突痕はなんと直径12000kmという、ほとんど地球と同じ多きさにもなり、真ん中に直径2500km程の黒点があり、その周囲を直径7500km程の暗めなリングができています。さらに、7500㎞という巨大なキノコ雲も形成されました。

 

この爆発の力は、地球にある核兵器をすべてが爆発した時のエネルギーの600倍というものすごいものでした。この衝突で、木星の大気の下層部にある物質が上層部に湧き出て、二量体の硫黄・二硫化炭素が初めて検出されました。

 

大きな衝撃を受けた当時の天文界

 

当時は太陽系で最大の木星に彗星が衝突しても大きい変化はないという予測もされていたために、研究者・天文ファンは大きい衝撃をうけました。これは最近の天文界ではもっともショッキングなもののひとつでとされていて、太陽系の内部に近づいてくる小天体を防御してくれるという、木星のあまり知られていない役割を象徴した出来事でもありました。

 

また、巨大な天体が衝突することの可能性から、地球近傍天体の監視を強化することを考えるきっかけにもなりました。この衝突が起きた1994年は、白亜紀の恐竜などの大量絶滅が宇宙からの隕石の衝突のためであったことが判明した時期で、さらに、地球近くの天体を観測する技術も向上し、毎年30~50個という地球近傍天体が見つかっていたことなど、地球に天体が衝突することについての対策が真面目に議論されていました。

 

そんななか、この衝突直後の第22回国際天文学連合総会で、国際天文学連合と関係しながら独立の対策グループ「スペースガード財団」が創設されています。

 

天体観測はどう変わった?

 

昔から天体観測者たちの間では、新天体を発見したり、彗星を発見することは主な目標であり、このころまではアマチュアの天文家が多大な貢献をしていましたが、シューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に衝突したことで、地球に天体が衝突することが現実問題として考えられました。

 

この対策のために、学術機関が積極的に観測をスタートし、自動観測技術や、人工衛星の写真分析等もあり、これ以降は個人での彗星や小惑星の発見は難しくなりました。そのため、天体の発見者になることを目指していたアマチュア天文家は、観測する対象を変える人も多くなったそうです。

 

地球サイズの痕はすごいですね

 

シューメーカー・レヴィ第9彗星の木星衝突事件についてでした。当時を知っている人なら、一度は名前を聞いたことがある彗星ですよね。たぶんニュースにもなっていたんでしょう。しかし、地球と同じサイズの痕ができたというのがすごいですよね。

 

また、木星は太陽系内部に近づいてくる小天体を防御してくれるという役割もあったんですね。恐竜の絶滅の原因でもあった彗星は、地球にとってもすごい脅威ということですね。

 

-木星
-