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土星ってどんな星?土星の環や衛星、ボイジャー探索機まで紹介!

2017年1月17日

(カッシーニによる撮影(2004年3月27日)wikipedia

土星は木星の外側を周る巨大なガス惑星で、水素とヘリウムを主体としてできています。太陽系には土星のほかにも、木星、天王星、海王星という4つのガス惑星がありますが、土星はそれらの中でもっとも比重が軽く、もし土星を入れる巨大な水槽があったとすると、水に浮かんでしまいます。また、土星には他の惑星にはない巨大ではっきりとした環(リング)があり、400年以上前の中世の時代から、天文学者の興味を引き続けてきました。

 

中世の天文学者が残した土星のスケッチ

1610年にガリレオ・ガリレイは自作の望遠鏡を初めて土星に向けましたが、望遠鏡の性能が低く彼は、「土星には耳がある」と観測記録に記しました。ガリレオ以外にも多くの天文学者が土星のスケッチを残しています。リッチオーリやディビーニのスケッチはリングに見えないこともありません。

 

 

Ⅰ: ガリレオ (1610)

Ⅱ: シャイナー (1614)

Ⅲ: リッチオーリ(1640)

Ⅳ~Ⅶ: へベリウス(1640, 1643, 1647, 1650)

Ⅷ,Ⅸ: リッチオーリ(1648, 1650)

Ⅹ: ディビーニ (1646~48)

ⅩⅠ: フォンタナ (1636)

ⅩⅡ: ガッサンディ (1638~1639)

ⅩⅢ: フォンタナ他 (1644~1645)

 

1655年になって、オランダの天文学者クリスティアーン・ホイヘンスが、これまでよりも性能が良い望遠鏡を自作して観測し、それがリングであることを確認しました。

中世の天文学者による土星のスケッチ

(出典:http://www.geocities.jp/planetnekonta2/hanasi/saturn/saturn.html)

 

土星の公転周期:木星と準軌道共鳴の関係

土星と主要な衛星(ディオネ、テティス、ミマス、エンケラドゥス、レア、 タイタン)

土星は太陽からおよそ14億キロ離れたところを、約30年で一周しています。木星が太陽からの距離およそ7億キロで公転周期が12年なので、ちょうど木星の2倍遠いところを、およそ2倍の時間をかけて公転していることになります。完全な整数比ではないので、木星と土星が起動共鳴の関係にあると言えませんが、準共鳴状態にあると言えます。巨大なガス惑星2つが共鳴状態にあることで、太陽系の惑星に大きな影響を与えます。天王星と海王星は今よりもっと太陽に近いところで作られて、木星と土星の起動共鳴によって、遠くにはじき飛ばされたと考えられています。

 

また、40億年前ごろ原始太陽系の惑星に、隕石や小惑星が雨のように降り注いだ時期がありましたが、それは木星と土星の軌道が共鳴状態になったことにより、大量の小天体が太陽系の外縁から引き寄せられたと考える説があります。現在の太陽系においては、木星と土星の強大な重力が、太陽系の外縁から飛来する隕石や小惑星を引き止めることで、地球への衝突を防いでいるという役割を担っています。

 

土星の内部構造

(土星の内部構造 wikipedia)

土星は木星と同じく水素とヘリウムからなる巨大ガス惑星です。水素は中心部に向かうにしたがって温度と圧力が上昇し、液体となり中心核付近では、金属のような性質を帯びています。中心核は、鉄やニッケル、シリコンと酸素が結合した岩石が、超高圧により1万度以上の高温で溶融した状態にあって、そのまわりを金属水素の層が覆っています。金属水素の対流によるダイナモ効果で、電流が生じ磁場が発生していますが、土星の磁気圏は木星に比べると大変に小さく約1/12程度です。衛星タイタンから放出されるイオン粒子が、土星の磁気と反応してプラズマ化することによって、極地でオーロラを発生させることが、ハッブル宇宙望遠鏡で観測されています。

 

