アメリカの人気SFテレビドラマ「スター・トレック」は、
放送開始から50年、つまり半世紀を迎えました。
このドラマは現在でも本国アメリカのみならず世界中に多くのファンがいて、
現実の技術革新にも影響を与えているといった話もあります。
しかし、日本においては「アメリカで人気らしいSFのテレビドラマ」という感じの受け止められ方で、
熱心なファンというのはあまり多くないかもしれません。
「なんとなく敷居が高そう」
というイメージもあって敬遠している人もいるかもしれません。
そこで、そんな人のために、今回はこの「スター・トレック」が
現在でも人気シリーズとして続いている理由、本作品の魅力について紹介してみましょう。
「スター・トレック」とはどんなドラマなのか?
スター・トレックは1966年に放送を開始して以来、
2015年に日本で公開された「スター・トレック BEYOND」
を含めた13本の映画に6作のテレビドラマシリーズのほかにも、
関連本・ドキュメンタリー・漫画・アニメ・ゲームなど、多くのメディアに登場しています。
初期の作品では作者のジーン・ロッデンベリー氏が理想にした未来を描きながら、
様々な現実の社会問題をSFとして提示しています。
以降の作品でも社会の複雑化を反映した内容で、現在までヒットを維持しています。
ストーリーは22世紀〜24世紀の話で、人類は銀河系の約4分の1にまで進出、
多く異星人と出会いながら、より遠くへと探索を進めています。
地球は貧困・戦争・偏見・差別がなくなった理想的世界になり、
人は富・欲望ではない「人間性の向上」のために働いています。
「人間性の向上のために働く」というのはいいですね。そうありたいものです。
主要なストーリー構成は、習慣・価値観が違う異星人や多くの宇宙的現象が絡みあってドラマが展開し、
宇宙船または宇宙ステーションの登場人物が、
多くの困難を乗り越え他種族・未知の文明と交流する様子を描いています。
「スター・トレック」が大きな成功をした理由は、
科学的な事実を重要視していることだとされています。
SF作品といっても視聴者はリアルな科学に基づいた世界を見たいと思っており、
「スター・トレック」では、そう遠くないであろう未来の世界が、
提示されているのが魅力ではないでしょうか。
たとえば「スター・トレック」に登場する人物の目指す場所は、
「アルファケンタウリ」や「アンドロメダ銀河」など、
架空の場所ではなく現実の宇宙に存在しているものです。
このように現実の宇宙の名前が出てくれば、
作品に夢中になった視聴者は現実のそれらについても
本やネットを利用していろいろと調べたくなってくるでしょう。
これが「スター・トレック」の楽しみ方のひとつでもあります。
「スター・トレック」の各話を通してみていくと、
脚本家が現実の宇宙を想定しながら物語を作っていることに気づくでしょう。
彼らは常にリアルな科学を真剣に考えていました。
本作の熱心なファンを「トレッキー」や「トレッカー」と呼びますが、
現在世界で活躍中の科学者・物理学者・数学者・宇宙飛行士・エンジニアなどの職業の人が、
子供のころこの番組に夢中になって、その道に進んだといったケースが多くあります。
スティーヴン・ホーキング氏が講演において本作を引用したり、
スター・トレックへのゲスト出演を希望する著名人もいます。
「ターミナル」の入国審査官など、現代アメリカを舞台にした作品で
登場人物が「トレッキー」という設定も見かけます。
「トレッキー」の投書が40万通ほど来たため、
スペースシャトル「コンスティテューション」が「エンタープライズ」の名前になり、
お披露目に関係者が招待されたりしました。
科学考証をNASAに求めることもあるため、劇場版クレジット等でNASAが出ることもあります。
また、宇宙にある数個の小惑星にはこの作品に関連した名前がつけられています。
スター・トレックと現実の科学の関連
「スター・トレック」における科学考証は上記のようにNASAに問い合わせたり
専門のコンサルタントを雇うなどをして専門的に行われています。
そのため、コメディー調やスペースオペラ調などの回のほかにも
科学の知識がぎっちりと詰まったハードSF調の回まであるという、ストーリーの幅の広さも魅力です。
この番組が放送されている数十年では科学技術も進歩していて、
宇宙について多くのことが明らかになっています。
その面についても最新作によって反映されています。
たとえば、地上で暮らす人間が星雲の内部を知ることはできませんが、
スター・トレックでは実際の科学者が使うコンピューターシミュレーションを基に
して、星雲内側の景色を見せてくれます。
スター・トレックに出てきた未来の小道具が、現実になったものがいくつもあります。
「PADD(パッド)」というデバイスはキーボードがなく、
指だけで操作するテクノロジーですが、
これは今では「iPad」や「タブレット」として登場しています。
1960年代のスター・トレックでは、
現在のスマートフォンやウェアラブルな医療機器が登場していました。
劇場版のスター・トレックでは、音声認識ソフトも現実に先がけて登場しています。
とはいえ、スター・トレックに出てくるテクノロジーでも、
「ワープ」や「テレポーテーション」のように、現在の技術では実現が難しいものもあります。
クエンティン・タランティーノの「スター・トレック」!?
(画:クエンティン・タランティーノ wikipedia)
アメリカのパラマウント・ピクチャーズが2018年現在、
2本の映画版「スター・トレック」の準備を進めていること報道され、
その中の1本がなんとあのクエンティン・タランティーノが進めているという話があります。
「The Independent」等によると、
ラスベガスで開かれた映画興行主向けコンベンションにおいて
パラマウント代表のジム・ギアノーパロス氏が認めたということです。
詳細は不明ですが、その2本とは「パルプ・フィクション」や
「キル・ビル」等で有名なクエンティン・タランティーノが進めるというR指定版と、
シリーズ第4弾として予定されていた「マイティ・ソー」などの
クリス・ヘムズワースが出演する映画とみられています。
ヘムズワースはシリーズ第1弾映画の「スター・トレック」
冒頭で主人公のカーク船長の父であるジョージ・カークの若いころを演じていて、
シリーズ復帰作になるようです。
また、タランティーノのR指定版の案は没になったとされていましたが、まだ進行中だそうです。
カーク船長がタイムトラベルで思いがけず父親に会うというストーリーの軸で、
S・J・クラークソン監督と交渉していると報じられており、
クラークソンが監督に決まれば、シリーズ初となる女性監督ということになります。
タランティーノ監督の映画といえば「キル・ビル」のような暴力描写ですが、
スター・トレックの雰囲気と合うのかと心配になる古参ファンもいるかもしれません。
ただ、暴力表現や卑語は今までなかったわけではなく、
ドラマシリーズの「スタートレック・ディスカバリー」は「ファ○ク」と言うキャラクターが登場し、
暴力描写も話題となりました。
「ディスカバリー」のレイティングは17際未満の子供に不適切という成人向きであり、
これは映画のレイティングにおける「R指定」と同じになります。
タランティーノ氏は自分で撮ってみたいと思っているようですが、
彼が監督する「スター・トレック」も見てみたいと思うのは自分だけでしょうか?
宇宙を探検するという内容が最大の魅力かも
スター・トレックのストーリーのように、
未知の世界を冒険してみたいという願い・欲求は、
人間のDNAに刻み込まれているのではないでしょうか。
大航海時代にヨーロッパ人は大変危険な場所であった大洋を越えることで北米大陸に到達しました。
スター・トレックの目的地は、ひとつの惑星だけでなく、天の川銀河やその先まで広がっています。
こうした壮大な冒険が体験できるのも、本作の魅力と言えるでしょう。