先日、中国の「嫦娥5号(じょうが5ごう)」が、月に打ち上げられ、サンプルを回収して地球に帰還したというニュースがありましたね。ところで、みなさんは中国の宇宙開発についてどれくらいご存じでしょうか?
普通は、「ほとんど知らない」という感じですよね?
現在、中国の宇宙開発は、「中国国家航天局」という中国の機関が行っているそうです。アメリカのNASAならだれもが知っているでしょうが、中国国家航天局といのは、なじみがまったくない感じですよね?
そこで、今回は普通の日本人には謎のベールに包まれている(笑)、「中国国家航天局」について説明してみましょう。
中国の行政機関のひとつ
中国の宇宙開発機関、「中国国家航天局」は、[ちゅうごくこっかこうてんきょく]と読みます。中国国家航天局は中国の民用宇宙開発を管轄していてる行政機関の一つで、中華人民共和国国務院に属している「工業情報化部」という行政部門が管理している国家局です。
ただ、軍用の宇宙開発は「人民解放軍」が管轄しているので担当外になります。中国の首都である北京に本部があり、ロケット射場が4箇所あります。管制センターやロケット射場の管理は「人民解放軍総装備部」が行っていて、人民解放軍の将兵が任務をしています。
中国国家航天局はいつできた?
「中国国家航天局」というのは、日本人にはほとんど知られていない機関ですよね。いつごろできた機関で、どのような歴史があるのでしょうか。1992年以降、改革開放を進めていた中国は、国家予算に頼らない独立した採算運営を目指すし、1993年6月、中国国家航天局と中国航天科技集団公司を設立しました。
中国国家航天局は国家機関として宇宙開発を担当し、中国航天科技集団公司は国営の企業としてその運用を担当することになります。ちなみに、これ以前の中国では、「中国航空航天工業部(MOS)」が宇宙開発を担っていました。中国国家航天局と中国航天科技集団公司の目的・運営形態は違いますが、両者の間で指導部・人員の共通部分が多かったため、実質的にほとんど同一組織でした。
それが1998年に行われた大規模な構造改革により、工業公司は国家所有の企業に分割されました。これは、政府が方針を決めて、その要求を国家が所有していても運営はしないような企業に発注するといった、欧米における防衛産業と同じ様な形態を意図したとされます。
中国国家航天局とNASAは連携!?
アメリカの宇宙開発といえばもちろんNASAですが、中国の国家航天局とはどのような関係があるのでしょうか。互いに超大国である両国は宇宙開発で競い合っているらしいので、どうなんだろうと思うかもしれませんが、2019年1月には、NASAは月探査で中国国家航天局と連携関係にあると公表しています。
NASAの科学局長トーマス・ザブーケン氏は、「NASAは連邦議会から承認を得て、中国の探査機「嫦娥4号」の月に着陸した痕跡を、アメリカの宇宙船にある装置で観測できるかどうか、中国と協議している」とツイッターに投稿しました。これは、中国の月探査計画の副責任者、呉艷華氏が公表した件を裏付けます。
同氏は、NASAがアメリカの衛星で集めた情報を中国と共有し、中国はアメリカに緯度・経度・着陸時間について伝えたと語っていました。この連携の成果は、国連の宇宙に関する会議で世界の研究者たちに発表されるそうです。競い合っているとされる両国の宇宙開発ですが、連携関係ができればいいことになりますね。
中国が建造中の宇宙ステーション
また、中国では現在、宇宙ステーションを建造中のようです。これは、中国の宇宙開発の主要企業、「中国航天科技集団」が総合設計をしている、中国が有人宇宙飛行の技術を取得し長期にわたる宇宙の有人科学実験、宇宙資源の開発・利用を展開する準備を目的にする施設です。
中国の宇宙ステーション建造は、国家の発展戦略目標等の原則に合い、先進技術を利用して有効性を高め、運営経済性も追求しており、重量100トン・定員3人という規模になるようです。この宇宙ステーションは、もちろん将来的に中国の宇宙科学研究の主要プラットフォームとなります。
中国の宇宙ステーションには、
・宇宙空間施設の建造運営技術を得て、それを国際宇宙ステーションのレベルのものとすること
・宇宙飛行士の宇宙での生活と健康を保証する技術を得ること
・「国家宇宙実験室」を建設し、ハイレベルな科学研究プラットフォームを科学者に提供、科学関連領域において重大な目標を達成すること
という3つの目標があるそうです。現在稼働している「国際宇宙ステーション」は、1998年にアメリカなどの16か国が共同建造しましたが、中国はこの建造から排除されていたので、独自に宇宙ステーションの建設に取り組んでいました。
中国の宇宙ステーションの完成は2022年に予定されており、国際宇宙ステーションは2024年に退役が予定されています。となると、今後は中国の宇宙ステーションが唯一の稼働している宇宙ステーションになる可能性があり、このため、多くの国が共同宇宙開発実験プロジェクトを中国に申し出ています。
2016年、中国有人宇宙飛行プロジェクト弁公室が、他国の宇宙飛行士・専門家に軌道飛行の場を提供することに同意した国連協議書に署名しています。これまで申請があった27か国の国際協力プロジェクトから、17か国9プロジェクトを選んでいます。
やはり「中国版NASA」でしょう
中国の宇宙開発機関、「中国国家航天局」についてでした。これは、簡単に言えばやはり中国版NASAということですね。NASAとの関係はどうなんだろうという感じですが、連携することもあるようなので、一安心という感じでしょうか。また、2022年に完成予定の中国の宇宙ステーションも、もちろん中国一国だけで、ということではないので、国際社会の期待が寄せられています。