皆さんは、「ロケットラボ」というアメリカの民間企業があることをご存知でしょうか?
先日このロケットラボの「エレクトロン」が打ち上げに成功、これは世界の民間企業5・6社がしのぎを削っている小型ロケット開発で初の成功事例であり、小型ロケットの商業化加速の契機になるとも言われています。
ということで、今回はこの歴史的偉業を達成したロケットラボについてご紹介してみましょう。
この記事の目次
民間宇宙開発企業「ロケットラボ」とは?
「SpaceX」社を筆頭に、最近は民間企業が宇宙開発競争に参入するようになってきました。このような競争が活発になれば、宇宙開発もそれに比例して大きくなることが期待されます。
「ロケットラボ」という企業も、アメリカはロサンゼルスに拠点を置く航空宇宙企業です。
この企業の子会社が、日本に近いアジアのニュージーランド・オークランドにあります。
本社はアメリカにありますが、そのロケットの大部分はニュージーランドで作られているので、ニュージーランドの会社とも言われることがあります。
「ロケットラボ」は、高い柔軟性を誇る衛星打ち上げシステム「エレクトロンロケット」を運用していることが知られています。
かつて科学者だったピーター・ベックという人が創業者で、インターネット起業家のマーク・ロケットが投資家として2007年から2011年まで副監督を務めていました。
2010年の2月にロケットラボはアメリカの ORS(Operationally Responsive Space Office) から、使い捨てで低費用の打ち上げシステムによって小型人工衛星を打ち上げるための調査の契約をしました。
このように、ロケットラボはアメリカ政府から公式に契約しているほどの能力があるんですね!
2015年にはあの「ケープカナベラル空軍基地」を施設として使えるようになりました。
ケープカナベラル空軍基地は、アメリカ・フロリダ州のケープカナベラルのメリット島にあるアメリカの空軍施設で、国防総省の「宇宙ロケット打ち上げ基地」という大規模な基地です。
ニュージーランドのバンクス半島南端にあるKaitorete Spitに打ち上げ施設に

ニュージーランドのRocket Lab第1発射施設 /wikipedia
その後、ニュージーランドのバンクス半島南端にあるKaitorete Spitを商業打ち上げ施設に使うことを発表しました。そして近年、世界初の民間小型ロケット「エレクトロン」の打ち上げに成功しています。
超小型ロケット「エレクトロン」とは?
ロケットラボのメインロケットである「エレクトロン」についてご説明しましょう。エレクトロンはアメリカ政府とニュージーランドで作られている「ロケットラボ」の人工衛星打ち上げ用小型液体燃料ロケットです。
全長17m
直径12m
総重量10,500 kg
という、まさに超小型のロケットです。
1回の打ち上げ費用は500万円以下ドル未満という予定になっています。エレクトロンの本体は軽量化をするために「炭素繊維強化プラスチック」で作られています。低軌道に400kg、更に上空の太陽同期軌道には100kgのペイロードを投入できる能力を持っています。
「ペイロード」というのは乗り物のうち、自身の移動のほかに何らかの物体を載せて移動する目的のもので、その「積載物」のことです。英語の「pay」は対価の支払い、「load」は荷という意味で、直訳して「有償荷重」とも言われています。
さらに特徴的なのが、エンジンは専用の「3Dプリンター」で製作されているということです。
これは驚きですね!
この「ラザフォードエンジン」は、電動ポンプサイクルを使ってリチウムイオンバッテリーより供給されている電力によって直流ブラシレスモーターを回転させてターボポンプを動かし、ケロシン・液体酵素をエンジンに送ります。
エレクトロンの打ち上げは2015年末という予定でしたが、商業的運用は2016年から開始予定とされていました。
2017年の5月25日、ペイロードがない「It's a Test」という試験機の打ち上げが行われました。ロケット上段は弾道飛行に終わりましたが、そのほかの技術的実証は成功し、これからの進展のための結果が得られました。失敗の原因究明に約2か月が費やされ、それによれば、高度224 kmで地上設備にミスがあり、「テレメトリ異常」が検出されたので安全のため飛行が中断されたということです。
これは、ソフトウエアによってすぐに修正できる問題だっため2号機以降に生かされ、2018年1月21日の2度目に行われた打ち上げで軌道投入を成功させました。2018年の11月11日、ニュージーランドから発射されたロケットは「It’s Business Time」という名前で、打ち上げに成功。これは、小型ロケットの商業打ち上げとして、世界初の出来事です。
「It’s Business Time」では、合計で6機の小型衛星を軌道投入させました。投入したのはアメリカの衛星ヴェンチャー企業が開発した「追跡用衛星」「通信用衛星」、カルフォルニア州の高校生たちが開発したという小型衛星等というからすごいですね。
「エレクトロン」と「ファルコン9」の比較
ご存知の通り、これまでの人工衛星の打ち上げは宇宙機関・大企業が提供して、衛星を開発する企業は1億ドル〜3億ドルという費用を支払うのが普通でした。ここからSpaceXのロケットが台頭すると、打ち上げ費用は着実に下がっていきました。
このロケットラボの成功は、その拍車をかけることになるとされています。
SpaceXの「ファルコン9」の打ち上げ費用は約5000万ドル、日本円で約57億円と言われていますが、ロケットラボの「エレクトロン」の費用は約570万ドル、日本円で約6億5000万円です。
ファルコン9のほうが多くの貨物を打ち上げられますが、ロケットラボはより安い打ち上げを求めている顧客がターゲットです。この2年間で地球のすべての観測データ取得・通信サービス、データ分析を使うコンサルティング事業の小型衛星ベンチャーが多く現れています。
しかし、それでも高価格な打ち上げ費用、最大数年間という待ち時間等、実際の展開を阻む問題が残されています。
ロケットラボの低コストかつ高頻度の打ち上げサービスが普及していけば、ベンチャー企業は好きなときに衛星を打ち上げて、需要に合った速度でデータ取得ができるようになります。
同社のCEOピーター・ベックが言う、国際宅配便の「FedEx」宇宙版のようなサービスが実現するかもしれません。同氏によると、今年2019年は16回の打ち上げを予定しているそうです。
次は、あのNASAの小型衛星を10機も載せた「エレクトロンを」12月に打ち上げる予定があります。
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ロケットラボの株価は?
ロケットラボが民間企業の小型ロケットの打ち上げという偉業を達成したので、さぞ株価が上がったのではと思うかもしれません。ところが、ロケットラボは「非公開株式会社」なのです。
非公開株式会社とは「株式のすべてに譲渡制限をつけている株式会社」のことをいいます。そんな「株式非上場会社」のロケットラボは2017年3月22日、7500万米ドルという資金調達ラウンドを終えたと発表しました。
このラウンドが終了し、ロケットラボのこれまでの資金調達総額はなんと1億4800万米ドルにまで達して、株式の時価総額では10億米ドル以上となりました。ピーター・ベックCEOは「この資金調達ラウンドを終えた前年は、世界初民間ロケットの打ち上げ施設の建設、エレクトロンをその施設に搬入した素晴らしい1年でした。資金調達で、成長している小型衛星業界からの高い需要に応えてエレクトロンの生産を続けることが可能となります」と語りました。
ついに宇宙時代が到来するのかも!?
ロケットラボについてでした。今回のロケットラボの歴史的偉業は、小型ロケット産業・小型衛星市場に大きい変革をもたらすとされています。
ついに、宇宙がビジネス界に開かれる時代が来るのかもしれません。