広大な宇宙には「ブラックホール」という、天体があると言われています。宇宙をテーマにしたSF小説などにもよく出てくるもので、みなさんにもなじみが深いのではないでしょうか?なじみが深い、といっても、ブラックホールの詳細を知っている人というのもごく限られていると思います。よく知っているのに詳しいことは知らないというのもちょっと変な話かもしれないので、ここでブラックホールについて、さまざまな角度から検証してみましょう。
ブラックホールというのは高密度・大質量の天体とされていて、強い重力があって一度そのなかに飲み込まれたものは「光」でさえ抜け出すことが不可能になります。ところで、このブラックホールの観測というのがなかなか難しいのです。重力が強いので光が事象の地平面から抜け出せず、目視が非常に困難という性質上、直接的に観測することが難しく、他の天体の相互作用から間接的な観測を行っています。
ブラックホールの見た目はどんなものなのか!?
SF映画や小説などでおなじみのブラックホールですが、実際に見た人はいないので、どんなものなのか知りたいと思っている人も多いでしょう。ブラックホールというのは比較的最近まで、理論的な存在でしかありませんでした。しかし、1970年代からX線天文学が発展したとこがターニングポイントになりました。アメリカ宇宙局NASAが1970年に打ち上げた世界初となるX線天文衛生「ウフル」が、多くの天体を観測しました。識別したX線源は339個にもなり、これが「ウフルカタログ」ともいわれています。そのなかでもはくちょう座X-1のX線データが注目され、これは自分の重力で潰れた星を周回していることがわかり、質量が太陽よりも30倍も大きく、大きさは大変小さいこの天体を、一般相対性理論からブラックホールと発表されました。
このように目視が難しいブラックホールですが、電波観測によって2011年6月にはブラックホールの位置の特定(地球から約5440万光年先にあるおとめ座A銀河の巨大ブラックホール)が、同年8月には地球から39億光年先の銀河の巨大なブラックホールに、星が吸い込まれる瞬間を観測した発表がありました。また、今年、世界8ヶ所の天文台をつないだ超特大の望遠鏡による観測で、史上初のブラックホールが撮影されたという報告があります(成否は数ヵ月後)。史上初となるブラックホール撮影、成否はまだ不明なものの、非常に興味が沸いてきますね!
事象の地平面からは逃げられない
ところで、ブラックホールにあるという「事象の地平面」とはなんなのでしょうか?ブラックホールの内部は脱出するための速度が光速以上であり、これを「シュヴァルツシルト半径」といい、この半径がある球面がシュヴァルツシルト面、「事象の地平面」と呼ばれています。「事象の地平面」は物理的な表面ではなく、内と外で連続した空間があり、特別な面としては見えません。この内部に入ったいかなる宇宙船も、脱出することが不可能になります。この世に光より速い物体はないので、絶対に事象の地平面から外に出ることができなくなるのです。また、事象の地平面にはこれという目印がないのもやっかいです。なにせ、地平面の内側と外側が連続しているからです。この地平面にうっかりとでも入ってしまった宇宙船はどうなるのかというと、ブラックホールは重力が大きく、宇宙船の前後で受ける重力に大きな差が生じ、こなごなに引き裂かれて素粒子までに分解されてしまうというからおどろきですね。
事象の地平面にある特異点とは!?
(R・ペンローズ wikipedia)
ブラックホールのもうひとつの特徴といえば、事象の地平面には「特異点」があるということです。特異点とは、体積が0でありながら密度が無限大という、普通ではありえない、理論上の存在のことをいいます。イギリスの物理学者ペンローズは、特異点は自然界にはありえないので、事象の地平面に覆われない「裸の特異点」がないような仕組みがあるとして、これを「宇宙検問官仮説」としています。また、同氏はこの特異点ことが宇宙の始まりであったということを、有名な物理学者スティーブン・ホーキングと数学的に照明しました。もしも「裸の特異点」が発見できれば、その向こうには別の宇宙が広がっているともいわれているのです。ブラックホールには事象の地平面や特異点など、これらのなんとも不可思議な特徴があるのです。現在では理論上の存在だから、我々一般人には余計にわかりづらいのかもしれませんね。
宇宙の謎、ブラックホールはどこにある!?
SFなどでおなじみな存在でありながら、詳しくは誰も知らないブラックホールについてでした。ブラックホールにはまだまださまざまな謎があるので、最新のニュースなども含めて今後もさまざまなテーマで語っていきたいと思いますのでお楽しみに!
写真:wikipedia