地球

日本発の大成果!地球の酸素が月まで届いていた!





 

2017年1月末、日本発の月に関わる重大発表がありました。それは、“地球の酸素が月まで届いている!”という内容の発表でした。地球と月の距離は約38万キロ離れていますが、その月に地球由来の酸素が到達している、というのです。これには筆者も素人ながらに驚きました。なぜなら、地球と月の間には私たちが知っている空気の流れ、つまり風は存在しませんし、何より地球の酸素は、もともと地球の自然活動によって作られた、地球発の物質だからです。その酸素がどのようにして月に届くのか…。

 

※ 今回は、素朴な疑問を交えながら、“発見された”という事実や過程をできるだけわかりやすい内容で書きました。ここで出てくる月まで届いていた酸素”は、厳密にいうと“酸素イオン”ですが、“イオン”まで掘り下げると今回の成果についての説明が大変わかりにくいになってしまうため、表現を“酸素”にしています。ご了承くださいませ。





我々の地球と酸素の関係

 

まず、“酸素”とは何か?という基本的なところを抑えたいと思います。

子供から大人まで一番知られている元素といってもいいのが酸素ではないでしょうか。元素記号は「O」で、空気中の体積のうち、約2割を占めています。(余談ですが、残り約8割の大部分は窒素です。)酸素は、通常の場合は2つの原子が1セットになった状態の分子「O2」として気体で存在しています。小中学生の理科的知識では、「酸素とは物質の燃焼と生物の呼吸に不可欠なもの」として知られています。

 

 

では、酸素はいつから地球に存在しているのでしょうか。地球は46億年前に誕生しました。地球誕生当初、実は地球には酸素は存在していませんでした。では何の物質があったのかというと、二酸化炭素やアンモニア、メタンなどが大気を覆っていたということです。その後、地球が冷えて固まるにつれ、大量の水蒸気の影響により雲ができ、そして雨が降り続き、海ができました。生物はというと、当初細菌のような海中生物は存在していたようなのですが、酸素を必要としない生物ばかりでした。それが突然変異によって光合成をする生物が誕生しました。光合成とは、二酸化炭素を取り込み、酸素を作り出すことです。このように、海中生物の光合成の働きから、海の中の酸素は次第に増えていき、そしてそれが大気にも増えていく由縁となったのです。

ご存知の通り、今では酸素は私たち生物が生命を維持するために、なくてはならない必須元素として知られています。





まず押さえておきたい・プラズマシートについて

(磁気圏のイメージ wikipedia)

 

突然ですが、

「地球には磁力線があり、それが影響する範囲を磁気圏と呼んでいます。磁気圏は太陽風からの直接的な影響から地球をガードしてくれています。その磁気圏の中にある、ある限られた(ある条件を満たす)エリアのことをプラズマシートと呼んでいます。」

ここから先、話を進めていく上で、あえて地球の磁力線と磁気圏、太陽風、プラズマシートについて触れておかないと、今回のテーマ「地球の酸素が月に到達する」ことの説明ができないので、簡単に用語について説明したいと思います。

 

地球の磁力線とは

 

まず、地球の磁力線とは何なのでしょうか?地球は、それ自体が1つの大きな磁石です。北極がS極で、南極がN極です。私たちが実験や地図などで利用する方位磁石の赤い針N極が常に北のほうを向くのは、北の方角がS極だからなのです。

 

さて、“棒磁石の周りに砂鉄を置く”という小学生の理科の実験を思い出してください。その棒磁石の周りに磁力線が働いていて、砂鉄は常にN極とS極を繋げるような弧を描いたような形になります。地球もこの棒磁石と同じ仕組みだと考えてください。(北から南に向かって1本の棒磁石があるとイメージしてください。)この時に地球の周りには、“周りに何もなければ(後述します)”前述の砂鉄と同じような形をした地球の磁力線が存在する、というわけです。

 

太陽風とは

 

次に、太陽風について触れます。

簡単な説明になりますが、太陽は常に太陽風を放っています。これは約300〜500km/sくらいの速度で太陽から放たれる電荷を帯びた粒子・プラズマの流れのことです。ここでは特に触れませんが、オーロラはこの太陽風の影響による現象です。また、太陽風の威力が強すぎると停電など電力系統に異常をもたらす恐れもあります。

 

地球の磁気圏とは

 

地球の磁力が働いているエリアのことを磁場と言います。その磁場が影響している範囲のことを磁気圏と呼びます。地球の磁気圏は、太陽風に影響されているのです。太陽からの太陽風は、方向やその速度によってはものすごい勢いで地球に直撃しようとしますが、幸いなことに地球の磁気圏にぶつかり、直撃を逃れることができています。ぶつかった太陽風は、地球の磁場を避けながらその周りを覆うように広がって地球の夜側の方向に流れて行こうとします。と同時に地球の磁力線も地球の夜側の方向に引っ張られるような形に変形します。先ほど“周りに何もなければ”と書いたのはこのためです。地球の磁力線は太陽とは逆向きの方向に伸びているので、磁気圏も横広がりな具合に伸びているのです。

 

プラズマシートとは

 

突然出てきた用語で申し訳ないのですが、プラズマシートについて説明します。前述の通り、地球の磁気圏は太陽から逆の方向に引き伸ばされたような、(よく例えられているのは鯉のぼりの吹き流しのような)感じに広がっています。その吹き流し部分の中央部には、実は熱いプラズマが濃い密度で存在しているのです。それと同時に磁場が他と比較して弱いエリアでもあります。このエリアのことを“プラズマシート”と呼んでいます。また地球の磁気圏は、月の軌道よりも遠くまで伸びており、月は地球を公転する際にプラズマシートのエリアを通過することが知られています。

 

ざっとですが、用語の説明をしました。次はいよいよ今回のテーマの本題です!

