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謎の無人宇宙機「X-37B」とは?アメリカ空軍の無人宇宙往還機

2020年6月30日

1999年時点の構想図。NASAのロゴが描かれている ボーイング X-37 wikipedia

1999年時点の構想図。NASAのロゴが描かれている ボーイング X-37 wikipedia

 

みなさんは「X-37B」というアメリカの無人宇宙機をご存知でしょうか。この機体は、「謎の宇宙機」と言われています。いったいどんな機体なのか、非常に気になりますね!

 

アメリカの宇宙往還機「X-37B」とは?

ボーイング X-37 wikipedia

ボーイング X-37 wikipedia

 

X-37BはNASA・アメリカ空軍・アメリカ国防総省の「DARPA(国防高等研究計画局)」・ボーイング社が共同開発した無人の宇宙往還機です。

 

全長/8.8m

全高/2.9m

翼幅/4.5m

 

で、機体の大きさはスペースシャトルの約1/4ほどとなり、その特性もスペースシャトルに似ています。X-37Bは完全無人飛行機で、2枚のV字翼が下部にあるのが特徴的。スペースシャトルとの違いは、打ち上げでは人工衛星のようにほかのロケットの先端に搭載されて行うということです。

 

黒・白・灰色の機体カラーで、この色はほぼ高温保護素材の違いとなっています。黒の部分ではシリカ製のセラミック耐熱タイルで、大気圏に再突入する時に機体を高熱から保護します。温度が高くなる面には新開発された「TUFROC(タフロック)」というセラミック・タイルが採用され、それ以外は耐熱素材のブランケットが採用されていて、白や灰色の違いは、素材の違いなんですね。

 

機体後部には軌道変更などに使うスラスターが1基装備されていて、この推力は700N級。3.1km/sほどのスピード変化ができると推定されています。推進剤と推定される「ヒドラジン」は毒性が強いので、X-37Bが着陸した後は分厚い防護服の作業員が燃料・ガスの抜き取りをしますが、これはまるでSF映画の一場面のようです。

 

謎に包まれたX-37Bのミッション

 

しかし、この機体の目的の具体的な内容は、今までほとんど公開されていないのです。幅広いニュースを扱う「Daily Beast」は、X-37Bは「最新技術を多く持つカメラや地上マッピングレーダー、電子センサーなどのハイテク機器を搭載できる設計となっている」と説明しています。4回目の飛行では新型イオンエンジンの試験、5回目の飛行では、無重力や真空環境の電子機器放熱のために使われる素材の試験を行ったのではとされています。

 

X-37Bは、宇宙から地球に戻ってくる機体としては長期間のミッションになるのが特徴で、約2年ほど軌道に滞在して、そこで何かの耐久性についての実験をしていたとされています。実験の詳細は明らかにされていませんが、アメリカ空軍はミッションが大成功したことを強調しています。

 

「X-37Bは再利用ができる宇宙機の重要性を提示し、このミッションはアメリカの宇宙での可能性を引き上げています」

 

と、アメリカ空軍長官バーバラ・バレット氏は語っています。この謎の宇宙機X-37Bは、詳細が明らかにされていないので全世界のアマチュア「宇宙機探偵」の注目の的になっています。彼らは何年も宇宙機の軌道について記録を残していますが、宇宙でも軌道は変更できるので、この追跡は非常に難しいのです。「宇宙機探偵」は調査中の機体を見失わないために、不眠不休でいなければなりません。

 

2011年にスペースシャトルの計画が終ってからというもの、同X-37Bは現在軌道へ向かう唯一の宇宙機です。

 

 

今年行われた6回目の打ち上げ

 

このX-37Bが、2020年5月16日に、アリアンVのフェアリングに搭載されて打ち上げられ、6回目のミッションを実施しました。今回は機体の後部にサービスモジュールが付いて、さらに多くの実験を行うようです。NASAによると、宇宙放射線の長期間曝露で試料・種子が受ける影響を調べるそうです。この実験で、長期間宇宙飛行で必要になるデータが集まるでしょう。

 

 

太陽光発電の実験?

 

ここで、今回のX-37Bについての興味深いニュースがありました。アメリカの海軍研究所は、太陽の光エネルギーをマイクロウェーブにして、地上にある受信装置に照射し、電力を供給するという「マイクロウェーブ送電実験」を行うらしいのです!

このような計画があるということは、以前にもこのサイトで紹介しましたね!

 

この実験が成功して実用化すれば、前線基地・無人船舶といった、補給が難しい場所にもエネルギーを送ることができるようになるそうです。前回の話では民間企業が宇宙開発に足を踏み入れたという話でしたが、スペースXのような民間企業の宇宙開発が進んでいる一方で、アメリカ宇宙軍ではこのミッションで管制・運用の面で参加したりと、またも軍事的な進出も目立ち、宇宙空間での軍事が注目されていることが伺えます。

 

 

謎だからこそ気になりますね

 

アメリカの謎の無人宇宙機「X-37B」についてでした。ミッションの詳細が不明となっているので、そうなると気になってしまいますよね。近頃行われた6回目のミッションでは、太陽に近づいて太陽光エネルギーを地上に送るという実験をしていたかもしれないということがニュースになりました。これは非常に興味深い実験ですね。

 

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