今年2018年の6月18日、アメリカのトランプ大統領が宇宙軍を創立するという意向を示したことが話題となりました。
ほんとうにアメリカに宇宙軍は創立されるのでしょうか?
この記事の目次
「アメリカ宇宙軍」はかつて存在していた
宇宙という空間はまだまだ人間にとってなじみがある場所ではないですよね。
そのため、「宇宙軍ってなに?どういうこと?」と思う人もいるかもしれません。
しかし実は、「アメリカ宇宙軍」というのは、かつて1985年からアメリカの統合軍のひとつとして存在していたのです。
それが2002年の10月に「アメリカ戦略軍」の一部になっていたのですが、
このたびアメリカのトランプ大統領が、アメリカ軍の6番目にあたる「宇宙軍」を創設する案をを2018年6月18日の国際宇宙委員会の会議で発表しました。
トランプ大統領は「空軍・宇宙軍は、分離でありながら同等の軍となり、重要な存在になるだろう」と発言しました。
トランプ大統領が宇宙軍について語ったのは初めてではなく、今年3月にも宇宙軍の構想について語りましたが、国防長官のジェームズ・マティス氏は軍の新設に反対していたため意見が食い違い、マティス氏は書簡の中で反対の意を述べています。
個人の思いつきで新しい軍は創れません
現在、アメリカの宇宙における国家安全保障の多くは、空軍のひとつ「アメリカ空軍宇宙軍」が行っています。
そこでは国防省が打ち上げる人工衛星の監督・管理なども行われています。
これがもしも宇宙軍が創立されるとなれば、とんでもなく大変な変化になると言われています。
数万人の規模で人事異動が行われるので軽々しくはできないものなのですが、
トランプ大統領は宇宙軍について持論を述べています。
「国家のアイディンティティだけでなく、国家安全保障の問題にもなる極めて重要な
この件についてみんなは話さない」
実際にはトランプ大統領はこの中で詳しい構想や財源を語ったわけではなく、新しい軍を個人の思いつきで創るということはいかに大統領でもできません。
宇宙軍を創立させるためには、まず議会で法案を通過させ、予算を充てる必要があります。
宇宙の衛星を守るため
トランプ大統領の言う「国家安全保障の問題」とはどのようなものなんでしょうか。
現在のアメリカ軍、またそのほかの国の軍でも、機能の大半は宇宙空間の「衛星」に依存しているということはご存知でしたか?
通信衛星や情報収集衛星、GPS衛星から、ミサイルが発射されたことをいち早く探知できる衛星まで、数多くの衛星が軍に使われています。
現在の軍というのは、このような宇宙の衛星がなければ維持できない状況なのです。
このような衛星依存というものは、逆に言えば軍にとって最大の弱点にもなるでしょう。
現に中国やロシアでは衛星を破壊する兵器を開発しているようです。
衛星は他国の軍だけが「敵」ではありません。
宇宙に浮かぶゴミである「スペースデブリ」は無数に存在し、猛スピードで宇宙を飛んでいます。
スペースデブリと衛星が衝突することで、その機能が停止してしまう危険性もあるでしょう。
このようなことから、宇宙軍という宇宙専門組織を創り、衛星依存のアメリカ軍のサポートをするという狙いがあるわけですね。
アメリカが宇宙を支配しなければならない?
そして今年8月9日、アメリカのトランプ政権は2020年までに宇宙軍を創設するという計画をペンス副大統領が発表しました。
これは宇宙空間の軍事的な活動を広げている中国・ロシアへの措置とされていて、トランプ大統領とペンス氏は「アメリカが宇宙を支配しなければ
ならない」と、かなりの強気(大言?)な発言をしています。
上記のように、宇宙軍は宇宙に浮かぶ「衛星」に対しての配慮が大きいのです。衛星というものは秒速7・9キロという猛スピードで飛んでいます。
そのため進行方向も変えにくく、ということはその衛星の軌道を分析すれば容易に長距離ミサイルによって撃ち落されてしまうということになります。
実際、アメリカは1985年に通信衛星をミサイルで破壊するという実験に成功しています。
1967年の「宇宙条約」では、宇宙空間に核兵器などの危険な兵器を宇宙に配置することを
禁止していますが、「大陸間弾道弾」は禁止していないため、通常の兵器を侵略以外で置くことは可能とされています。
このようなことから、衛星を保護することは急務かつ重要ということになります。
また、今回の発表で実際に宇宙軍が2020年に創立されれば、この年11月に行われる
大統領選挙についてのアピール材料にもできるという意味もあるようです。
新しい軍は歓迎されない?
もうひとつは、1980年代にアメリカで進められた「戦略防衛構想」、SDIを踏襲するのではということです。
これは、最新兵器で当時は脅威となっていた核兵器を無効化する計画で、結局これは成功しませんでしたが、結果的にこの計画が当時のアメリカのライバルであったソ連を崩壊させたという面があるため、この狙いも考えているのかもしれません。
ただ、現在ただでさえ少ない予算の取り合いをしている軍で、そこに新しい組織が加わるというのは厳しいものがあるでしょう。
特にアメリカ空軍は昔から、「宇宙と地球の空を区別することはない」という意見が強いので、
新入生に厳しい先輩のように、宇宙軍は歓迎されないかもしれません。
議会や軍が好意的にとらえなければ、トランプ大統領が描く宇宙軍は立ち消えする可能性もあるとされています。
宇宙軍は誕生するのでしょうか
トランプ大統領がたびたび触れている、アメリカの宇宙軍についてでした。
普通の人なら、「エイリアンとでも戦うのかな?」と思うかもしれませんが、宇宙軍というのは衛星を守るという、国家安全保障のことからも必要ということですね。