先日、なんとイスラエルの宇宙船が月に激突し、実験のために宇宙船の中に載っていたあの地球最強生物という「クマムシ」がばら撒かれてしまったそうです!これはなんともすごい話ですね。あのクマムシが、月に存在したらどうなるんでしょう?
これはまるでB級のSF映画にもなりそうな事件ではないでしょうか。
月にクマムシがばら撒かれた!?
先日、イスラエルの宇宙船「ベレシート」が、ミスにより月面に激突しました。パソコンのデータのように、「地球のバックアップを宇宙に残す」という計画を持っていたこの月面探査機「ベレシート」は、膨大な情報データ、人のDNAサンプルと共に、数千という「クマムシ」が載っていたそうです。では、「地球上の最強生物」と言われるクマムシは、月で生存できるんでしょうか?
以前も宇宙に上がっていたクマムシ
「クマムシ」とは、緩歩動物(かんぽどうぶつ)に属している生物で、非常に強い耐久性を持っていることが特徴です。目で見えないくらいの小さな生き物で、生存している場所は地球上のあらゆる場所です。深海のさらに奥や高山など、さまざまな極限の環境下でも存在できます。乾燥地帯では85%を占めている体重の水分を3%以下に減らし、温度は151℃〜0.0075ケルビンまで耐えられ、真空〜75000気圧という圧力まで耐えられます。さらに、放射線は紫外線・X線・ガンマ線などに耐性があるので、実はクマムシは以前にも宇宙に上げられています。
以前も紹介したように、2007年に衛星「フォトンM3」によって生きたクマムシをそのまま宇宙にさらす実験が10日間行われ、戻したクマムシを調べると、太陽光を遮って宇宙線を受け真空にさらされたクマムシは蘇生したことが確認されました。
事件の概要について
2019年4月11日午前0時、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)のスクリーンを大勢の人たちが見つめていました。モニターには同社の月面探査機「べレシート」から地球に送るデータが映し出され、この探査機の民間宇宙船では初という月面着陸が目前となっていました。
ところが、着陸するわずか数秒前、探査機が月に激突。この探査機は地球のバックアップを作るという目的で、人間のDNAなどの膨大なデータを搭載していて、このなかに休眠状態のクマムシが数千匹入っていました。このクマムシは理論上、生き返るかもしれないそうです。
クマムシは休眠状態になり代謝機能がすべて停止すると、水分がタンパク質になり、これが細胞を固くします。乾燥状態で10年間いたクマムシが生き返ったこともあるそうです。先の実験でも宇宙でも生き延びたクマムシが、休眠状態からでもよみがえるなら、誰もが「ではクマムシは今も月で生きているのでは?」と考えますよね。
しかし、この会社では、クマムシが月を「占拠」するとは思っていないそうです。もしも今後、月でクマムシが見つかった場合、そのクマムシを元に戻せるかは現時点で不明なんだそうです。「うまくいけばライブラリーは無傷のままで月面に存在し続けるかもしれない。未来には我々の子孫や未来の知的生命体が見つけてくれるかもしれない」と、同団体の創業者は話しています。
月の汚染が問題
とはいえ、想像力が豊かな人なら、「月でクマムシが成長して地球に攻めてくるかも!?」などと、B級SF映画のようなことを考えてしまうところでしょう。実際、このニュースで「月でクマムシが異常繁殖する」「巨大化するかも」といったことがネットで話されています。
しかし、このような可能性はほぼないようです。科学者はこのことについて、生命活動は液体の水が必要ですが、月の大気圧はほぼゼロで、水が存在できない場所だからとしています。変わりに、科学者がもっとも心配しているのが「月の汚染」ということです。
月にクマムシやそれに関する微生物によって汚染されると、今後月で生命の跡が見つかったとき、本当に月のものかわからなくなる可能性があるからです。こうなると最悪の場合は誤った結論になる恐れが出てきます。これは「クマムシのエイリアン」よりも実際に深刻な問題といえるでしょう。
この事件はどうなんでしょう?
探査機の事故で月にクマムシがばら撒かれてしまった話でした。人間は地球でもそれまで存在していなかった生物を新しい土地に持ち込み、その場所の環境を変えてしまったことは、何度もしています。今回のように宇宙へ生物を持ち込むことも、考えないといけないかもしれません。
しかし、「クマムシ怪獣説」は置いておくとして、今回の件はちょっと問題では?と感じたのは自分だけでしょうか。月を見たとき、そこにはウサギではなくクマムシがいると思うと、ちょっとあれですよねえ。
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