小天体が地球に衝突する危険性については以前このサイトでも説明しましたが、つい先日、NASAがその対策のための探査機「DART」を宇宙に打ち上げました。NASAはこの探査機「DART」で、いったいどんな実験をするのでしょうか?
地球に隕石が衝突する可能性がある!?
ふだん何気なく生活していると、普通は「小天体が地球に落ちるかも?」などとは考えませんよね?
しかし、これはあり得ない話ではないようです。「ディープ・インパクト」「アルマゲドン」など、ハリウッドの映画でもそのような題材を取り上げたものがありましたね。
たとえば、小惑星の「ベンヌ」は、2182年に地球に落下する可能性がほんのわずかながらですがある(2700分の1)とも言われています。このような事態を想定して、世界の科学者は1960年代から対策を考えていました。
以前は落下してきた隕石に特別な弾丸を当て粉砕させることが考えられていましたが、最近では「キネティック・インパクト・ディフレクション」という、動力学的衝撃による隕石の進路補正によって落下を防ぐという考えが主流となっています。
小さい天体でも脅威
これまでに発見された直径が1キロ以上ある地球近傍小惑星の数は890個ですが、これらが数百年以内に地球にぶつかることはないとされています。しかし、直径140メートルくらいの小さな惑星ですら、地球に衝突したら壊滅的な被害になるそうです。
もしも、地球にぶつかる可能性がある小惑星が見つかったときは、どれほどの時間があるかによって対策が変わります。たとえば、大きい小惑星が数カ月以内に地球に衝突するとしたら、非常に大問題ということは誰にでもわかりますね?
この場合、採用される対策はとても少なくなるので、なんと小惑星の近くで核爆弾を爆発させ、放出されたX線で小惑星表面一部を消滅させ、それによってできた物体がわずかに本体を動かすことで、軌道をずらすという方法になるかもしれません。しかし、これは極論的な発想ですね。
そのため、できるだけ早めに事前に予測することが大切になります。今後はNASAの宇宙望遠鏡である「地球近傍天体サーベイヤー」等の観測機が運用される予定で、天体が見つかるペースは速くなるとされています。そんなに大きくないくらいの小惑星で、地球にぶつかるまで期間が割とある場合は、核爆弾を使うといったことをする必要はないのです。
今回紹介するNASAの「DART計画」も、地球への隕石衝突までの時間がだいぶあるときの対策です。
探査機で衛星の軌道を変える
地球への小天体衝突のための壮大な実験を、つい先日NASAが開始したので、ここで紹介しましょう。今年2021年11月24日(米国時間23日)、NASAが「DART」という探査機を打ち上げました。NASAがこのDARTによってなにをするのかというと、DARTを小惑星にぶつけてその軌道を変更させようとする試みです。
無事に打ち上げられたDARTはこの後、太陽の周辺を10か月移動し、来年の2022年9月27日に、「ディモルフォス」という小天体ち衝突する予定です。ディモルフォスの大きさは直径160メートルで、「ディディモス」という小惑星の周りを約12時間で周回している小衛星です。
NASAのDART計画は、このディモルフォスにDARTを時速2万4000キロのスピードで衝突させて、ディモルフォスの軌道を変更させるというものです。これによってDARTは当然壊れますが、ディモルフォスは衝撃により減速することで軌道が小さくなり、結果、「ディディモス」を周回する時間が最大で10分ほど短くなると予想されています。
なお、DARTには「LICIAキューブ」というイタリア宇宙機関製の人工衛星が搭載されており、衝突の前に切り離されて、ディモルフォスの画像を地球に送信する予定です。DARTのような探査機を小惑星にぶつけ、軌道をわずかに変更させれば衝突を避けられるとされています。たとえわずかな変化でも、何年かすればこれが大きくなって、地球に落ちることを回避できるからです。しかし、探査機をディモルフォスにぶつけてほんとに大丈夫なのかと普通の人は考えるかもせません。
アメリカのジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所は、今から10年以上前から、今回の計画を「ディディモス」「ディモルフォス」のような二重小惑星でできないだろうかと考えていました。「ディディモス」が選ばれたのは、その安全性と効率性によってです。
太陽を公転している小惑星の軌道を変えてしまうと、いつか将来地球にぶつかるコースになってしまう可能性がありますが、今回のような二重小惑星で、大きい小惑星を周回している小天体の軌道を少し変えるだけなら、小惑星系全体の軌道にほとんど影響がないとされているからです。
早めに予測することが大事
NASAの「DART計画」についてでした。映画でも題材になることがある隕石の衝突ですが、隕石の衝突は地球の災害に比べて予測できる可能性があるというのがポイントですね。もし万が一衝突する可能性がある天体が見つかっても、残り時間があれば今回のような方法が有効になるかもしれません。そのためにはやはり観測機によって、常時情報収集することが大事になるでしょう。
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