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大気に土壌成分…火星移住はほとんど不可能?

2018年11月2日

イーロン・マスク

 

火星に移住する計画は古くからSFなどでもおなじみの話で、最近ではスペースXのイーロン・マスク氏が本気でこの計画を考えていることが話題になっています。

しかし、火星に移住することはほとんど不可能という研究結果がこのほど発表されました。

 

現在の技術では火星に大気を作れない?

 

アメリカの研究チームはこのほど、現在の人類の技術では、火星に「大気」を作ることがほぼ不可能という論文を発表しました。

火星移住計画ではまず、有人宇宙船で月に向かい、そこで基地を作って資源と人間を集めることからスタートするでしょう。

 

ここまで成功してから、次に、火星のテラフォーミングとなります。火星に人間が生存できる場所をつくるということは、ひとえに「温室効果」というができるかどうかにかかっています。

 

火星は凍った二酸化炭素で覆われているとされていますが、”何とか”気温を上げて表面のドライアイス・氷を溶かせば、海や濃い大気ができます。

 

この大気中に酸素が多く含まれるかは不明ですが、外を歩き回るために宇宙服は着る必要はなくなります。

が、しかし。この”何とか”が問題で、ここまでくるのに1万年くらいの時間がかかるかもしれないというのが現実です。

 

天文学者カール・セーガンは「惑星エンジニアリング」という構想を1971年に発表しました。火星で温暖な気候を作り出すために、両極付近にある氷を溶か炭酸ガスを作るという計画です。

 

その20年後、惑星科学者クリス・マッケイは有名な科学雑誌「ネイチャー」の論文で、火星に二酸化炭素・水・窒素があれば、大気を作ることが可能としました。

 

その後、太陽からくる有害物質を跳ね返すほどの大気がある火星にすることは可能かという研究は続けられ、そして今年2018年7月に発表された論文では、現在の人間の技術では地球のような大気を作ることは不可能と語られています。

 

この論文は、アメリカのコロラド大学で惑星科学専門のブルース・ジャコスキー氏、ノーザンアリゾナ大学のクリストファー・エドワーズ氏が発表しています。

 

この論文では「火星では、ある程度の二酸化炭素を集めることができます。しかし、その大半は宇宙空間に飛び散り、また、気温が低い両極では固体化することもあり、炭酸塩鉱物となる可能性もあります」と綴られています。

 

ジャコスキー氏は、「もしすべてが大気になっても、火星に温暖化を起こすためには量が足りません」と話しています。

 

火星の温暖化はできない?

 

地球上の大気圧は地表で「約1バール」ですが、それだけの二酸化炭素が火星の温度を上げるために必要ということになります。

火星の大気圧が250ミリバールになっても、気温に大きな変化が起こりますが、過去の火星ではこれくらいの大気が実際にあったと考えられています。

 

研究で、かなりの昔には火星にも液体の水があったということが判明しています。

つまり過去の火星では気温・大気圧も、水が残る程にはあったということです。

 

NASAの探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」のデータから、火星に炭酸塩の堆積地とされる場所が多く見つかりました。

ただし、ブルース・ジャコスキー氏が主任を務めていて火星の周回軌道上から観測をしている「MAVEN」の調査で、火星の二酸化炭素は宇宙に飛び散っていることも確認されています。これは、火星移住を夢見る人にとっては残念なものでしょう。

 

極周辺の氷が溶けることで、15ミリバールくらいの気圧できます。

 

炭酸塩を含めた鉱物採掘で15ミリバール以下、特殊な方法でも150ミリバール以上は無理でしょう。

地中の二酸化炭素もありますが、地下100mまで進んでも40ミリバールほどというところです。

 

つまりジャコスキーは、40ミリバール?50ミリバール以上という大気を作ることはほとんど不可能だと考えて、これくらいの量では気温に変化を与えることはできないとしています。

 

火星で二酸化炭素を探し出せたとしても、著しいくらいの温暖化を起こす量には程遠いのではないかと語っています。

 

 

諦めない人も

 

ただし、最近火星に液体の水が見つかったという発表もあり、諦めない人ももちろんいます。

NPOのロバート・ズブリン氏はジャコスキー氏は悲観的で、火星の温暖化は1バールでなくとも300ミリバールで十分と語っています。

 

既存の仮説を発展させて、展望を大きく変えると考える人もいます。「人工温室効果ガス」で、火星にある塩素からフロンガスを作って散布するという方法もあるかもしれません。

 

ただ、この「スーパー温室効果ガス」で火星に残されたオゾンを破壊するべきではなく、そうしなければ火星は放射線に加え人体に有害となる強烈紫外線が降り注ぐことになるからです。

 

 

土壌成分には毒性が

 

大気以外でも、最近「火星は想像以上に住みにくい」という研究が発表されました。

 

これは、「土壌の成分に降り注ぐUVによって、微生物があっという間に死んでしまった」という話です。

最新「Scientific Reports」の論文で、火星の土壌成分は細菌レベルでさえも存在できないくらいの毒性があるとしているのです。

 

NASAが1970年代に実施したバイキング計画で、火星の表面には過塩素酸塩で覆われている土壌があることが判明しています。

 

過酸化水素とは要するに「殺菌消毒液オキシドール」の成分であり、これでは当然「生命が存在する可能性」どころではないですよね。

 

ここまでみてくると、基本的な問題を考えなくてはなりません。

 

それは、「なぜ火星に行くのか」ということです。

 

「科学から離れ、テラフォーミングについて問い直してみることです。地球に住めなくなったからといってバックアップとしての場所を用意するというのは、可笑しな理論だと思います。外的要因もありますが、地球の環境を破壊しているのは人間です。遠くの火星のことを考えるより、地球という素晴らしい環境の惑星を維持することのほうがよほど簡単になります」とジャコスキー氏は語ります。

 

 

テラフォーミングについて考え直してみたい

 

火星移住計画の難しさについてでした。

たしかに根本的な火星移住ということについて考えたほうがいいかもしれません。

 

火星探査があり、そのために火星基地を建設するかもしれません。ただし、居住空間になると、海・運河は本当につくれるかが問題になります。

現在の人間が知る限りにおいて、これらが存在しうるのは広い宇宙で地球だけです。

 

写真引用元:イーロン・マスク wikipedia

写真引用元:火星 wikipedia

 

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