先日、NASAの 「オシリス・レックス」という探査機が、コマのような小惑星「ベンヌ」にタッチダウン・着陸したというニュースが入りました。というわけで、ここでNASAの探査機 「オシリス・レックス」と小惑星「ベンヌ」についてみていきましょう。
この記事の目次
「ニュー・フロンティア計画」とは?
「オシリス・レックス」とは、NASAとアリゾナ大学が共同で開発した宇宙探査機で、この探査機の目的は、小惑星「ベンヌ」からサンプルを回収することです。日本では「アメリカのはやぶさ」と呼ばれることもあるようです。
「はやぶさ」とは日本の小惑星探査機で、同じように天体にタッチダウンしてサンプルを回収したので、こう呼ばれるんですね。オシリス・レックスは太陽系の惑星を調査するミッションの「ニュー・フロンティア計画」における3番目の計画です。日本語で言えば「新しい前線」ということで、文字通りのような計画ですね。これは、1960年にジョン・F・ケネディ上院議員が演説した「We stand, today, on the edge of a New Frontier」 を引用しているそうです。
NASAが開発・提唱したこの計画は、2002年〜2003年にアメリカの議会に承認されました。全米科学アカデミーが2003年に発行した「惑星科学10ヵ年計画」は、この計画の目的地を明確にし、最初の情報源として役割を果たしています。計画のミッションは今回のベンヌのサンプルリターン以外にも、金星探査や土星探査、月の盆地のサンプルリターンなど、さまざまなものがあります。
2006年1月に「ニュー・ホライズンズ」が打ち上げられ、2015年に冥王星に到達、2011年8月に「ジュノー」が打ち上げられ2016年に木星軌道に入り2016年9月にこのオサイリス・レックスが打ち上げられ、2020年10月に小惑星ベンヌにタッチダウンしました。
オサイリス・レックスのこれまでのいきさつ
オシリス・レックスは、炭素質の地球近傍小惑星でコマのような形状をしている「ベンヌ」の探査およびサンプルリターン、そして「ヤルコフスキー効果」の観測を主な目的にしています、また、2020年代の有人小惑星探査のファーストステップとして重要視されていて、総事業費は約8億ドルです。
さらに、2017年2月にはオサイリス・レックスに、地球・太陽のラグランジュっポイントの一つ、「L4」に存在している可能性がある小惑星の観測というミッションも追加されました。
この計画は当初、「オサイリス」という名称で2004年に「ディスカバリー計画(低コスト・高効率で太陽系内を探査する計画)」のミッションのひとつとして提案されましたが、このときは採用されませんでした。その後、2006年にディスカバリー計画の12番目のミッションとして再提案され、理学・工学・ミッションデザインなどが評価され、
月探査機「GRAIL」や金星探査機「ヴェスパー」とに最終候補に残るものの、ディスカバリー計画の予算枠では高すぎたため、このときは「GRAIL」が採用されのでまた不採用でした。その後、名称を現在のものとし、ディスカバリー計画より予算が多いニュー・フロンティア計画のなかで2009年に再提案され。この年12月29日に月サンプルリターン探査機「ムーン・ライズ」、金星着陸機「セイジ」と最終候補になり、2011年5月25日に正式に決定されました。
この3つの候補では、マネジメント・コスト面で目標が最も実現可能と判断されたためです。2014年4月にミッションの詳細設計審査 (CDR) を終了し、製造フェーズへの移行が認めらました。
JAXAの「はやぶさ」とも協力している!
オシリス・レックスは、実は日本の「JAXA」とも協力しているということをご存じでしょうか?
