宇宙雑学

ネプチュニア砂漠に存在した「禁断の惑星」とは?

2019年6月17日

 

このたび、「ネプチュニア砂漠」という、惑星が存在しないはずの領域で惑星が発見されました。このように摩訶不思議な惑星なので、「禁断の惑星」とも言われています。ないはずの場所に見つかった惑星というのは、いったいどういうことなんでしょうか?

 

今回はこのネプチュニア砂漠に見つかった「NGTS-4b」ついて紹介しましょう。

 

「ネプチュニア砂漠」でありえない惑星が発見される

 

先日、これまで既存の理論で海王星ほどの大きさの惑星は存在しないと考えられていた「ネプチュニア砂漠」という領域に、なんと海王星の8割というサイズの惑星が発見されました。

 

これを発見したのは、イギリス・ウォーリック大学の天文学グループが率いている国際研究チームです。国政というだけあって、NGTS-4bの観測はウォリック大学以外にも、ジュネーブ天文台・ドイツ航空宇宙センター・チリ大学・クイーンズ大学ベルファスト校も携わっていました。

 

この発見は、「The Next Generation Transit Survey(次世代トランジットサーベイ)」の略称、NGTSという、太陽系外惑星をトランジット法によって観測するというプロジェクトのひとつです。

 

惑星を探す「トランジット法」とは?

 

では、トランジット法とはなんなのでしょうか。

 

新惑星を見つけるために探すのが、天体自身の光の減少です。天体を周回している惑星がある場合、天体が発している光は遮られるため、これが手がかりになるわけですね。この惑星が恒星を横切る現象を「トランジット」といい、つまり恒星が減光することで惑星を見つけ方法がトランジット法なのです。

 

トランジット惑星が食を起こすときは主星を一部だけ隠すので、主星が小さく減光することで観測されます。そのときの主星の明るさをモニターしたデータを解析して、減光の深さ・主星と惑星のサイズの違い、減光の継続時間によって惑星の軌道傾斜角や主星の密度等を求めること可能です。

 

さらに、これらの情報を「視線速度法」から得た惑星の情報と合わせれば、惑星の密度も調べることができて、トランジット惑星がガスでできているのか岩石のような密度の大きい物質でできているのか等も調べることができるのです。

 

「トランジットサーベイ」というのも普通の人は聞いたことがないですよね。これは、トランジット惑星を探す方法のひとつです。トランジット法には「測光フォローアップ」と「トランジットサーベイ」という、大きくわけるとふたつの種類があります。

 

「測光フォローアップ」というのは、視線速度法で見つけた惑星がトランジットをしているか、それが起こると予想される時刻に測光観測をして調べるという方法です。1999年にトランジットが確認された初のトランジット惑星「HD209458b」も、測光フォローアップによって発見されました。

 

視線速度法で発見したこの惑星に口径28cmの望遠鏡を使って測光フォローアップを行い、約1%という減光を捉えました。これを発見したのが大学院の生徒だったように、現在では惑星のトランジットを、世界中のアマチュア天文家・天文部の高校生や大学生たちが観測しています。

 

では「トランジットサーベイ」はどんなものかというと、惑星があるかどうかが不明な非常に多くの星の明るさを調べて、周期的に減光をしている恒星を探す方法です。

 

NASAが2009年に打ち上げたトランジットサーベイ専用ケプラー宇宙望遠鏡により、既に1000個以上のトランジット惑星が見つかっています。現在でもトランジットサーベイは多く続けられていて、無数の地上観測グループが毎日のようにトランジット惑星を探索しています。

 

「XO」や「KELT」といったトランジットサーベイのグループには、アマチュアの天文家も精力的に参加しているそうです。2014年からはケプラー宇宙望遠鏡も、「K2計画」として黄道面におけるトランジット惑星を探しています。

 

 

禁断の惑星の正体は?

チリ f

 

「NGTS-4b」は、南米チリにあるNGTS設備の観測データに基づいて確認されました。

 

地上にあるたいていの望遠鏡では天体の1%以上の減光を捉えられるのですが、チリのNGTSにある望遠鏡ではわずか0.2%の減光も探知できるという精度を備えています。天文学者の間でこの天体は「禁断の惑星」と呼ばれています。

 

NGTS-4bは地球の3倍くらいの大きさですが、これはこれまでの理論では説明いかない大きさの惑星です。地表温度は約1,000℃で、恒星の周囲を1.3日で一周しています。

 

恒星近くにある「ネプチュニア砂漠」という場所は、もしそこに惑星が存在していても、恒星から強い照射で表面にあるガスが蒸発することで、硬い岩の芯だけが残っていることが通常なんですが(つまり大きいサイズの惑星はない)、NGTS-4bはガスが地表に存在しているという非常に珍しい惑星です。ちなみに、NGTS-4bはネプチュニア砂漠で見つかった初の太陽系外惑星になります。

 

 

100万年の間に他の場所から移動してきたとも

 

研究チームの考えでは、この惑星はネプチュニア砂漠に過去100万年の間に他の場所から移動してきたのではないかとしています。また、サイズがあまりに大きいので、大気が蒸発途中だったという可能性もあるでしょう。

 

海王星 / wikipediaより引用

海王星 / wikipediaより引用

 

ウォリック大学のRichard West博士は、「海王星サイズの惑星は存在できないとされていた場所で見つかったこの惑星はタフなのでしょう。0.2%以下の減光によって惑星を見つけることができたことは驚くべきこと。これまでの天体望遠鏡には不可能でした」と語ります。研究チームはネプチュニア砂漠の惑星を探るためデータ解析を進めています。これまでは不毛の地とされていたネプチュニア砂漠は、思いのほか豊かだったのかもしれません。

 

 

惑星を探す方法も興味深い

 

不毛の地とされていたネプチュニア砂漠で発見された「NGTS-4b」についてでした。海王星くらいの大きいサイズの惑星がないといわれていた場所に、海王星の8割ほどの惑星があったということで、これもまた宇宙にある無数のミステリーのひとつですね。

 

やはり、宇宙には数え切れないくらいの不思議があって面白いですねえ。また、こういった惑星を探すトランジット法・トランジットサーベイという方法も、すごい綿密なことをやっているということがわかって勉強になりますね。
 

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