現在、人間は宇宙にまで進出しかけています。
ただ、人間が宇宙で生活するにはまだまだ多くの問題が残されています。
たとえば他の惑星に住もうとしても、
地球とは環境が大きく違っているため、かなり厳しいというのが現状です。
ここでは、人間が住める場所である「ハビタブルゾーン」についての説明や、
火星の「テラフォーミング」やその利点にについてご紹介します。
この記事の目次
生命が生きられるハビタブルゾーンとは何?
(画:火星 wikipedia)
「ハビタブルゾーン」という言葉があります。
ハビタブルというのは英語で「生存可能」という言葉、ゾーンは「領域」という言葉で、
「ハビタブルゾーン」とは宇宙で生命が生まれるために適している環境とされている、
天文学上の領域のことをいいます。
日本語でいうと「生命居住可能領域」という言葉になり、
別名で「ゴルディロックスゾーン」と呼ばれることもあります。
人間を含めた多くの生き物たちが存在している地球と比較し、
地球の環境と似ている環境であれば、その星へ人間が移住することや、
生命の発生、その進化もできるのではという仮説に基づいた宇宙空間の領域のことをいいます。
考慮される環境は、他の天体より放射されるエネルギー量・星間物質の量等です。
天文学者は「惑星系ハビタブルゾーン」や「銀河系ハビタブルゾーン」等を考えています。
惑星のハビタブルゾーンは、その恒星までの距離で範囲が決まるため、
太陽系では太陽からの距離が問題となります。
条件は太陽から近すぎず遠すぎない場所であり、
地球のように惑星の表面温度が生命が生活するのに適していて、水も確保できる場所となります。
太陽系のハビタブルゾーンは、
太陽からの距離が1億3500万km〜2億2500万kmの間ということなります。
地球は太陽から約1億5000万kmの距離にあるので、当然その範囲内に入っています。
ハビタブルゾーンの条件は?
上記のようにハビタブルゾーンの条件としてはまず、
その恒星・中心星からの距離が近すぎず遠すぎず、惑星の表面に水が存在していることです。
また、広義には水だけではなく、メタン・二酸化炭素が液体の状態で存在している領域も含まれます。
このいずれもが液体に有機物が溶け込んで、
蒸発・降雨等により凝集が起こることに重要とされています。
生命の存在だけでなく進化に適した領域は「ゴルディロックスゾーン」といいます。
しかし、単に惑星がハビタブルゾーンに
あるということだけでは条件として不十分という説もあります。
アメリカのイェール大学の是永淳氏の研究では、
惑星ができた時点の内部温度も、重要になるとされます。
もともと地球のような惑星の内部温度は、
マントルが対流することによって自己制御が可能と考えられてきました。
自己制御があれば、惑星が誕生した時に超低温・超高温であったとしても、
だんだん適温に落ち着いていくでしょう。
ただし、地球の進化に関してデータから数値シミュレーションをした研究では、
地球型惑星はマントル対流の効果はわずかなものであったことが示されました。
地球型惑星は巨大な衝突を繰り返してできたと考えられていて、
その場合は惑星の大きさ・内部温度はとても多様なものになります。
マントル対流の温度調節があれば惑星も適温になるのかもしれませんが、
そうしたことは起こらず、地球は誕生した初期からある程度の
適温だったのかもしれないと是永氏は語ります。
火星をテラフォーミングするには人工衛星を引っ張ってくる?
