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NASA、火星で「インジェニュイティ」というヘリコプターの飛行に成功

2021年5月6日

インジェニュイティ wikipedia

インジェニュイティ wikipedia

 

NASAの探査機「Perseverance(パーシビアランス)」が今年2月、火星に到着したことは前回紹介しましたが、今年4月19日、パーシビアランスに搭載されていた「インジェニュイティ」というヘリコプターが、史上初の地球以外の天体での飛行に成功したそうです!

 

今回はこのお話についてです。

 

火星で飛んだヘリコプター「インジェニュイティ」

 

今年4月19日、NASAの火星探査機「Perseverance(パーシビアランス)」に積んであった「インジェニュイティ」というヘリコプターが、火星で初飛行に成功しました。ちなみに、この「インジェニュイティ」というのは、英語で創意工夫という意味になるそうです。

 

インジェニュイティが火星に飛行することは、今後の火星探査・科学研究の技術検証になるでしょう。4月8日に実施される予定でしたが、回転翼のテストで問題発生したため、延期されていました。

 

NASAのジェット推進研究所が、19日に火星でこのヘリコプターが初めての飛行に成功したというデータを受信しました。ヘリのチームが「離陸・上昇・ホバリング・降下・着陸したことを送られてきたデータで確認した」と報告すると、管制室に歓声がわきました。

 

さらにその後、管制室にインジェニュイティのカメラが映した画像や探査車が映したヘリの飛行する動画が届きました。

 

インジェニュイティは直径1.2メートルの回転翼が2枚あり、太陽光発電パネルで電力を得ています。火星の大気は地球の約1%と非常に希薄なので、毎分2500回転以上の高速回転で飛行するそうです。

 

高度計のデータでは、計画の通りに、火星地表3メートルの高さに飛び、そこから30秒間、空中にホバリングすることに成功しました。インジェニュイティには、あの人類史上初の飛行機を作ったライト兄弟に敬意を表し、1903年にライト兄弟が初飛行した「ライトフライヤー号」の翼の一部が搭載されているそうです。

 

 

この歴史的な初飛行の舞台になった場所を「ライトブラザーズ・フィールド」とし、「ライト兄弟の初飛行と今回の瞬間は、時間と1億7300万マイル(約2億7800万キロ)という空間に隔てられていますが、今では永遠につながっている」と NASAのトーマス・ズルブチェン科学副長官は語っています。

 

火星でヘリが飛ぶ難しさ

 

火星でヘリコプターを飛ばすというのは、実は非常に難しいのです。上記にもあるように、火星の大気は非常に薄く、地球の高度3万メートルと同じほどの薄い大気だからです。ちなみに、これまで地球でヘリコプターが飛んだ最高高度は、1972年に、フランス人がマルセイユで記録した1万2440メートルです。

 

なぜ大気が薄いとヘリコプターが飛びにくいのかというと、ローターでヘリを制御するのが難しくなるからです。また、センサーが問題を起こしたり、強い風が吹く等、問題ができれば、ヘリコプターは地面に落ちてしまうでしょう。ヘリコプターを火星で飛ばすという計画は、実は1990年代からあったそうです。

 

しかし、現在までバッテリー性能の向上、コンピューター小型化、ローター部分の素材開発等の、技術が進歩するまで実現しませんでした。インジェニュイティは毎分2500回転でローターを高速回転させますが、機体を安定させるには、自動運転車の技術で、自律制御をする必要があります。飛ばない間でも、火星のマイナス90℃という夜を乗り切らなければなりません。

 

これには、特別調節した小さい太陽光パネルによってバッテリー充電をして、モーターや機体を温めるヒーターを動かします。この暖房用電力は、飛行前と飛行後に充電によって作ります。

 

火星探査で重要な存在になるかも

 

インジェニュイティは50センチほどの小さいヘリコプターですが、今後はより大きなヘリコプターで、火星を調査する計画を予定しています。火星探査機は、宇宙から火星の構造・地質学的な特徴を調べ、地表の探査車は、火星の鉱物・岩石層を調べ、火星の歴史の手がかりを探します。

 

火星を飛ぶヘリコプターは、周回機と探査機の中間という感じで、クレーター・渓谷・山の調査がより詳細にできて、岩壁・火山の斜面等、探査車ではたどりつけない場所にも近づけるでしょう。将来的には、宇宙飛行士の事前探査をするといった使い方も期待できるかもしれません。

 

 

ライト兄弟の成功並み!?

 

火星でヘリコプター「インジェニュイティ」が初飛行に成功したというニュースでした。火星の空気は非常に希薄なので、ヘリコプターを飛ばすのはとても大変なんですね。これが、技術の進歩によって可能になったということです。チームはこれを、あのライト兄弟の初飛行になぞらえています。なんといっても、地球外の惑星で初飛行、ですからねえ。

 

 

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