このたび、アメリカの民間会社「スペースX」が、
「ファルコン・ヘビー」という超大型ロケットの打ち上げに成功しました。
打ち上げの関係者が大歓声を上げているシーンをニュースなどでご覧になられた方もおられるでしょう。
このファルコンベビーの打ち上げは今後の宇宙開発に大きな意味をもたらすとされていますが、
その後すぐに、ちょっとおかしなニュースがありましたね。
それが、ファルコンへビーと共に宇宙に打ち上げられた赤いテスラのスポーツカーです。
今回はこの宇宙に打ち上げられた赤い車の意味、理由などについて追ってみました。
(画:テスラのロードスター wikipedia)
宇宙を漂う赤いスポーツカー
アメリカの民間会社「スペースX」が今年2018年日本時間2月7日、
「ファルコン・ヘビー」という大型ロケットの打ち上げに成功したというニュースがありましたが、
その後にニュースやネットで奇妙な映像をごらんになられた方もいるでしょう。
デヴィッド・ボウイの「Life on Mars?」をBGMに、
スペースXのCEOであるイーロン・マスク氏の車であった赤いテスラの「ロードスター」が、
宇宙服を着ているマネキンのドライバーを乗せ、宇宙を漂流しているという、
かなりシュールな映像がYoutubeを通し世界中に配信、ニュースの映像にも使われました。
この車が打ち上げられた意味について知る前に、
まずファルコンヘビーの打ち上げとその後についてみていきましょう。
ファルコンヘビーは前身のファルコン9ロケットの発展版で、
ファルコン9ロケットの左右に補助ブースター2本を追加した大型ロケットです。
この「3つの矢」という構造で、宇宙に打ち上げられてからまず2分30秒後に左右のブースターが分離、
地上の発射場近くにある着陸場に着陸成功、
中央の本体のセンター・コアもその後大西洋のドローンシップへ着艦する予定で、
こうすることでロケットの「リサイクル化」を目指すものでしたが、
今回センター・コアは残念ながら海に着水してしまい、回収はできませんでした。
原因はエンジンの点火剤を使いきったこととみられています。
中央の本体の二段構造の機体から分離された「フェアリング」のみが6時間、
宇宙での飛行を続け、火星の公転軌道へと向かいました。
そこでフェアリングが外れ、
赤いテスラのスポーツカーが現れるシュールな映像がYoutubeで世界中にライブ配信されたのでした。
つまり、楕円軌道の上に長時間飛行できて、
エンジンの噴射で半永久的に太陽の周辺の軌道に乗ることに成功したということで、
宇宙へ行くことを容易にする第一歩になるとされています。
ファルコンヘビーの打ち上げ成功は、「地味な革命」とも言われています。
米・ソ両国で宇宙開発が盛んに行われていた半世紀前から時代は進み、
コンピューターは強力となり、
ソフトウェアも当時とは比べ物にならないくらいの処理を可能にしてくれます。
そうなると、1960年代の思想であった「ハードが中心、ソフトはサブ」というものが逆転し、
「ソフトが中心、ハードがサブ」という思想が生まれるでしょう。
一度はロケット開発で「非常識」になった
クラスター・ロケットをあえて選んだファルコンヘビーの打ち上げ成功は、
要するに宇宙開発のロケットが「ハードからソフト」にシフトチェンジしていく象徴、
きっかけになるかもしれないということです。
テスラ・ロードスターが宇宙に打ち上げられた意味は?
ファルコンヘビーに詰め込まれた赤いテスラ・ロードスターが宇宙を遊泳する映像は衝撃的でした。
ファルコンヘビーの打ち上げと着陸、
宇宙空間を漂うロードスターの様子はYouTubeで全世界にライブ中継され、
その視聴者数は最大で230万人に達し、YouTube史上でも歴代2位を記録しています。
この赤い車テスラ・ロードスターが宇宙に打ち上げられた意味はどういったものなんでしょうか。
普通の人なら、宇宙に車を飛行させようとはまず思いませんよね?