土星の大気

93%が水素で、5%のヘリウムと、微量のアンモニア、アセチレン、エタン、プロパン、リン化水素、メタンが検出されています。木星大気のような激しい動きはありませんが、木星の大赤斑のような長期にわたって続く巨大な渦巻きが現れることがあります。土星表層の温度は、-173℃から-113℃、気圧は0.5気圧から2気圧で、アンモニアの結晶が雲を作っています。その下の層は水でできた氷の雲があり、高度が下がるにつれ、硫化アンモニウムの氷が混合し、気圧と温度が上昇していきます。大気の最下層では気圧が10から20気圧、温度は-3℃から+57℃で、液化したアンモニウムが水滴状になっています。

 

土星の嵐

(2011年に惑星規模で発生した嵐の帯。明るい領域は嵐の頭部で、尾を引きながら左方向に移動している wikipedia)

 

通常、土星の表面では目立った雲の動きはみられませんが、土星の公転軌道が太陽に接近するときに、温められた土星の大気が上空の冷たいアンモニア粒子と反応して、嵐が発生するとみられ、約30年に一度の周期で、木星の大赤斑のような白い巨大な渦巻き「大白斑」が発生することがわかっています。2011年、探査機カッシーニと地球の大型望遠鏡の観測により、土星の北半球に、地球の直径に匹敵する巨大な「大白斑」が発生したことが確認されました。この嵐は2か月で土星をぐるりと取り巻くサイズに成長。嵐の内部では秒速100m以上の暴風が吹き荒れていると見られています。

 

土星のデータ

データ項目  値
平均公転半径 14億2672万5400km
赤道面での直径 12万536km
地球との相対質量 95倍
平均密度 0.70g/cm3
公転周期 29年と194日
自転周期 10時間 13分 59秒(赤道面)

10時間 32分 45秒(極)

衛星の数 64個
赤道傾斜角 25.33度
表面重力 8.96 m/s2
表面温度 雲の最上層:マイナス180度
最低気温:マイナス191度
平均気温:マイナス130度
最高気温:不明
大気の性質 大気圧:1.4気圧
水素:93%以上
ヘリウム:5%以上
メタン:0.2%
水蒸気:0.1%
アンモニア:0.01%
エタン:0.0005%
ホスフィン:0.0001%

 

土星の環(リング)

(探査機カッシーニが2007年に撮影した土星の環 wikipedia)

土星のリングが、たくさんの小さなリングとそのあいだの隙間で構成されていることを発見したのは、パリの天文台長を務めていたジョバンニ・カッシーニで1675年のことです。幅4800kmもある最大の間隙は、彼の名前をとってカッシーニの間隙と名付けられました。リングは、1cmから10m程度の純粋な水が凍った氷の集まりで、リングの直径が明るく見えるところだけでも28万kmもあるのに対し、厚さは10m~1000mしかありません。もしリングの直径を2.8mまで縮小すると、厚さは0.0001mm~0.01mmという薄さになります。およそ40億年前に、土星のまわりを回っていた直径400km~600kmの衛星に、大きな天体が衝突し、破壊された岩や氷のかけらのうち、密度が高い岩石は土星に落下して、軽い氷の粒がリングになって残ったとの説が有力になっています。

 

環(リング)の構造

土星のリングは、密度が異なるリングがいくつも重なっている構造をしていて、主なリングは内側から順に、D・C・B・A・F・G・Eと名付けられています。

もっとも密度が高く明るく見える部分はB環と呼ばれます。カッシーニの間隙(かんげき)をはさんですぐ外側に、次に明るいA環があります。カッシーニの間隙は1675年に、ジョバンニ・カッシーニが口径5cm、90倍の望遠鏡で発見しました。現在市販されている小口径の望遠鏡を使っても、A環とB環に挟まれたカッシーニの間隙を見ることができます。

 

A環とB環の間にあるカッシーニの間隙、A環にも糸のように細いエンケの間隙が見える(出典:Wikipedia)

 

B環は密度が濃くすきまがありませんが、A環にはすきまが二つ、エンケの間隙(かんげき)と、キーラーの空隙(くうげき)があります。其々のすきまの中は小さな衛星が周回していて、A環の外周ぎりぎりにあるキーラーの空隙では直径約7kmの小さな衛星ダフニスが、空隙内を掃除して周っています。また、エンケの間隙にも直径20kmの衛星パンが公転しています。

 

キーラーの空隙を公転する衛星ダフニスがA環に影を落としている(出典:Wikipedia)

 

