先日はNASAの「Perseverance」が火星の地表に着陸したニュースを紹介しましたが、このほど中国の無人探査機「天問1号」に搭載された火星探査車「祝融」も、無事に火星の地表に着陸成功しました。
今回はこのニュースについて初回しましょう。
「祝融」が火星大地に降りる
2021年2月10日に中国の「天問1号」が火星の周回軌道に入ったというニュースは前回紹介しましたね。その後、日本時間5月15日8時18分、「祝融」を載せた着陸機が火星北半球にあるユートピア平原に着陸しています。
天問1号の周回機が5月15日午前2時ごろ待機軌道を離れ、午前5時ごろ着陸機を分離。この着陸機は約3時間で火星大気圏に突入し、大気のブレーキ・パラシュート・逆噴射ロケットで減速させ、火星100m上空でホバリングして地表への軟着陸に成功したそうです。
探査機を火星に着陸させた国としてアメリカ・ソビエト(現ロシア)に続いて3か国目になるそうです。そして5月22日、中国国家航天局・CSNAは、着陸機に搭載されていた「祝融」が火星の地表に着陸したことを発表しました。
CNSAの発表では、日本時間の5月22日11時40分に「祝融」が着陸機から降りたそうですが、NASAの「Perseverance」と同じようにその瞬間の画像が公開されています。画像はモノクロですが、後部にある障害物回避カメラで撮影された画像には、スロープを下ろした着陸機と、祝融が残したと思われる走行の痕が写っています。
祝融は中国の火星探査機「天問1号」のローバーとして、火星観測周回機や着陸機とともに、2020年7月23日に打ち上げられています。
祝融のスペック
祝融という名前は、中国の古代神話に登場する火の神からつけられているそうです。6つのタイヤ・4枚の太陽電池パネルを持ち、火星を時速200mで走行できるとされています。祝融は高さ1.85m、重量250kgというサイズで、6つの科学測定機器が搭載されており、最低でも約3か月間は稼働すると想定されていて、この3か月で火星の生命の痕跡を探します。
元の軌道に戻った天問1号周回機は、これからは祝融と地球の通信中継も担います。天問1号は着陸地点の地形・天候等に関してデータの取得分析を行い着陸準備を進めていましたが、火星のリモートセンシング観測も実施しています。
関係者も驚く中国の宇宙開発の技術力
火星探査はもちろんリスクが高いもので多くの困難が伴い、惑星間の空間環境や非常に薄い大気、地形等が大きな課題になります。通信にも遅れができるので、着陸地点の環境が明らかでない中、複雑な手順をして着陸が進められていました。
天問1号ミッションはここまで、地球の引力を振り切り惑星間空間に到達する打ち上げから、惑星間飛行・観測・火星着陸まで成功し、中国宇宙開発のマイルストーンを次々に築いています。これらの難題を一度にこなすには非常に高度な技術が必要なので、日本の宇宙関係者も驚いているようです。
開発中の宇宙ステーションでは問題も
このように、中国は天間一号を火星周回軌道に入れ、さらに火星表面にこの祝融を着陸させるなど、急速に宇宙開発を進めています。4月には中国独自の宇宙ステーション「天宮」を建設させるため、中核施設である「天和」の打ち上げました。
「天和」は宇宙ステーション全体をコントロールするモジュールで、宇宙飛行士たちの生命維持装置・居住空間を備えています。
「天宮」は、国際宇宙ステーションの5分の1、宇宙飛行士が3人滞在できる規模になる予定で、2022年までに完成するとしています。しかし、先日、宇宙ステーション用資材を軌道に打ち上げた「長征5Bロケット」を無制御の状態で放棄し、大きな機体の一部がインド洋に落ちるという問題が起きています。
メディアでは、中国はアメリカを凌駕するために国際ルールを無視してでも宇宙強国を目指しているという批判もあります。
ヨーロッパとロシアも火星を目指す
このように、アメリカに続いて中国が火星に探査車を着陸させましたが、来年2022年9月には、ヨーロッパとロシアが共同して行う火星探査ミッション「エクソマーズ2022」が打ち上げされる予定です。
エクソマーズ2022の探査機は、ロシアの着陸機「カザチョク」と欧州宇宙機関・ESAの探査車「ロザリンド・フランクリン」という組み合わせで、計画通りにいけば2023年に火星に着陸する予定です。
台頭してきた中国の宇宙開発
中国の火星探査機「祝融」が火星の地表に着陸したというニュースについてでした。このように中国は、今急ピッチで宇宙開発をしているようです。上記のような複雑なミッションを一度にこなすのは非常に高度な技術が必要のため、現在の中国はそれを持っているということですね。
一方で、ロケットの大きな機体の一部が地球の海に落ちるなどの事件もあり、宇宙開発の国際ルールを無視しているという批判もあるようです。
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