探査機

ソ連の「ルノホート2号」とは?遠隔操作で月を移動しながら調査!

2019年4月4日

ルノホート2号 wikipedia

ルノホート2号 wikipedia

 

最近までNASAの火星探査機「オポチュニティ」にその記録が破られるまで、ソ連の「ルノホート2号」という探査機は、地球以外の探査機の走行でもっとも長い距離の記録を維持していました。

 

しかし、この探査機は一般的にはあまり知られていませんよね?

というわけで、マイナーですがこれまですごい記録を持っていたルノホート2号についてご紹介しましょう。

 

「ルノホート2号」とは?

ルノホート2号を描いたソ連の切手 wikipedia

ルノホート2号を描いたソ連の切手 wikipedia

 

「ルノホート2号」は、1970年代にソビエト連邦(現ロシア)が月に送り込んだ月面探査車です。2号ということは当然1号機もあり、このふたつは「ルノホート計画」の探査機です。

 

ルノホート計画というのは、当時のソ連が1969年から1977年まで行った「月にロボット探査車を投入する計画」です。

ちなみに、ルノホートというのはロシア語で「月を歩くもの」という意味です。

 

1号機であるルノホート1号が1970年11月に月に着陸して、ルノホート2号は1973年1月に月に着陸しました。

 

3号機は1977年に打ち上げられる予定でしたが予算などのために実現しませんでした。この計画はソ連のほかの「ゾンド計画」や「ルナ計画」といった月のミッションと平行で行われました。

 

ルノホートはもともと実現しなかった有人宇宙船での月接近飛行・月面着陸計画の「ソビエト・ムーンショット計画」のために作られ、遠隔操作のロボットで月表面を探査・撮影した写真を地球に送り返す計画でした。

 

ルノホートは「プロトンロケット」によって打ち上げられ、ルナ計画の「ルナ探査機」から月で展開されました。

 

このため、「ルナ」と「ルナホート」という機体があってまぎらわしいのですが、ルナホート2号は探査「車」で、「ルナ21号機」によって月で展開され、月を移動しながら観測しました。

 

ルノホート2号は地球から遠隔操作で動いていた!

ルノホートの車輪 wikipedia

ルノホートの車輪 wikipedia

 

ルノホート2号は

 

・高さ135cm

・長さ170cm

・幅160cm

・重量840kg

 

という大きさで、独立懸架・モーター・ブレーキ構造をそれぞれに持っている8つの車輪で、約1km/h・約2km/hという2速で走行できました。

 

土質力学試験機や太陽X線実験器、天体写真器具や光検出器、レーザーコーナーキューブなどのさまざまな科学機器が搭載されて、主なミッションである

 

・月面画像収集

・光レベルの調査

・地球からのレーザー測定の実験

・太陽からくるX線観測

・月面磁場測定

・月面の物質の土質力学研究

 

などの調査に使われました。

 

ビデオカメラを2台、パノラマカメラを4台積んでいて、画像は地上コントロールチーム5人に利用されて、リアルタイムにより運転コマンドを探査車に送っていました。1970年代のこの時代に、月にコマンドを送ることができたというのがおどろきですね!

 

 

 

動かなくなって役目を終えたルノホート2号

 

ルノホート2号は昼間に走行して、太陽光パネルのバッテリーが切れると再充電のため途中で停止しました。長い夜になると休止状態に入り、この間は「ポロニウム210放射性同位体加熱ユニット」の崩壊熱によって保温していました。

 

ルノホート2号は1973年1月から1973年6月まで運用され、高地・裂溝を含めた地域を37kmを走破しました。これは、2013年の6月にNASAの火星探査機「オポチュニティ」によって破られるまで、地球外天体での探査車両でもっとも長い走行距離でした。

 

また、2013年7月にルノホート2号をNASAののカメラで確認したところ、37kmよりも4.8km長い約42kmを走行をしていたことが判明しています。ルノホート2号は上記のような調査を行い、86枚のパノラマ画像や80000以上の映像を地球に送りました。

 

レーザーレンジング測定等のさまざまな機械テスト・実験も期間中に完了し、1973年6月4日にルノホート2号のミッション終了が発表されました。これは、この先月の5月中ごろの故障、またはそれまでの夜に回復できなくなったためと考えられていました。最近ではその原因が、開いたままになった蓋部分がクレーターの壁とぶつかり、土砂が入ったからではないかと考えられています。

 

夜の間、土砂が絶縁ラジエーターに落ち、放熱を妨げたためとされます。昼になると、内部温度が冷却できないかのように上昇していて、これが操作不可能になった原因と推測されています。

 

 

地球外天体での探査車両のさきがけ

 

ソ連の月探査車「ルノホート2号」についてでした。今でこそ、宇宙と言えばNASAの独壇場という感じですが、初めて宇宙に行ったガガーリンのように、以前はロシアが先に進んでいた時代があったんですね。

 

最近までルノホート2号が地球外天体の探査機の走行距離記録を持っていたというので、いかにこの探査機がすごかったがということがわかるでしょう。

 

 

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