B環の内側には1850年に発見されたC環があります。A環、B環、C環をあわせてメインリングと呼びます。メインリングは、他のリングと比べて大きい粒子で構成され、密度も高く明るく光って見えます。

 

C環の更に内側にはD環がありますが、非常に希薄なリングです。D環は土星の雲の上端にまで達しています。

 

A環の外側には、非常に細くて薄いF環があります。F環を挟むようにして、内側に羊飼い衛星と呼ばれるプロメテウスが周っており、外側を同じく羊飼い衛星のパンドラが周ります。

F環は、衛星プロメテウスの重力の影響を受けて、ねじれやこぶを持ったひものような構造になっています。

 

F環の外側を回る衛星パンドラと内側を回るプロメテウス(出典:Wikipedia

 

E環は、もっとも外側にあるリングで、顕微鏡サイズの粒子でできています。その粒子は、氷ではなく、塵、ガスや煙のようなものです。E環の付近を周回する衛星エンケラドゥスは、南極付近にある氷火山からジェットを噴出しており、その粒子がE環から検出されています。

 

外縁にあるE環と衛星エンケラダスから噴き出すジェット(出典:Wikipedia)

 

G環は非常に希薄なリングで、F環とE環の間にあります。G環の土星側の端に幅250km程度の細く明るい部分があって、岩石サイズの粒子が密集しています。そこから外側に向けて粒子が放射されており、幅9000kmにおよぶG環に粒子を供給しています。

 

G環の中に発見された小衛星(出典:NASA/JPL/Space Science Institute

 

粒子が散らばらずにリング状を保つためには、それなりの重力を持った天体が必要になります。2008年8月15日にカッシーニが撮影した画像から、新しい衛星が発見されました。直径約500mと推定されており、G環の形を保つのに一役買っていると見られています。

 

土星の衛星

土星の公転軌道を回る天体は、衛星として認識されているものは64個あります。土星のリングのなかに埋もれているものや、リングの一部になっている小さな岩と氷の塊で、衛星として扱われていないものまで含めると、無数に存在します。土星の衛星は、軌道や性質によって8つの群(グループ)に分類されています。ここでは代表的な3つのグループを紹介します。

 

羊飼い衛星群

羊飼い衛星と呼ばれているものは 土星のリングの周囲、又は間隙の中を周回する小さな岩の塊で、その重力によって、土星のリングや間隙を一定の形に保つ役割があると、考えられています。

このグループにはパン、ダフニス、アトラス、プロメテウス、パンドラが属しています。

 

エンケの隙間と衛星パン(出典:Wikipedia)

 

パン:A環のエンケの間隙の中を周回しています。直径約20kmの岩石のかたまりです。

 

キーラーの空隙をまわるダフニス(出典:Wikipedia)

 

ダフニス:A環のキーラーの空隙の中に公転軌道があります。直径約7kmの小さな岩塊(がんかい)です。

 

アトラス:ダフニスとプロメテウスの間にあります。そろばん玉のような形をしています。

 

衛星プロメテウス(出典:Wikipedia)

 

プロメテウス:F環の内側を周回する長さ100km程度の細長い岩塊で、直径20kmのクレーターがあります。

多孔質の氷でできていると見られています。

 

パンドラ:F環のすぐ外側をまわる楕円形の岩塊で、F環の内側を周回するプロメテウスの重力の影響を受け、その軌道は変動しています。F環の粒子が散らばるのを防ぐ役割があります。

 

内大衛星群

土星の最も外縁にあるE環の内側をまわる比較的サイズが大きい衛星のグループで、ミマス、エンケラドゥス、テティス、ディオネが属しています。

 

ミマス(出典:Wikipedia)

 

ミマス:内大衛星群の中では最も土星に近い円軌道を、約22時間40分で公転しています。直径約400kmのほぼ球体で、少量の岩石と氷でできているとみられ、内部に水の存在が予想されています。直径130kmにも及ぶ巨大なクレーターがあり、映画スターウオーズに登場するデス・スターに形が似ています。

 

エンケラダス:エンケラダスは直径498kmの球体で、土星から24万kmのところを約33時間で公転しています。地表から水蒸気が間欠泉のように噴き出しており、内部に熱水の環境があることが予想されています。生命存在の可能性が高く、注目されている衛星です。(詳細は生命存在の可能性が注目されるエンケラダスの章を参照)