NASAは、日本の惑星探査機で同じくサンプルリターンを成功させた「はやぶさ2」と、オサイリス・レックスの回収したサンプルを分け合うことを、2014年11月17日に両宇宙機関長が契約しました。NASAは、「はやぶさ2」のサンプルの1g以上・最大数gの10%、JAXAは「オサイリス・レックス」のサンプルの60g以上・最大2kgの0.3gという協定で、万が一片方のミッションが失敗したときでも保証されるそうです。
さらに、NASAはディープスペースネットワークを使う「はやぶさ2」の深宇宙通信もサポートします。
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ベンヌに到達するまで
オシリス・レックス探査機は今月、無事にベンヌの表面、目標地点から76センチ以内という高精度の場所に着地しました。ここで無事サンプルを採取できれば、来年3月にはベンヌから離れ、2023年9月24日に地球に帰還する予定です。
このサンプルは、ベンヌについての貴重な情報になり、地球上の水と生命の起源についても理解が深まることが期待されています。この小惑星は、太陽系誕生についての記録を持っているかもしれません。さらに、地球を含めた惑星の誕生についても貴重な情報も得ることができるかもしれません。
しかし、まだ先の話ですが、NASAではベンヌが2100年代後半に地球に衝突する可能性があると予測しています。その確率は「2700分の1」。この事態に備えて、オシリス・レックスからのサンプルデータでベンヌの動きを見極め、軌道を修正することで衝突を回避する可能性もあるそうです。2016年9月に打ち上げられたオシリス・レックスは、2018年12月にベンヌに到着。
ベンヌはごく微かな重力でなんとか形を保たれており、このような環境ではすこし力が加わっただけで探査機の軌道がずれてしまいます。このため、チームはオシリス・レックスの動きを詳細にモデル化。軌道を確認して頻繁に修正を加えました。こうしなければ軌道の誤差はすぐ大きくなって、探査機の位置が不明になっていたでしょう。また、ベンヌの表面もチームを困らせました。
当初、ベンヌの表面は砂浜のように細かい砂で覆われていると考えられていましたが、探査機が到着してみたところ、岩だらけの表面でした。これほどに起伏が激しい場所に着陸できるように設計されていなかったので、ミッション中にソフトウェアをアップデートしなければならなくなりました。作成した詳細な地図は、地球外天体の全球地図としてこれまで最も精度が高い地図です。
サンプルの回収方法は、アーム先端の「TAGSAM」という円盤の装置を小惑星表面に付けて、窒素ガスを使って表面の物質を吹き飛ばし、サンプルを採取します。採取した後、TAGSAMはアームを使い回収カプセルに収納します。サンプル物質は60グラム以上を予定しています。
回収した物質が多いほど回転には力が必要になるため、その力でどれだけの量を採取したかが数グラム単位でわかるそうです。今月中に十分にサンプルが採取できたか、もういちど採取をするかが決定される予定です。
追記(2020年10月30日)
10月30日、オシリス・レックスが小惑星ベンヌで採取したサンプルの格納に成功したというニュースがありました。当初、サンプル採取後、採取した物質のために採取容器のふたが閉まらないトラブルで、大量のサンプルが流れ出すというトラブルがありましたが、29日にアームを使い、流出サンプルをカプセルに入れ、ふたを閉めたそうです。この作業には2日を要しています。
地球からは3億2000万キロも離れているので、通信は片道18分半もかかるからなんですね。現在のオシリス・レックスは最低限必要な量とされていた量を上回る数百グラムを格納したということです。オシリス・レックスが地球へ帰還するのは2023年9月の予定。月面探査計画アポロ以来では最大という宇宙のサンプルを持ち帰ることが期待されています。
日本の「はやぶさ」と同じく期待ですね
オシリス・レックスが小惑星「ベンヌ」に着陸したというニュースについてでした。ベンヌの画像を見ると、ある意味小惑星らしいというか、そろばん玉のような形をしていますね。このサンプルから宇宙や地球の生命の起源についての手がかりもあるかもしれないということで、今回の記事として取り上げてみました。
また、日本の宇宙探査機「はやぶさ」と目的が似ているので協力しているそうです。サンプルがどのようになるのか、注目です。