今年の「中秋の名月」は、今月の1日でしたね。みなさんはこの日、よい月が見られましたか?
ところで、中秋の名月って、ふつうはあまり気にかけていないかもしれませんが、日にちが毎年違うんですね。今回はこの中秋の名月・十五夜について、月見の歴史や日にちなどについて徹底紹介してみましょう。毎年恒例のイベント、中秋の名月(月見)は、いったいどのようなものなんでしょうか?
団子屋さんが混んでいた
最近、町を歩いていると、団子屋さんが混んでいる!?
どこの団子屋さんでもけっこうな混みようだったんですね。なんでだろう、と考えると、ああ、「中秋の名月だからかな」となりまして(笑)
中秋の名月といえば、やはり「団子」ですよね〜。
そういえば、大手ハンバーガーチェーンなどの飲食店でも、「月見〜」などがこの時期売られていますね。中秋の名月とは、「お月見」のひとつです。月見というのは、読んで字のごとく月を見て楽しむ風習で、主に満月を見て楽しみます。時期は旧暦では8月15日〜16日の夜で、現在は旧暦と1・2か月のずれがあるので、9月7日〜10月8日のいずれかの日です。
日本や中国では、昔から「月を愛でて楽しむ」という風習があったというのはおなじみですね。日本では、なんとあの縄文時代からあったそうです。
「中秋の名月」のような風習は、中国の唐代からあったとされており、宋代の「東京夢華録(生きた当時の都市生活を描いた書。日本の「東京」ではない)」には、身分を関わずこの日は街全体で夜通し騒いでいる様子が書かれています。この風習が859年〜877年頃、日本に入ってきました。平安時代にもなると月見の規模が大きくなって、919年には日本独自の「十三夜の月見」を宇多法皇が催しました。
そのころの日本での月見は貴族たちだけのもので、詩歌・管絃を楽しんで酒を酌むという雅味な催しで、この頃はまだ願掛け・供え物などの宗教的要素がない、月を眺めて楽しむものでした。中国の「煕朝楽事」によれば、明代になると名月の日に供え物・月餅を贈るという習慣が始まったとされ、日本では室町時代の後期から、名月の日に月を拝んでお供えをするという風習が始まったとされています。東アジアでは、旧暦8月15日は月見以前から「サトイモ」収穫祭があった地域が多くあったとされ、日本でもこの日にサトイモを食べる習慣があったそうです。
江戸時代前期にもなると月見の風習も庶民にまでいきわたり、当時は十五夜の日に「芋煮」を食べて夜遊びをする人が多かったそうです。月見団子等の供え物は、江戸中期以降からとされています。江戸後期の風俗を記録した「守貞漫稿」では、十五夜の日に祭壇をこしらえて、江戸は球形、京阪はサトイモの形の月見団子を供えたと記録されています。
ちなみに、中国・韓国・日本などのアジア圏ではこの習慣はありますが、ヨーロッパではあの「オオカミ男」のように満月は不吉とされているのため、このような習慣はないようです。
なぜこの日が名月に?
「中秋の名月」の日は、なぜ名月になるのでしょうか。それは、旧暦8月半ば(現在9月・10月)の秋分の日は、北半球から見える月の位置が月見に最も適しているからです。夏場の太陽の位置は高く、逆に冬場は低いのですが、地球から見える満月は太陽の反対側なので、夏の満月は位置が低く、逆に冬は高いということになります。
そのため、私たちが頭上を見上げるには、春または秋の満月がベストの高さということになります。また、春と秋では天気の良さが秋のほうが良いということから、秋がもっとも月見に適した時期ということなんですね。現代のグレゴリオ暦の日付では、9月23日頃の前後半月の期間という間で変動しています。
今年2020年は10月1日でしたね。この日は満月の日の前日でしたが、ほとんど満月のように見えました!
ちなみに、関東から以西では、この時期によく晴れた日になる確率は低いとされています。
「中秋の名月」は満月ではない?
普通、中秋の名月といえば満月を思い浮かべますが、これは必ず満月というわけではなく、「満月に近い日」ではあり、むしろ満月ではない場合の方が多いんです。これは意外ですね。
「十五夜」というのは、新月日を1日目として、それから15日後の夜という意味なのですが、この日がちょうど満月になるわけではありません。満月は、その日に「月が地球から見てちょうど太陽の反対を通る瞬間」ということで、新月は「月が太陽と同じ方向を通る瞬間の日」です。新月から次の新月までは約29.5日。新月〜満月まで平均約14.8日です。
十五夜は15日、新月〜満月の間は平均14.8日後なので、ずれができるわけです。また、月の軌道は楕円である等の理由もあって、この平均14.8日からずれることもあり、これらによって一五夜と満月には「ズレ」ができるわけです。
なぜ団子を供える?
中秋の名月、十五夜では、「月見団子」や「すすき」をお供え物にするというのが現在一般的な風習になっています。「月見団子」は上記のように江戸時代から定着したものですが、なぜ団子なのでしょうか。これは、十五夜の日がお米の収穫時期にあたり、このお米の粉で満月に似せた団子を作り、お米のような穀物が収穫できたことの感謝と来年の豊作を祈願するためからきているとされています。
江戸時代では月も信仰対象で、月読命(つくよみのみこと)は農耕の神でもあるからです。団子の個数は1年の満月の数の「12個」か、十五夜にちなみ「15個」というのが一般的とされています。また、この12〜15個の団子をピラミッドのように型に積み上げていることについては、団子の最上部を天に向け、感謝と祈願を月まで届かせたいという意味があるようです。
さらに、お供え物の月見団子を食べて月のパワーを分けてもらい、健康や幸せを得ることができるという意味もあるのだとか。「すすき」は形が稲穂に似ているので、豊穣祈念のために飾られるようになったといわれています。葉が鋭いことて、これが魔除けの力を持っているためという話もあります。
ちなみに、日本では「月見団子」ですが、中国では「月餅」を食べています。満月に似ている月餅を家族で切り分けて食べて、家族円満や健康を願うそうです。
韓国では、この風習を「秋夕(チュソク)」と呼び、3連休になります。このとき親戚一同が集まって先祖の墓参りをして、穀物の収穫に感謝します。蒸し器に松葉を敷いて蒸す「松餅(ソンピョン」という半月型のお餅をお供え物にしています。
月見団子の知られざる由来!?
中秋の名月、十五夜についてでした。中秋の名月って、実は必ずしも満月ではないんですねえ。ただ、満月に近い月ではあるし、この頃がお月見に一番適しているとされているので、中秋の名月なんですね。月見団子やすすきの由来も、調べてみると面白いものがありましたね。
中国や韓国では別の食べ物になっているというのもわかりました。月を見て楽しむというのも、りっぱな天体観測のひとつですね!