今年2020年2月に打ち上げ成功したESAとNASAの太陽探査機「ソーラー・オービター」が、6月15日に地球から太陽の距離の約半分である約7700万kmの距離を飛行し、初めて接近した太陽の観測を行いました。
撮影された画像には、太陽の「キャンプファイア」という現象が映っていたそうです。太陽の「キャンプファイア」というのは、これまであまり聞いたことがないものですが、いったいどんなものなんでしょうか?
太陽の「キャンプファイヤー」について
ESA・欧州宇宙機関とNASAの太陽を観測するための宇宙機「ソーラー・オービター」は、今年2020年2月に無事打ち上げに成功し、太陽を目指しています。太陽へ最接近する半月前の5月30日、ソーラー・オービターは極端紫外線の波長を使った紫外線撮像装置で太陽を撮影しました。
画像には、摂氏約100万度という「太陽コロナ」が映っていました。「太陽コロナ」とは、太陽の外層にある大気の一番外側にある、100万ケルビン(熱力学温度)以上のガス層です。通常は光球・彩層の光が強いので目視はできませんが、皆既日食では肉眼で見ることもでき、「コロナグラフ」という機器を使うことでいつでも観測することができます。
主成分は水素原子が原子核・電子に分解されたプラズマ。6,000K程の光球から遠くにあるコロナが100万K以上まで加熱されるシステムのことである「コロナ加熱」は不明な点があるため、「コロナ加熱問題」と言われています。
そして6月15日、ソーラー・オービターが地球と太陽のほぼ中間地点という約7700万kmで初の太陽の接近観測をしたところ、太陽の表面付近に「キャンプファイア」という呼び名がついた、小さいフレアが発生していたそうです。
ソーラー・オービターは、太陽やその周辺を多くの波長でとらえることができる6台の望遠鏡などの、10種の機器を搭載しています。ソーラー・オービター以上に太陽に接近した探査機も以前にありましたが、これらは太陽表面の姿を撮影する機器を持っていませんでした。
ということで、今回メディアに公開された画像が、史上最も太陽に接近して撮影したものになります。太陽コロナを極紫外線撮像器が高解像度撮影したところ、表面に未知の特徴が散見されました。この機器の主任研究員David Berghmans氏は、これに「キャンプファイア」という名前をつけました。
キャンプファイアは、「ミニ太陽フレア」のようなものかもしれません。太陽フレアとは太陽の爆発現象で、太陽系最大の爆発現象であり、小さい規模では1日に3回は起きているそうです。太陽フレアは、太陽コロナに溜まった磁場エネルギーが爆発することで起きる現象で、キャンプファイアはこの太陽フレアの数百万分の1〜数十億分の1という規模です。
太陽は遠くから見れば穏やかにみえますが、近くで見るといたるところでこのミニ太陽フレアが見つかるようです。
上記のように、太陽表面温度と外側の太陽コロナの非常に高い温度差を指す「コロナ加熱問題」は不明ですが、今回のキャンプファイアがそれを解明するカギになるかもしれません。正しくキャンプファイアの温度が判明すれば、性質などもわかってくるとされています。
ベルギー王立天文台のDavid Berghmans氏は、このキャンプファイアは地球から確認できる太陽フレアよりだいぶ小規模なものの、太陽のいろいろなところにあると語ります。フランス宇宙天体物理学研究所のFrederic Auchere氏は「キャンプファイアは小さいものですが、これらが無数に合わさって、太陽コロナの熱の大きな原因になっているのかもしれません」としています。
関係者のサイエンティスト、Daniel Muller氏は、これまで未知の存在だった小さいフレア「キャンプファイヤー」の撮影成功は「ほんのスタートにすぎません」と語ります。ソーラー・オービターは今後、金星/地球の重力によって軌道変更する「スイングバイ」を繰り返して、地球から太陽までの距離のおよそ3分の1弱である、太陽から4200万kmにまで接近するという予定となっています。
太陽コロナの解明になるかも
太陽探査機ソーラー・オービターが撮影した「キャンプファイア」についてでした。「キャンプファイア」というのはこれまで未知のもので、こういった名前がついたのも今回初めて見つかってからなんですね。どうりで聞いたことがない名前だったわけです。
太陽に無数にあるというキャンプファイア、とっても熱そうです(笑)
謎とされているあの「太陽コロナ」の機構解明のキーになるかもしれないということで、これで太陽についての理解が深まるかもしれません。