 

テティス:直径およそ1000kmのほぼ球体で、岩石と氷で構成されています。エンケラダスの地表から噴き出した氷が付着することによって、表面が白く輝いています。

 

ディオネ(出典:Wikipedia)

 

ディオネ:直径およそ1200kmの氷と岩でできた球体で、土星の衛星の中では4番目に大きい。探査機カッシーニの観測で、わずかながら酸素を主成分とする大気があることがわかりました。ただし大気は極めて希薄で、地表に生命の存在は期待できません。ディオネの北半球にかつて高温になっていたと考えられるところがあり、地下に海が存在する可能性が示唆されています。

 

外大衛星群

土星のリングから離れたところに軌道を持つ衛星のグループは、最大級のサイズを持っています。このグループにはレア、タイタン、ヒペリオン、イアペトゥスが属しますが、ヒペリオンは他と比較すると少々小さく、不規則な形状をしています。

 

レア:直径は約1500km、タイタンに次いで2番目の大きさがあります。氷を主体とした組成で、小さな岩石の核があるとみられています。土星から吹き付ける荷電粒子によって地表の氷が分解され、きわめて薄い酸素を含んだ大気が存在します。

 

タイタン:直径が5150kmあり土星の衛星では最大、木星の衛星であるガニメデに次ぐ大きさです。太陽系の中で地球以外に唯一、窒素を主体とした大気を持っています。太陽から遠く離れているため、水はすべて凍りつき、その代わりに液体のメタンが大気圏を循環しています。液体メタンの川や湖があり、地下には液体の水がある可能性もあります。(詳細は衛星タイタン:濃い大気にメタンの海の章を参照)

 

 

ヒペリオン(出典:Wikipedia)

 

ヒペリオン:長手方向は360kmで、幅が200kmほどの不規則な形をしており、非球形天体としては太陽系で2番目の大きさです。表面はスポンジのように無数の深いクレーターで覆われ、他にはない特徴的な外観をしています。

 

イアペトゥス(出典:Wikipedia)

 

イアペトゥス:平均直径はおよそ1400kmで、タイタン、レアに次いで3番目に大きい土星の衛星です。暗く見えるところと、明るく見えるところがはっきり分かれているのが特徴で、暗いところは、土星の最も外側を回る衛星フェーベから飛来した、光を吸収する性質の粒子がイアペトゥスの表面に吹き付けられているためと考えられています。

 

生命存在の可能性が注目されるエンケラダス

衛星エンケラドゥス(出典:wikipedia

 

エンケラダスは、土星の衛星の中では6番目の大きさがありますが、そのサイズは直径500kmにも満たない小さな星です。このサイズの星は重力が小さすぎて、大気や水を地表にとどめておくことができないのが普通です。また、中心核も組成を溶融させるほどの高温に圧縮されず、衛星自体が冷え切っていることが多いのです。しかしながら、エンケラダスは現在、木星の衛星エウロパに続いて、もっとも生命の存在する可能性が高い星として注目されています。いったい、エンケラダスとはどんな星なのでしょうか。

 

 

氷の下に全球海洋の存在

2005年に土星に到達した探査機カッシーニは、約10年に渡る観測の結果、エンケラダスの公転軌道にふらつきがあることを発見しました。もしエンケラダスの地殻と中心核が固定されているとしたら、このようなふらつきは起こらず、地殻と核のあいだに流動的な液体の存在を仮定しなければ、これを説明できません。科学者はこの観測結果から、エンケラダスの地下に深さ2~30kmの全球を覆う海洋があると断定したのです。2015年3月12日、東京大学は、探査機カッシーニが、エンケラダスの南半球にあるタイガーストライプと名付けられた割れ目から、熱水のプリューム(間欠泉)が噴き出している様子を撮影したと発表しました。噴き出した熱水は、エンケラダスの-196℃の気温で瞬時に凍結し、微細な粒子となって衛星表面に降り注ぎます。そのためエンケラダスの地表は常に新しい氷の粒子で覆われています。また、地表から高く舞い上がった粒子は、そのまま宇宙空間に放出され、土星の最も外側のリングであるE環を構成する成分となります。

 

エンケラダスの地表にできた氷の割れ目 探査機カッシーニ撮影(出典:wikipedia)

