先日、国際宇宙ステーション・ISSの圧力が一時減少したというニュースがありました。しかし、普通の人にとっては「宇宙ステーションの圧力」とはそもそもなんなのかわからない感じですよね?
今回はその辺を探ってみました。
ISSの圧力が減少したニュース
宇宙ステーションというのは、地球の軌道上等の宇宙で人間が生活するための施設です。これはおおまかにいえば宇宙船のひとつですが、人工天体に分類されます。SF作品でおなじみのため、宇宙ステーションといえば地球から離れた宇宙にあるというイメージがありますが、現在の宇宙ステーションは地球の軌道上にあります。
宇宙ステーションとして一番有名なのがやはり国際宇宙ステーションの「ISS(International Space Station)」です。現在の国際宇宙ステーションは人間が滞在していて、そこで宇宙でしかできない科学の実験が行われています。
アメリカやロシア、ヨーロッパの主要国(ESA)や日本など、世界の主要な国のほとんどが共同開発していて、2011年に完成しました。重量は約420トンで、これは地球の軌道で最大の人工物です。2018年の8月30日9:30ごろ、ISSの船内で空気圧力がわずかに低下しているという報告がNASAからありました。
調査の結果、ISSの船内で起きていた空気の圧力の低下は、「ロシアサービスモジュール」のソユーズ宇宙船のモジュール内にあった2cmくらいの穴のためだったことがわかり、宇宙飛行士がこの補修をしました。また、ロシアモジュールに係留していたプログレス補給船から空気を供給して、現在ではISSの船内圧力は通常範囲で安定しているということです。
また、この圧力低下による宇宙飛行士は影響なかったようです。
宇宙ステーションの気圧とは?
普通の人なら、「宇宙ステーションの気圧ってなに?」という感じですよね。地球には空気がありますが、宇宙は真空で空気がありません。空気がある環境のことを「大気」といいます。
人間は空気の圧力である「大気圧」がないと体内の圧力バランスが機能できなくなって生きてはいけないので、宇宙船・宇宙ステーションでは気圧が必要になるわけです。また、宇宙の外で活動する場合に着る宇宙服も、内部気圧を保つ機能をもっています。
国際宇宙ステーションで使われている空気は、エアロックの「クエスト」外壁に置かれている高圧ガスタンクから、各モジュールへ地球と同じ空気組成である「1気圧」が供給されます。スペースシャトルと国際宇宙ステーションがドッキングするときは、スペースシャトル側から酸素・窒素が国際宇宙ステーションのガスタンクに補給します。
地球の空気というのは、酸素が21%・窒素79%で構成されていることをご存知でしたか?その他成分も多少含まれますが、このふたつがあれば空気になります。ロシア・アメリカのモジュール内は「空気浄化装置」が搭載されていて、有害となる二酸化炭素等が除去されているのです。
日本の「きぼう」内には環境制御系装置があって、ここでは空気循環・温度/湿度調整・圧力/酸素分圧の制御・環境監視等の細かな制御をしています。今回のように圧力が低下した時にいきなり酸素を補給すると、酸素量が増えることで火災等の原因になる可能性があります。
そのため、あらゆる圧力環境下においても、酸素・窒素の比率を最適に調整する機能が「酸素分圧制御」です。船内の空気のリサイクルも現在は進歩していて、ロシア・アメリカの装置では水から酸素を作ることもできます。
このため、補給船等の酸素・空気の補給量は減少しているという現状があります。
打ち上げ前から開いていた!?
このニュースをロシアではどのように報道したのでしょうか。国際宇宙ステーションに接続されていたソユーズ宇宙船に開いていた穴が原因となって国際宇宙ステーションの空気の圧力がわずかに低下した件について、ロシアのロケット関係者は、ソユーズが地上で整備されているときに過失によって穴が開けられ、措置も完全ではなかったと明らかにしました。
怠慢が原因だったのではないかと国営ロシア通信は報じています。つまりこの問題となった穴は、2018年6月の、ソユーズ宇宙船が打ち上げられる前に開いていたようです。
また、これをふさぐために使った密閉剤も乾燥したため、圧力によって穴が開いてしまったのではないかとされています。ロシア通信は、この責任者が判明したとも報じています。ロシアの国営宇宙開発企業であるロスコスモスの社長は、隕石の衝突が原因という見解を示していましたが…?
ロシアと言えば過去の宇宙開発のトップランナーであり、現在でもロケット開発では世界一とされています。このような事件が起こると、ロシアの宇宙開発はどうしてしまったのかと問題にもなってしまいますね。
宇宙ステーションの管理は大変
国際宇宙ステーションの圧力低下事件についてでした。今回は何事もなかったのでよかったですが、こういった些細なことも放っておけば重要なことになりうるので、やはり宇宙ステーションの管理は大変ですね。