 

月の周回衛星「かぐや」の活躍とその成果“地球由来の酸素が月に”!

(かぐや wikipedia)

 

2007年9月日本発の月周回衛星「かぐや」は、月の起源や進化を解明するための探査機として打ち上げられました。その搭載している最新鋭の機器を使って月周辺の詳細なデータを調査できるということで、世界各国から注目を浴びました。打ち上げから約2年後の2009年6月に運用を終えるまで、「かぐや」が観測し、地球に送り続けたデータは今も多くの研究者によって調査研究利用されています。

さて、その「かぐや」には、“プラズマ観測装置”という機器が備わっていました。

 

ようやく本題の本題です!

 

今回の重大発表は、JAXA・大阪大学・名古屋大学のチームによって発表されました。「かぐや」のプラズマ観測装置が送ったデータのうち、月面の上空100キロのプラズマデータを調査・解析した結果、月を周回する「かぐや」がプラズマシートを通過する時に限り、高いエネルギーを持った酸素があることを突き止めたのです。発見された酸素は、地球のオゾン層に見られる酸素同位体と同じ成分だということで、“地球風”(研究者はこのように表現しています)のルートを飛ぶようなイメージで、地球から月方向に到達している、ということを初めて観測データを持って明らかにした、ということでした。ちなみに酸素同位体というのは、簡単にいうと同じ酸素ではあるが中性子の数が多く質量が違う物質のことです。(水素に例えるとわかりやすいかもしれません。「軽水素・重水素・三重水素」は全て同じ水素であり、水素の同位体です。)

 

 

この観測・発見から拡がっていくこと

 

今回の発表では“地球”という“惑星”の周りを回る“月”という“衛星”の間に、地球風によって酸素が運ばれていることを示しました。

アポロ11号が月面に着陸して以来、世界の月探査・月研究は飛躍的に進歩してきました。研究者たちは月面から採取した物質を調査し、酸化物や酸素同位体があることをすでに発見してはきましたが、その由来についてはまだ全てが解明されたわけではありませんでした。今回の発見は、それらの物質の組成や由来を解明するためのキーになるとも言えるでしょう。

また、地球の生命活動により生まれた酸素が、38万キロも離れた月に直接的に影響を及ぼしていることが観測できました。つまり、月と地球は重力の関係で繋がっているという従来から知られている力学的な関係性に加え、新たに化学的な根拠が追加されたのです。

さらに今後、今回の観測手法は、惑星そのものの大気や表土を直接採取しなくても、その周りを回る衛星の表土やその間の大気を観測することによって、その惑星の大気の情報などが観測できる技術がより進展する可能性も高くなってきたということです。着陸技術やサンプルリターンが技術的に難しくても、その近隣の大気の調査によって様々なことがわかってくる時代に近づいてきた、ということが言えるようです。

 

 

地球の酸素が月まで届いていたのまとめ

 

日本の「かぐや」のデータを利用した日本の研究者たちの努力の結晶が今回の発表につながりました。夜空のお月様は私たちにとって大変身近な衛星なのですが、その月と地球の関係は、実はまだまだ未知な領域も多いのです。今後も月と地球の関係、惑星と衛星の関係の情報が飛躍的に増えて新たな発見につながることを期待しつつ、生物に必要な酸素が地球以外で存在する可能性についてのブレークスルー的発見にも期待したいと思います。

 

最後に…

 

今回のテーマを筆者が取り上げた理由は、日本の研究者たちが素晴らしい試みをし、地道な研究調査を重ねた研究成果だと多くの方に知っていただくこと、そして数行の新聞記事のまとめより一歩踏み込んで知ってほしい、という願いからです。筆者としては、宇宙についてあまり詳しくない方にも読めるようにと意識しながら書いた文章です。そういう意味では、重ねますが、酸素についての詳細な説明を欠いていると思います。酸素についてより詳細に触れようとすると、前述の理由に沿わないと判断し、このような記事にまとめました。ご理解いただけますと幸いです。また、さらにご興味を持っていただくことを期待しております。





スギヲ

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経歴:早稲田大学卒業後、国内外のシステム会社を経て現在フリーでウェブシステム開発をしています。一方で趣味が高じて宇宙分野についてのコラムも執筆中。

趣味:トイレに貼った宇宙分野の新聞の切り抜きを日々眺めること。そして空手でストレス発散。

気になる宇宙分野:惑星、重力

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