スペースxといえば、先日「ファルコンヘビー」という
超大型ロケットの打ち上げに成功した民間企業として話題になりました。
スペースxのロケットの特徴としては、
従来のロケットに比べて格段に安価で製作にかかる時間も非常に短いという点が挙げられます。
では、スペースx社のロケットの打ち上げ費用はどれほどになるのでしょうか?
宇宙開発に革命をもたらすスペースX
これまでの宇宙開発・ロケット開発というものは、
非常に「お金」と「時間」が必要になることが普通でした。
この構造の風穴をあけるようなロケットを開発しているのが、
イーロン・マスク氏が率いるスペースxです。
スペースxのロケットは、安価ですばやい開発が最大の特徴となっています。
これは、イーロン・マスク氏が、これまでの宇宙開発について強い不満を感じていたからです。
これまでの宇宙開発を知ったマスク氏は、
「宇宙開発はこれまで何十年間なにも変わっていない」と痛感し、
もっと早くて安い、競争力の高いロケットの生産方法を模索し、実際にそれを実現してきました。
スペースxが宇宙へ打ち上げるロケットは、
これまでの一度打ち上げに使ったら使い捨てという形式ではなく、
「再利用」できるということが特徴です。
この再利用が可能になれば、従来の半額よりも低い打ち上げ費用を実現できるとしています。
宇宙に打ち上げるロケットは、「エンジニアリングの結晶」とされています。
このような貴重な物が、これまでは打ち上げてすぐに海などに落ちてゴミになるという、
非常にもったいない現実がロケットのコストが高くなる理由でした。
スペースXでは懸命な努力によって、
このような無駄が多いロケット打ち上げコストの削減を可能にしつつあります。
すでに使用したことがあるファルコン9のロケットブースターを使い、
初めて打ち上げに成功した直後、「宇宙飛行にとって大きな革命。
ここまでに15年もかかった」とマスク氏は2017年3月30日語りました。
スペースXは2017年の6月25日・26日にも
使用済みのロケットを使う計画「ウィークエンド・ダブルヘッダー」の一部として、
2日以内で2回の打ち上げに成功しました。
マスク氏は、再利用できる軌道ロケットを使い、宇宙への飛行にかかるコストを大きく下げ、
人間を火星に送るための費用を可能な限り安くすることを目標としています。
スペースXはこの技術開発のためにに約10億ドル、
日本円で約1122億8000万円を投じています。
アメリカ政府からも受注されるように
たとえば、米空軍は大手航空機メーカーで有名なボーイング社と
ロッキード・マーティン社が2005年に
設立したULA(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)の「アトラス V」や
「デルタ IV」という使い捨てのロケットを使っていますが、
スペースXのロケットではULAのロケットの
5分の1程の打ち上げ費用で打ち上げられると言われています。
米政府では、空軍の宇宙ロケットの打ち上げに費用に関しての報告書を公開していますが、
これまでは前述のULAがこの米空軍のロケットをほぼ独占していました。
しかし、政府の監査院は同社の打ち上げ費用の内訳がわかりにくいことを批判しています。
ここでスペースXは米政府に自社の低コストロケットを猛烈にアピールしますが、
ULAのわかりにくいコストのために
スペースX社のロケットとの正確な比較が難しかったとされています。
最近では、スペースXの商業向けロケットが政府のロケットとして使われるようになり、
予算の中にULAの巨大で不透明なロケットの打ち上げ費用があることに批判が起きています。
ということもあり、すでに米空軍においてULAの宇宙ロケットの独占は終わりつつあり、
ここにこれまでよりも低価格なスペースXの宇宙ロケットがが入り込んできています。
では、実際の打ち上げ費用はどうなのでしょうか。
2016年、米空軍がスペースX社と契約して、8300万ドル、
日本円で約92億円という費用でGPS衛星を打ち上げました。
2017年の3月には9650万ドル、日本円で約107億円によって同じプログラムを成功しています。
この費用を米空軍の2020年ロケット打ち上げ推定最大額に比較した場合、
だいたいのおおまかでもスペースX社の打ち上げ費用は、ULAのコストの約5分の1ということです。
さらに、軍事ロケットの打ち上げでは数千ドルというコストの上乗せ契約を設けますが、
スペースXはライバルに対抗するために軍事ロケットの追加コストも割り引く考えがあり、
これまでの莫大な金額が必要だったロケット打ち上げについての
コストが大きく安くなることが予想されています。
ファルコン9ブロック5は最低10回の再利用ができる
スペースXの「ファルコン9」の商業打ち上げは6500万ドル、
日本円で約72億円から販売しています。
また、先日打ち上げ成功の模様がニュースになって話題になった
超大型ロケット「ファルコンヘビー」は、
9000万ドルというコストになっています。
さらに、スペースXは今年5月11日に、「ファルコン9」の改良型で、
再利用回数が増加した「ファルコン9ブロック5」を打ち上げました。
これは、同社の打ち上げ費用の削減に向けまた大きな一歩になると期待されています
フロリダ州NASAケネディ宇宙センターで打ち上げられたこのロケットは、
ファルコン9の最新・最終モデルになる予定で、
少なくても10回の再利用ができるように設計されています。
また、従来に比べてエンジンがパワーアップしたほか、
耐熱シールドの強化、格納式着陸脚も装備されました。
スペースXの最高経営責任者イーロン・マスク氏は、
1年以内にこのロケットによって24時間内で2回の飛行したいと考えていて、
このようなペースが実現できればコストは大幅に安くなるとされています。
スペースXはこのブロック5を使い、国際宇宙ステーションの有人飛行を計画していますが、
これはNASAの承認が必要になります。
NASAでは、その許可の前に、ブロック5が繰り返して打ち上げをしても問題ないのかを
確かめたいとしています。
低コスト化のパイオニア
スペースXのロケットの打ち上げ費用についてでした。
スペースXのロケットももちろんコストがかかるのですが、
それでも従来のロケットよりも大きく低コストということで、
宇宙開発の新しい時代がスペースXによって切り開かれるといっても過言ではないかもしれません。