もともとイーロン・マスク氏は、赤と黒のテスラ・ロードスターを持っていました。
なんとイーロン・マスク氏はスペースX社の共同設立者でもあり、
テスラ(アメリカの自動車会社)の共同設立者でもあるのだそうです。
テスラ・モーターズも創業当初は苦労が多かったそうです。
「ロードスター」発表後も、なかなか市販車を出せずにいました。
これは2008年に市販されたものの、
2012年まで2500台した生産できなかったという苦難がありました。
しかし、ここから「モデルS」の量産を開始、
ラインナップも広げて数十万台の生産台数を目指し、現在では立派な自動車メーカーとなりました。
ファルコンヘビーに積め込まれたのは「シグニチャー・カラー」という真っ赤な車です。
初代のテスラ・ロードスターが苦しかった時代を乗り越え、
役割を終えて宇宙へと旅立ったとすれば、関係者としては感慨深いものがあるでしょう。
また、テスラは電気自動車です。
ガソリンの車なら宇宙では走ることができませんが、
電気自動車なら火星でも走れるかもしれないという思いも含まれているのかもしれません。
イーロン・マスク氏は火星移住計画も発表しており、
テスラの「モデルS」にも、大型ディスプレイに「マーズモード」というものを追加しています。
これは、画面の火星アイコンをタッチすることで、火星の表面が表示されるというものです。
マスク氏にとって、テスラが宇宙につながるということは大きな意味があるということかもしれません。
マスク氏は、電気自動車や大型ロケットをただ開発するというものではなく、
もっと大きな構想をテーマにしているのです。
マスク氏の目指すものはエネルギー問題解決であったり、
持続可能性追求、宇宙での事業といった構想で、
電気自動車やロケットはその手段にしかすぎないのです。
彼は常に物理学を引用しますが、それこそが彼の独自性、
明確な理論のもとに行動するという証なのです。
ファルコンヘビーもロケットの再利用して持続可能な社会を目指すための手段のひとつで、
テスラもただの電気自動車ではなく、
石油に依存した社会から再生できるエネルギーが主導の社会へシフトするための車作りなのです。
ファルコンヘビーといっしょにテスラの「ロードスター」が宇宙に旅立ったということは、
彼にとっては宇宙開発と自動車開発の両事業の
根底にある持続可能性と宇宙をひとつにしたという重要な意味があります。
という哲学的な考え方もありますが、実際のところはどうなのでしょうか。
彼はインスタで「ぶっちゃけた」本音を明らかにしています。
それはなんと「ロケットの重り」なんだとか。
ただし、「ただの重りを乗せるのは退屈で耐えられない」とし、
「自分の愛車を載せることにしたんだ」と書き込みました。
「なぜ車?」とツイッター上で聞かれた彼は、
「ただ1台の車が、宇宙を果ても無く漂い、
もしかして何百万年後に宇宙人に発見されるかもしれないと考えたら、うっとりするね」
と答えています。
当然、彼には自動車メーカーの実業家としての計算もあるでしょう。
このように世界をを騒がせれば、テスラの自動車もスペースXの注目されることは間違いないからです。
普通の自動車メーカーは、
そのブランドを高めるために歴史的名車などを誇って「老舗」をアピールしますが、
イーロン・マスク氏の考えはこれとは正反対で、
画期的なテクノロジーによって新しい概念を持つ車を開発、
今までのブランドを時代遅れの車にしようという戦略です。
つまり、イーロン・マスク氏の視線は常に未来に向いているということでしょう。
型破りの天才に目が離せません
ファルコンヘビーと共に宇宙に飛び立った赤いスポーツカーについてでした。
破天荒で型破りの言動が多く、フォーブスの
「世界で最も影響力のある人物」のランキング21位にも選出された、
「世界最高の企業家」とも呼ばれるイーロン・マスク氏には今度も注目です。