先月、米オンライン通販大手アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏とヴァージングループのブランソン氏が、短時間の宇宙飛行に成功しました。このふたりの大富豪は以前から宇宙飛行に携わっていましたが、期せずしてふたりとも同月に宇宙に行ったわけですね。
そこで気になるのが、宇宙飛行に成功したふたりの感想についてです。二人とも印象的な感想を語っているので紹介しましょう。
滑走路に自転車で来た名物社長「リチャード・ブランソン」
まず最初に宇宙旅行を行ったのは、ヴァージン・ギャラクティック・ホールディングスという会社の創業者である名物社長!?英国人のリチャード・ブランソン氏です。7月11日、ブランソン氏とヴァージン社従業員5人が宇宙船「VSSユニティ」に乗り、アメリカはニューメキシコ州の滑走路から宇宙に向かいました。
驚いたことに、ブランソン氏はこの滑走路に自転車で来たというから、さすが名物社長の面目躍如ですね!この宇宙飛行は、従来のものとはちょっと違う形式です。現地時間で午前8時半ごろ、ユニティは飛行機「Eve」に抱えられ離陸し。
上空で「Eve」から切り離された後、ロケットエンジンを噴射。最高高度は約90キロ、無重力がかろうじて体験できる「宇宙との境界」に到達し、15分後に地球に帰還しました。ブランソン氏は、打ち上げの立会人だったというテスラ社のイーロン・マスクと一緒の写真もツイッターに投稿しています。
注目を集めた「ニュー・シェパード」の乗組員
それから遅れること9日、7月20日午後2時12分に、今度は「Amazon」の創業者ジェフ・ベゾス氏が、テキサス州にある発射場から同氏の企業ブルーオリジンの宇宙船、「ニュー・シェパード」に乗って宇宙を目指しました。
この宇宙船は乗組員にも注目が集まりました。ベゾス氏の弟で慈善団体ロビンフッドの上級副代表マーク・ベゾス氏や、史上最高齢の女性宇宙飛行経験者ウォリー・ファンク氏(82)、史上最年少の宇宙飛行経験者オリヴァー・デーメン氏(18)などがメンバーだったためです。ファンクさんは以前、女性宇宙飛行士養成プログラムに参加していましたが、当時のNASAは女性が宇宙に行くことを認めていなかったそうです。
高校を卒業したばかりのデーメンさんは、投資家の父親が高額のチケットを買ってくれたそうです。これはかなり注目を集めるメンバーですね。テキサス州西部にある砂漠地帯から打ち上げられたロケットは音速を突破し最高高度約107キロに達し、乗客は約3分の無重力を体験、宇宙飛行船で最大と宣伝されていた窓から地球と宇宙を眺めたそうです。
その後は大気圏に再突入。打ち上げて約10分後に、パラシュートで砂漠地帯に軟着陸しました。
地球と宇宙の境界線は?
打ち上げられた両者の宇宙船の最高高度に大きな違いはありませんが、わずかにベソス氏のほうが高いというところですね。ところがこのわずかな違いでも、場合によっては違いがあるといえます。無重力状態が体験できるぎりぎりの地点を「大気圏外」と呼ぶのかどうかは、機関によって違うからです。
アメリカの国防省は、国際航空連盟(FAI)が定めた上空100kmの「カーマンライン(宇宙と大気圏を分ける仮想境界線)」以上に行かない限り宇宙飛行士と認めていません。一方で、アメリカ連邦航空局・FAAの基準はもっと低く、50マイル・約80km以上なら宇宙飛行士の記章を与えるそうです。
そのため、ベソス氏のブルーオリジンは、今回のヴァージン社の宇宙飛行に疑問を呈するツイートを投稿しています。
宇宙に行くと人生が変わる?
さて、気になるのが宇宙飛行を初めて体験した両者の感想ですね。
ブランソン氏は
「子供の頃から宇宙飛行を夢見てきたが、宇宙からみた地球を想像することはできなかった。宇宙飛行はただただ魔法のようだった」
「この体験を正確に語ることは決してできない。えも言われぬ美しさだった」
と語り、今回の飛行を、来年からスタートする予定の宇宙観光事業のテストとしています。
「ノートを持っていって、宇宙に行く人の体験をより良くするため、30〜40個ほど気付いたことを書き留めた。
こういう細かなことを発見するには、自分で宇宙船に乗って宇宙を経験するほかない」と語りました。
ベソス氏は帰還直後、この体験はすごすぎて自分の言語能力では表現できない。これを語れるのは詩人だけかも
と言っていましたが、その後の会見ではまず、
「オーマイゴット」と興奮気味に語り、その後静かな口調で
「人生最高の日だった。無重力はとても自然に感じられ、あの環境に人類が適応するように進化してきたのではないか。」
「最も深い意味は地球を見ることと地球の大気圏を見ることでした。地上で車で走っているときは、大気圏は巨大で人間ははちっぽけな存在です。
しかし、実際に宇宙に行くと大気圏はおどろくほどに薄く、とても小さくもろいものです。これを頭の中で理解することと実際に目にするのは別のことです」と語り、宇宙と地球環境保護についての意見を語りました。
「わたしたちがしていることはただの冒険ではなく、もっと重要なことです。子どもたちとそのまた子どもたちの未来のために、宇宙への道筋をつくることが目標です。」ベゾスは目標をただ宇宙に行くことではなく、地球を救うことと語りました。地球は「太陽系で唯一、人間が住めるほどの良質な惑星」だからです。
ベソス氏は将来的に、現在の地球の重工業などをすべて宇宙に移し、地球を美しい星にもどすという考えを持っているようです。
ベゾス氏の持つビジョン
今年7月に自社の宇宙船に乗って宇宙飛行に成功したベゾス氏とブランソン氏についてでした。ベゾス氏とブランソン氏以外でも、今回宇宙に行った人は、口をそろえて人生を変えるような体験だったと語っていました。宇宙に行くとある種の「天啓」や「悟り」のようなものが得られるという話もよくありますね。
今後はどんどんこういった宇宙飛行が民間でも進んでいくのでしょう。ただ、インタビューなどを見るとベソス氏はそういったことは二の次として、人類や地球の将来を目標にしているようです。
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