
宇宙犬 ライカ / wikipedia 引用
私たちは普通、「生身のままで宇宙空間に出て生き残れる地球の生物なんていないのでは?」と思いますよね。前回の話のように、宇宙に上がった動物は多くいますが、それはあくまで宇宙船内でのこと。
前回記事:これまで宇宙に行った多くの動物たち(ハエ・犬・猫・猿・ゴキブリ)
ところが、生身で宇宙空間に出ても死ななかった、そんな最強の生物が存在していたのです。
その名は「クマムシ」。
ここで、「地球で最強の生物」とも言われているクマムシと、そのクマムシが生身で宇宙空間に出たという実験について紹介してみましょう。
「クマムシ」とは?

オニクマムシ wikipedia 引用
クマムシとは、体長50マイクロメートル〜1.7ミリメートルで8本足の緩歩動物門に属している動物、緩歩動物(かんぽどうぶつ)の別名です。
驚くべきはその生命力です。
クマムシは熱帯・極地方・超深海底・高山中まで、地球の地上のありとあらゆる場所で生きています。よくゴキブリは生命力が非常に強いといわれていますが、そんなゴキブリでもクマムシと比べれば、比べものにならないくらい生命力が劣っているのです。
そのため、クマムシは「チョウメイムシ(長命虫)」という呼び名も持っています。堆積物にある有機物に富んだ液体、動物・植物の体液を吸って食物にしていて、 現在のところ、地球のクマムシは約1000種以上が知られています。クマムシは人間からは信じられないほどの、とんでもない耐性強度を持っています。
以下がクマムシの耐久性です。
・体重の85%の水分を3%以下に減らすことで、極度の乾燥状態でも生きられる
・151℃という高温〜ほとんど絶対零度という極低温の場所でも生きられる
・真空〜75000気圧の高圧まで耐えられる
・高い紫外線・X線・ガンマ線などの放射線にも耐性がある。クマムシのX線半致死線量は3000〜5000Gy(人間のX線半致死線量は4Gy)
そんなクマムシを、宇宙空間の軌道上で宇宙線・太陽光を浴びせる実験がこのほど行われました。
宇宙空間ではなぜ生物が死んでしまう?
普通、宇宙空間に生身のまま出た生物はほとんど死んでしまいますが、それはなぜなんでしょうか。宇宙は「ほぼ真空」状態で、生き物がする呼吸に必要な酸素もなく、そのうえとても寒く、体に有害な宇宙線・電磁波も多く飛んでいます。
このため、国際宇宙ステーションなどでは人体にできるだけ害を与えない環境にしています。
それでも、国際宇宙ステーションにいる間は地球で浴びる放射線の100倍以上という宇宙放射線を受けることになります。
クマムシが宇宙空間に

ドゥジャルダンヤマクマムシの電子顕微鏡写真 wikipedia 引用
欧州宇宙機関のESAが2007年9月に打ち上げた宇宙実験衛星の「Foton-M3」に、クマムシが乗り込んでいました。
目的はクマムシを宇宙空間にさらすことで、動物が宇宙空間にさらされたのはこれが史上初になります。
クマムシは必要に応じて代謝を停止できたり、放射能を大量に浴びてDNAにダメージを受けたときこれを修復することができるため、地球軌道上の宇宙空間にクマムシを生身で直接さらす実験を行ったのです。
打ち上げるときのクマムシは、乾眠(かんみん)という状態にされていました。
乾眠状態のクマムシは、代謝率がなんと1万分の1まで低下していて、空気・餌・水を必要とせずに、摂氏150度以上〜マイナス150度以下でも生きられるのです。
地球軌道に達し、クマムシが入った容器が開きました。クマムシの一部は低レベル宇宙線を浴び、残りのクマムシは宇宙線以外にも太陽光も浴びました。
そして、そのすべてのクマムシは温度差が激しいほぼ真空の宇宙空間に10日間直生身でさらされました。宇宙線のみを浴びたクマムシは地球に戻ると目を覚まし、普通のクマムシと同じペースで繁殖しました。宇宙線と太陽光も浴びたクマムシが生き返る確率はこれよりも低かったものの一部は生き残り、これだけでもすごいことだとチームは後の論文で述べています。
この論文では、クマムシたちが宇宙空間でいかにして身を守ったかは謎だといいます。
チームの次なる研究は、この働きを持っている遺伝子を探すことで、これはDNAの修復についての理解を進める鍵になるでしょう。
宇宙空間から生還したクマムシがすごすぎた
地球最強生物「クマムシ」が宇宙空間にさらされた実験についてでした。
このように驚異的な耐久性があるクマムシの研究というのは、現在大いに行われているそうです。
これは、やはりそうですよね。
クマムシの特性を人間に適用できたら…なんて考えてしまいますが、そうなると地球が持ちそうにないですね(笑)
しかし、知的好奇心を大いにそそられるクマムシの研究は、実に楽しいでしょうね!