「UFO」といえばおなじみの未確認飛行物体ですが、アメリカの情報機関ではUFOは「UAP」という名称に改名されたそうです。このたび、このUAPの正式な報告書がアメリカのODNI(国家情報長官室)から公開されました。アメリカの国防総省も、いよいよ「UAP」について調査に乗り出したようです。
この報告書は非常に長い文章なんですが、興味のある人は「待ってました!」という感じかもしれません。今回はこの「UAP」の報告書についてです。
この記事の目次
未確認空中現象「UAP」とは?
みなさんは「UAP」という言葉をご存じでしょうか。たぶん、ほとんどの人が知らないのではないでしょうか。「UFO」といえばおなじみ、未確認飛行物体ですよね。これは「 unidentified flying object」という英語の略です。
アメリカの情報機関では、このUFOを「UAP」という名称に改名したそうです。意味は「未確認空中現象」で、「Unidentified Aerial Phenomenon」という英語の略だそうです。このたび、アメリカの情報機関、ODNI(国家情報長官室)が、「UAP」の報告書を公開しました。
これは非常に長い、いかにもまっとうな報告書となっていて、UFOファンの人は必読でしょう。ここでこの報告書について説明します。この報告書は、2004年〜2021年まで主にアメリカ軍内で記録した「UAP」の目撃や観測の事例、144件についてアメリカ国防総省「UAPタスクフォース」が詳細に調査したものです。
アメリカ政府機関もUFOを調査していると認めた
これまでの歴史の中で、未確認飛行物体はたびたび目撃報告がありました。1950年代、アメリカ空軍がこのような事象を「UFO」と呼称するようになりました。「宇宙人の乗り物」といったSF作品のイメージが、現在のUFOのイメージですね。アメリカ軍がUFOを調査していた公式記録はありましたが、この調査に関わっていた職員が、3つの動画をメディアに公開しました。
動画は2004年〜2015年間のもので、空母ニミッツや戦闘機が撮影しました。高速移動している正体不明物体を、パイロットなどの数名が数分間目撃し、いくつかのセンサーにも記録が残りました。この動画は世界で話題になりましたが、「UFOビデオ」に慣れた人たちは特に動揺せず、ニューヨーク・タイムズは「UFO陰謀論者にお墨付きを与える怪しい動画」と非難しています。
しかし、その後、アメリカの国防総省はUAP調査計画を公的に認め、この動画を正式に公開しています。報告書はこれを受け、「UFO」の調査と国防上リスクについて、国家情報長官室が予備的評価を伝えるために作成したものです。報告書は分析の結論というより、現状の把握や情報収集はについて、今後の方針についてを伝える内容です。
では、いよいよこの報告書の内容を紹介しましょう。
UAPを5つのタイプに分類
報告書は「識別不能飛行現象に関する予備報告書」という題名でODNI(国家情報長官室)が2021年6月25日に公開しました。これは、米国防長官(SECDEF)との協議し、「UAP」が及ぼすかもしれない脅威についてインテリジェンスサイドとしての所見を語り、国防総省識別不能飛行現象タスクフォースによる脅威確認作業が現在どのように進捗しているかを盛り込んでいます。
報告書は、UAPの調査で壁となっているものを議会に説明し、アメリカ軍とアメリカ政府の人間がUAPに遭遇したときの対応を示し、諜報諸機関のUAPの認知の向上を図っています。2004年4月〜2021年3月の間にアメリカ政府に報告された事例を基本データとして、DIA(国防情報局)やFBI(連邦捜査局)、NRO(国家偵察局)などの重要な機関から、アメリカの陸軍・空軍・海軍という軍まで、アメリカの主要機関が数多く情報を提供しています。
このような政府の機関が考えるUAPは、有意義な報告が少なく、これがUAPについて結論を出す妨げになっているそうです。分析するには具体性に欠けるため、報告されたものの整備が必要と認識。報告の検証をすると、それらはレーダーや赤外線などによって検知されたものがほとんどのため、UAPの多くは物理的実体をもっている可能性があるとしています。一部には通常では考えられない飛行をしていたという報告もあり、これらはさらに詳しく分析する必要があるとしています。
これらのことから、UAPは複数のタイプがあるとし、これを
・空中障害物
・自然大気現象
・アメリカ政府や産業開発のプログラム
・敵国のシステム
・その他
という5つの分野に分けました。
依然として残る難しさ
報告書では、依然として残るデータ収集の難しさとして、
・社会文化的スティグマ
・センサの限界
を挙げています。
スティグマとは、「負のレッテルを張られてしまうかもしれないという恐怖心」のことで、要するに昔も今もUFOなどの話をすると社会的な評価に関わるかもしれない考えるため、あるはずの目撃報告が減少しているとしています。また、センサはUAPの調査には不向きで、光学センサ・ラジオ波センサはこの点について評価されています。このように、現状のUAP調査は詳しく分析できないものの、UAPの形状や推進力などには特定のパターンをもつ傾向もあるとしています。
高度な動作をしているUAPも!?
ここが興味深い点ですが、このなかで高度/異常な動作をするUAPの飛行が18件報告されていることです。その物体は、風のなかでも静止状態で、向かい風でも動いたり、マヌーバーしたり、高速移動していますが、識別できる推進エンジンは見当たらなかったそです。
また、少数のケースでは、UAPの遭遇に伴ってラジオ波が複数の軍用機システムによって捉えられました。UAPタスクフォースでは、加減速・シグネチャマネジメントをしたUAPのデータもわずかながら保持しています。これには、技術の専門家部会での分析が必要になるとしています。ブレイクスルーのような技術があるのかどうかの確認をODNIでもしているそうです。
UAP調査の今後は
今後については、AI/機械学習アルゴリズムを導入し現象を分類、データポイントをもとに、類似点・パターンを識別するとしています。気象観測用気球・高高度気球・野生動物といった情報が十分集積されれば、機械学習によってUAPレポートをアセス、データベースに保存されているイベントと一致するか確認することが可能になり、作業効率が向上するとしています。最後に、この研究には投資が必要という説明があります。
本当に現状では説明できない報告もあった!
アメリカのODNI(国家情報長官室)が公開した未確認空中現象「UAP」の報告書についてでした。長い文章でしたが、やはりデータが少ないなどでまだ詳しくはわからない、という感じでしたか。ただ、少数ながら高度・異常な動きをしていたUAPもあったというのが興味をそそりますね。
「スティグマ」という言葉がありましたが、やはり向こうの人たちも、そういった「UFOなんて公の場で言ったら」みたいなものがあるんですね。「UAP」という名称が変更になったのも、そういったことが関係しているのかも!?
「理解不能なものはなにもなく、あるのは人間の認識不足だけだ」という見解があります。理解不能なことをオカルトと一言で片付けずに、こういったものを科学的に研究することが大事かもしれません。そういった意味で、いよいよこういったUAPについてのまじめな報告書が出てきたのはよいことでしょう。
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