宇宙の銀河にはいろいろな名称がつけられていますが、みなさんは「かみのけ座銀河団」という銀河団があることをご存じでしょうか?
これは、かなりマイナーな銀河ですよねえ。また、この方向には「かみのけ座」という星座があります。「そんなのあったの?」という人も多いでしょう。知らないからこそ知りたい!
ということで、今回はこの「かみのけ座」や「かみのけ座銀河団」について紹介してみます。
かみのけ座銀河とは?
「かみのけ座銀河団」とは、地球から3.21億光年先にあるという、少なくとも1000個以上の銀河がある大銀河団です。さらに、「ししざ銀河団」とあわせて「かみのけ座超銀河団」を構成しているというからスケールがとんでもないですね。中央にある銀河は楕円銀河や矮小銀河が大半を占めています。
かみのけ座の物語
かみのけ座銀河団の方向に「かみのけ座」という星座があります。今までこの星座を知らなかった人は、なぜ、このような一風変わった名前が付けられているのか不思議に思うでしょう。
かみのけ座はしし座とうしかい座の間にある星座ですが、中世まではこの方角に星の集まりがあることは知られていたものの、星座としては認識されていませんでした。
かみのけ座を確立させたのははカスパル・フォペルがというドイツ人で、1536年に自分の天球儀に描いたのが最初とされています。その後、「メルカトル図法」で知られるゲラルドゥス・メルカトルが1551年にこれを取り上げ、以降だんだんと世間に知られるようになりました。
この星座は、ストーリーがあります。
紀元前3世紀ごろ、エジプト王プトレマイオス3世の王妃ベレニケは、かみの毛の美しさが広く国外にも知られていました、プトレマイオス3世が戦争に向かったときに、ベレニケはその髪をばっさりと切って、アフロディテの神殿に王の無事を祈るために捧げました。
王が戦いに勝ってもどってくると、その祭壇から髪の毛が消えていました。王と王妃に聞かれた天文学者はこれについて「王妃の行いに感心した大神ゼウスが天に上げ星座にしたのです」とかみのけ座を指したという話です。
かみのけ座の探し方は?
そんなかみのけ座ですが、どこにあるのか知らないという人も多いでしょう。かみのけ座は、星座を構成しているほとんどが「散開星団」になっているという、珍しい星座です。
北斗七星・うしかい座・おとめ座・しし座に囲まれている領域で、小さな星の群れがわずかにある、という見え方になります。
探し方は、「春の大三角形」をまず探すというものがあります。春の大三角形とは、うしかい座「アークトゥルス」、おとめ座「スピカ」、しし座「デネボラ」からなる三角形で、アークトゥルスとデネボラの西にかみのけ座があります。
また、この春の大三角にりょうけん座「コル・カロリ」を加えて四角形とするのが「春のダイヤモンド」ですが、この中にかみのけ座があります。
超暗黒銀河とは?
国立天文台ハワイ観測所にあるすばる望遠鏡が観測したデータは世界に公開されていますが、2015年6月、そのデータからかみのけ座銀河団に「超暗黒銀河」という銀河が854個あることをニューヨーク州立大学と国立天文台の研究チームが発見しました。
「超暗黒銀河」というのは、大きさは天の川銀河と同じなのに、星の数が天の川銀河の1000分の1というとても薄く見える銀河です。なぜこのようなかたちになったのかというと、銀河ができた後で何かの原因で星の材料のガスがなくなってしまったためとされています。
この超暗黒銀河はかみのけ座銀河に古くから存在していた古い天体ということが判明しました。この発見に研究者たちは注目しました。なぜなら、この超暗黒銀河は銀河が形成していく過程の研究のカギになるかもしれないからです。
ただし、超暗黒銀河の99%以上である暗黒物質は、銀河の星の動きから探ることができますが、超暗黒銀河の特質である「淡さ」のため、すばる望遠鏡でもこの観測が非常に困難だそうです。そこで、日本等の5か国が協力して建設しているという次世代の超大型望遠鏡であるTMT(Thirty Meter Telescope)が期待されています。
探しやすい季節は春
一般的にはあまりマイナーな「かみのけ座」「かみのけ座銀河」についてでした。いやー、一般的には「こんな星座・銀河団があったのか」という感じですね。星座にまつわるストーリーも面白いものがありました。かみのけ座が観察しやすい季節は春とされています。今度の春には、かみのけ座を探してみてはいかがでしょうか。
参考:854 個もの「超暗黒銀河」をすばる望遠鏡アーカイブから発見
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