 

さらに探査機カッシーニは、土星のE環から、二酸化ケイ素(シリカ)が多く含まれたナノメートルサイズの粒子「ナノシリカ」を検出しました。ナノシリカは、岩石の成分が90℃以上の熱水で溶けだしたときに作られる成分で、これによって、エンケラドゥスの海に熱水を作り出す環境があることが確実となったのです。

 

噴出するプリューム(間欠泉)から有機物を検出

エンケラダスから噴き出している巨大なプリューム(間欠泉) 探査機カッシーニ撮影(出典:wikipedia)

 

2015年10月28日、探査機カッシーニはエンケラダスの南極付近を通過、高度49kmの低空まで大接近、地表から噴き出しているプリュームの中を通過して、水蒸気を採集しました。2008年にも探査機は、エンケラダスのプリュームから、メタン、プロパン、アセチレン、ホルムアルデヒドなどの有機物を検出しており、2009年には塩分も発見しています。2015年の大接近で、さらなる有機物などの生命の痕跡が発見されるかもしれません。エンケラダスには、液体の水、有機物、熱エネルギーと生命誕生の条件がそろっており、それは原始の地球と良く似ていると考えられています。現在の地球でも深海の熱水噴出孔周辺に、太陽光や酸素を必要としないバクテリアが独自の生態系を作っています。エンケラダスの深海にも同じような生態系があるかもしれないのです。

 

エンケラダスの内部構造と全球海洋(出典:National Geographic日本版

 

直径500kmに満たない小さな衛星が、なぜ液体の水を内部に持つことができるのでしょうか。内部に高熱を発生する熱源があるはずです。木星の衛星エウロパのように、中心星の強い潮汐力(重力によって引っ張られたり圧迫されたりする力)によって、エンケラダスの内部がゆがみ、その摩擦力で熱が発生している可能性があります。また、ウランなどの放射性物質が中心核に存在し、それが自然崩壊(ほうかい)するときに発生する熱によるのかもしれませんが、詳しいことはまだ分かっていません。

 

衛星タイタン:濃い大気にメタンの雨

探査機カッシーニが近赤外線で撮影したタイタン(出典:Wikipedia)

 

タイタンは土星の衛星では最大のサイズで、直径5150kmもあります。それは惑星である水星よりも大きく、火星の2/3もあります。木星の衛星ガニメデ(直径5262km)に次ぐ大きさです。衛星もこのサイズになると、自前の重力で大気を地表にとどめておくことができます。実際、タイタンは太陽系でもっとも濃い大気層を持っているのです。といっても地球のような窒素と酸素を主体としたものではありません。窒素を主体としたメタンを含む大気です。不透明な大気の層が衛星全体を覆い、可視光では地表の様子はほとんど見ることができません。探索カッシーニは近赤外線カメラでタイタンを撮影し、雲の下に隠された大陸の様子を明らかにしました。

 

タイタンの内部構造

(タイタンの内部構造 wikipedia

探査機カッシーニの観測により、タイタンの内部構造は地殻、マントル、中心核のようにはっきりと分離されてないことがわかりました。薄い氷の下に、シャーベット状になった濃い塩分の海が500kmの深さまであると思われ、核はなく氷と岩石が混ざった層が中心まで続いていると見られています。高圧高温の中心核がないため、タイタンには磁場がなく、太陽風に直に晒されています。

 

メタンの大気

 

(タイタンの大気のもやの層 wikipedia)

1981年のボイジャー1号の観測によれば、タイタンの大気は97%の窒素と、2%のメタン、0.1~2%の水素です。地表の気圧は地球の1.5倍で、このように窒素を主体とした、濃い大気層をもつ太陽系の星は、地球とタイタンだけです。しかし、タイタンは太陽から遠く離れているため、地表の平均温度はマイナス179℃と非常に低く、水はすべて凍結し、液体として存在できません。地球と同じような大気循環があるとみられますが、液体は水ではなく、すべてメタンです。メタンは融点がマイナス183℃で、沸点はマイナス163℃ですから、タイタン地表のやや暖かいところでメタンは蒸発し、上空で凝結して、メタンの雨となり地表に降り注ぎます。それは川となって地形を浸食しながら、低地に流れ込みメタンの湖を形成します。気温が非常に低く、水ではなくメタンということを除けば、タイタンには地球と同じような気象現象があり、岩石の山を縫うようにしてメタンの川が流れ、湖が広がる光景が見られるはずです。