人類が将来火星に移住するために、火星を「テラフォーミング」する可能性が論じられています。
「テラフォーミング」とは、惑星の環境を人工的に変化させて人類が
住める星として改造することをいいます。
「地球化」とも言われるこの言葉は、
アメリカのSF作家であるジャック・ウィリアムスンが1942年に出版された
「コリジョン・オービット」シリーズで使った造語が語源とされています。
SF小説からできた言葉ですが、現実にテラフォーミングに関した研究・試算が発表されています。
その後、1961年にアメリカ・カリフォルニア大学のカール・セーガン氏が、
「金星の環境改造」に関しての論文を発表しました。
これを境に世界中の研究者たちも、惑星の環境を改造するという
大きなテーマを真剣に考えるようになりました。
現在、テラフォーミングについて論じられている惑星は火星です。
なぜなら、火星は地球から近い惑星であり、1日の長さもほぼ24時間、季節も存在しているからです。
ただし、太陽との距離が地球より大きい火星を人間が住めるように作り変えるためには、
薄い大気を程よく濃厚にし、気温を上げることが重要になります。
このたび、火星をテラフォーミングするために人工衛星を
引っ張ってくるというすごいアイデアが発表されました。
火星は地球より外側の公転軌道を周っていて、
これが太陽系のハビタブルゾーンからちょっとだけ外れているとされています。
いくら地球から近いといっても、
火星の寒い環境・大気の薄さは、人間には非常に住みにくいことは間違いないでしょう。
そこで、なんと「地球と同じ公転軌道に火星を持っていけばハビタブルゾーンに入るのではないか」
というおどろきの案が出てきました。こうすることで、地球と火星の距離が近くなり、
往復もしやすくなるというメリットもできるということです。
でも、どうやってそんなことを?と考えるでしょう。
その方法として、なんと「人工衛星の引力で火星を徐々に引っ張る」というものです。
こうして火星をハビタブルゾーンに入れれば、火星のテラフォーミングを速くすることができるとか。
天体物理学者のニール・ドグラース・タイソンは、
まず人工衛星の引力で小さい隕石の軌道を変化させていき、
徐々に大きな隕石を動かすといったことを続けていくと語っています。
しかし、天体の軌道を操作すれば、予期しない変化が起こる可能性も考えられます。
さらに、地球の10分の1とはいえ、火星の質量ほどのエネルギーを、
一体どうやって生みだすかについてはまだ考えられていません。
とても興味深いアイデアですが、やはり実現の可能性はかなり低いかもしれません。
テラフォーミングの利点(メリット)とは?
(画:テラフォーミング wikipedia)
太陽系の惑星のなかでテラフォーミングに最も適しているのは火星ですが、
それでも実現はかなり厳しいものがあります。
普通の人なら、そもそも1つの惑星をその環境ごと変えてしまうといったことが
原理的にできるのだろうか、と考えるでしょう。
しかし、工学的に決して不可能ではないと専門家の間では考えられています。
人工衛星で引っ張るというのはおどろきのアイデアですが、
それ以外に考えられている方法を紹介します。
まずは、火星のマイナス40度もするという火星の平均気温を変える必要がありますが、
その方法としてはメタンのような炭化水素を配布、
それに加えて衛星軌道上に巨大なミラーをつけた人工衛星を置いて、
太陽の光を増幅させるといった方法が考えられています。
また、人工的に磁場を作り、太陽や宇宙の放射線を防ぐという考えがあります。
方法としてはこれも軌道上に磁気シールドを置くというものです。
さらに生物が住むには酸素と水も必要になります。
これには、火星の氷をとかして雲をつくり、
水蒸気によって雨が降って川などができて、酸素も同時に作ることができます。
火星の環境を変えるために「藻類」を利用するという考えの研究者もいます。
藻類は地球に酸素をもたらして、環境を変化・維持させてきました。
火星の大気が暖かくなり、水も維持できるようになったら、藻類を持ち込むことで、
火星の大気に酸素をもたらせるかもしれないと考えています。
そのために、火星で藻類を育てられるように品質改良したりするなどの、
遺伝子工学的な研究も必要となってきます。
このように、現実的に火星をテラフォーミングするとなると、
とんでもなく巨大な技術が必要で、実現までに数百年単位という時間が必要とされています。
こんな大変なことをしてまで火星をテラフォーミングする利点としては、
地球の深刻な環境問題の解決策のひとつとなるためです。
ご存知の通り、人間の人口増加が急激に進んでいて、
このままでは地球がもたないとされています。
食糧不足や温暖化が進み、それによって世界で紛争が起こる可能性もあります。
そのために「第二の地球」として火星のテラフォーミングが考えられています。
火星のテラフォーミングがいつか実現できる!?
「ハビタブルゾーン」、そして火星の「テラフォーミング」やその利点についてでした。
地球環境のためにハビタブルゾーンを探したりテラフォーミングが必要なのですが、
現実にはかなり大変となっています。
SF小説のように、人間が火星に住める日が来るのでしょうか?