 

タイタンに生命の可能性

地表の液体メタンの湖(リゲイア海)wikipedia

タイタンの地表はマイナス179℃の極寒であって、生命が存在できる環境ではありません。しかし地下に存在するとみられるアンモニア水の海に、生命存在の可能性があるかもしれません。木星の衛星エウロパや、土星の衛星エンケラダスと同様に、中心星からの強い潮汐力により、内部で高熱が発生している環境があれば、さらに生命が存在する可能性は高まります。また、水ではなくメタンの湖で生息する、地球型とはまったく異なる生命体が存在するかもしれません。しかしこれはまだ、想像の世界です。

 

土星探査機 パイオニア11号

土星の環を探査するパイオニア11号(想像図)wikipedia

1973年4月6日に打ち上げられたアメリカの探査機で、木星でスイングバイを行い1979年9月1日、土星から21000kmまで接近しました。地上からは観測できない土星のリング、E環、F環、G環を発見しました。

 

パイオニア11号に取り付けられた金属板(出典:Wikipedia)

 

その後は太陽系の外に向かう軌道に乗り、飛行を続けていると思われますが、電力の低下により1995年末以降は、地球からの交信ができなくなっています。パイオニア11号には、地球外生命に対するメッセージとして、地球人の存在を示す金属板が取り付けられています。

 

ボイジャー1号/2号

(ボイジャー1号 wikipedia)

ボイジャー1号は、1977年9月5日に打ち上げられました。その数日前にボイジャー2号の打ち上げも行われています。この時期は、木星から海王星までの巨大ガス惑星4つが同じ方向に集中し、スイングバイを連続して行うことにより、冥王星まで到達できるという、惑星探査機にとって絶好の次期だったのです。

 

ボイジャー1号が撮影した土星(出典:Wikipedia)

 

ボイジャー1号は、1979年3月5日に木星に最接近し、スイングバイにより加速し土星に向かいました。土星への最接近は1980年11月12日で、124000kmの距離から、土星リングの詳細な構造を調査しました。また、冥王星に向かう計画を変更して衛星タイタンに軌道変更を行い、地球とよく似た大気があると考えられているタイタンを観測しました。

 

ボイジャー1号は、タイタンの重力アシストを受けたことにより、太陽系外に向かう軌道に入りました。2016年12月の時点で、太陽からおよそ205億2500万kmのかなたに到達し、すでに太陽圏を脱出して、星間空間を航行しています。

 

ボイジャー2号が撮影した土星の写真(出典:Wikipedia)

 

ボイジャー2号は、1981年8月25日に土星に最接近し、レーダーを用いて土星大気の温度や気圧を測定しました。

土星でスイングバイ加速した後は、天王星と海王星に向かい、木星、土星、天王星、海王星の4つを訪れた初めての探査機となりました。

ボイジャー2号も外宇宙にむかって飛行を続けており、2016年12月、太陽からおよそ169億200万kmのかなた、太陽圏を脱出しようとしているところにいます。

 

探査機カッシーニ

(カッシーニの打ち上げ wikipedia

カッシーニは、アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)が共同で開発した土星探査機で、1997年10月15日に打ち上げられました。

カッシーニには、土星に突入して観測を行う探査機ホイヘンス・プローブが搭載されています。また、10年以上にわたる長期の観測に備えて、さまざまな観測機器と燃料を搭載したことにより、カッシーニ全体の重量は5.8トンにも達し、その大きさはマイクロバスほどもあります。これまで打ち上げられた中で最大の探査機です。

 

土星探査機カッシーニと搭載されたホイヘンス・プローブ(左側にある金色の部分)

(出典:http://www.imart.co.jp/mizunoaru-wakuseitati.html)

 

カッシーニは金星と地球、木星のスイングバイを経て約7年を要し、2004年6月16日に土星に到達しました。土星のメインリングの隙間を下からすり抜け、リングの上に出た直後にメインエンジンを逆噴射して減速を開始。97分間の逆噴射という超急ブレーキにより、土星の周回軌道に乗ることに成功しました。パイオニアやボイジャーが土星のそばを通過するだけだったのに対し、カッシーニは初めて土星を周回する探査機になったのです。カッシーニは土星の軌道に乗ってからの約10年間で、さまざまな観測成果をあげています。土星の周回数は206回にもおよび、33万枚の写真を撮影、514GB(ギガバイト)の観測データを地球に送信しました。

 

タイタン突入カプセル:ホイヘンス・プローブ

(ホイヘンス・プローブの模型 wikipedia)

2005年1月14日、カッシーニから放出された突入カプセル ホイヘンス・プローブが、タイタンの大気圏に到達しました。ホイヘンスは、衛星タイタンを発見したオランダの天文学者クリスティアーン・ホイヘンスにちなんで名づけられたのです。タイタンの上空高度1270キロ、時速2万キロで大気圏に突入、約3500℃まで耐えるように設計された耐熱シールドが炎に包まれ、機体に加わる力は最高16Gに達します。

 

(降下中のホイヘンスが写したタイタンの地表 wikipedia)

高度180km、タイタンの濃密な大気の抵抗で秒速400メートル(時速1440km)まで速度が落ちたところで、パイロットシュートが展開します。パイロットシュートは直径2.6メートルで、ホイヘンスのリアカバーに結合されています。次にリアカバーごとパイロットシュートが分離され、直径8.3メートルのメインシュートが展開し、降下速度がさらに減速していきます。高度160kmで耐熱シールドが分離されます。各種の観測機器に電源が入り、データの収集を開始。また、カメラがパノラマ画像の撮影をスタート、降下しながら、軌道上を周るカッシーニにリアルタイムでデータを送信します。タイタンの大気は濃密で、メインシュートでは降下速度が遅すぎ、バッテリーが持たない可能性があるため、メインシュートを切り離し小型のパラシュートに切り替え、降下速度を速めます。回転しながら2時間以上降下を続け、時速約20kmの速度でタイタンの地表に軟着陸することに成功しました。液体メタンの湖か泥沼に着地することも想定されていましたが、固い地面に着陸し、地上の風景を撮影することに成功しました。着地後もホイヘンスは、上空の軌道を回るカッシーニに、観測データを送り続けました。着陸からおよそ2時間後に、軌道上のカッシーニが、ホイヘンスからの電波を受け取れる範囲を通り過ぎたため、カッシーニのデータ受信はそこで終了しました。カッシーニが、ホイヘンスから受け取ったデータは、約500Mb(メガバイト)になります。カッシーニから地球へのデータ送信は、念を期して3回繰り返されました。

 

タイタンに軟着陸したホイヘンス・プローブによる地表の写真(出典:Wikipedia)

 

また、あわせて地球から大型の電波望遠鏡群で、ホイヘンスから発せられる電波を直接受信することも行われました。ホイヘンスは、カッシーニがデータを受信できる範囲から外れた後も、データを発信し続けており、電波望遠鏡群はそれを受信していたのです。

 

衛星エンケラダスの間欠泉を観測

2005年11月27日に土星探査機カッシーニが、エンケラダスから11万kmの距離から撮影した写真を見てください。太陽を背にして逆光になっていますが、地表から宇宙空間に向けて何かが吹き出している様子がはっきりと写し出されています。噴出しているのはエンケラダスの南極付近で、ここ辺りにはタイガー・ストリップと名付けられた地表の割れ目が無数に存在しており、そこから水蒸気が噴き出していることが確実となっています。

 

カッシーニが撮影したエンケラダスから噴き出すジェット(出典:NASA)

その後、2008年から2015年にかけてカッシーニは、エンケラダスから噴き出すプリューム(間欠泉)のなかを何度も通過し、水蒸気の採集を行って、そこから有機物や塩分を検出しました。また、エンケラダスからの噴出物が含まれていると考えられているE環のリングから、海水が熱せられた環境でしか作られないナノシリカ粒子を検出し、エンケラダスの深海に熱水噴出孔があることを裏付けました。打ち上げから20年、カッシーニはその長いミッションを完了し、2017年9月15日に地球からの操作で、土星の大気圏に突入し燃え尽きることになっています。これは、エンケラダスやタイタンなど、生命存在の可能性がある衛星を、探査機に付着している地球の微生物で汚染しないために行われるのです。

 

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